なぜ地域選びが重要なのか
海外の人たちをターゲットにしたビジネスを行う場合、訪日観光客に向けた「インバウンド」、海外での市場に参入する「アウトバウンド」、それらに伴い海外から自社ECサイトへの集客と販売を行う「越境EC」といった手法があります。しかし、いずれも自社が製造した製品やサービスを海外の人たちに購入してもらうという意味では共通しています。その大きな違いは「どこを拠点にビジネスをするのがもっとも利益を上げられるのか」という点に尽きます。
例えば、観光やイベント集客、輸出のコストが掛かる製品やサービスなどインバウンド向きの商材の場合、当然ながらビジネスの拠点は日本国内となりますので、ターゲットは訪日観光客の多い中国などが有力な候補となるでしょう。
この場合、売る場所は基本的に国内ですし、円安傾向にあるうちは向こうから積極的に訪れてくれるので国内施策が中心となります。一方で、訪日前に知名度を上げるための本格的なプロモーションは現地に向けて展開する必要が生じます。これにはしっかりとした戦略作りが求められます。
次に、拠点は国内に置きつつ海外での需要に応えるアウトバウンドですが、そもそも自社の商品が現地の消費者に受け入れられるのか、現地の法律や風習に背くものでないかどうか、販路をどう開拓していくのかといったインバウンドとは異なるマーケティング調査と戦略の策定を実施する必要があります。その際には、ターゲットとする国や地域の人たちの購買力など経済水準が大きなポイントとなります。
また、もしこれからビジネスを手掛けるのであれば、市場規模が大きく、かつ将来の成長が期待できる地域から選ぶのが得策です。その点において東南アジア地域のうちの数カ国はかなり有望と言えるでしょう。ただし、各国に特有な事情をよく知る必要があります。
そして、さらに一歩進んで日本市場を飛び越えてグローバルでのビジネス展開を考えるのであれば、北米市場、実質的にアメリカがもっとも適しています。もちろん商材の特性によってはヨーロッパ諸国でも問題ありませんが、アメリカで成功することはすなわちグローバルでの成功にもっとも近い距離にあると言えるでしょう。当然難易度は高く、場合によっては生産や流通の拠点を現地に設ける覚悟も必要ですが、それだけに挑戦する価値もあります。
地域特有の課題を知る
ビジネスを展開する場所を定めるということは、自社にとっての顧客を定義し、その顧客が抱える本質的な課題に応えることに他なりません。しかし、このニーズの在り処は国内市場だけを見ていただけではなかなか気がつきにくいものです。
もちろんターゲットとなる地域に自ら赴き市場調査することも重要ですが、スピード感が求められるオンラインマーケテイングの分野ではそれだけでは対応が後手に回りがちです。
そこで本章では中国、東南アジア、アメリカというそれぞれの地域のマーケティング事情に熟知した企業を水先案内人として、市場、文化、国民性、法律や習慣などの概況を解説してもらい、自社が目指すべき地域を選ぶためのヒントを提供してもらいました。