中国での熾烈な価格競争
インバウンド・アウトバウンドともに最大の相手国である中国に向けて販売したいという企業は、とても多いです。その際に、まず障壁となるのが価格競争の熾烈さです。実際にクライアント案件で中国での販売を見据え交渉したところ、考えられないほど安い価格を提示され驚いた経験があります。激しい価格競争状態にあるため、販売マージンを1%、2%と下げて他よりも安くという状況になっているのです。
特に化粧品に関しては、日本製品の人気は高いものの、二次マーケットというものが存在します。化粧品は基本的に販売会社が仕入れたら返品ができません。そのため在庫が残った場合、安売りされてしまうのです。そして、それらをまとめ買いするバイヤーが転売しているので、恒常的に安く出回ってしまっています。
ほかにも中国人バイヤーが日本で大量に買い付けていたり、在日中国人のフリーペーパーを通じてほんの少しの手数料で中国から買い物代行依頼ができたりと、安く入手できる手段が多々あります。そのため、メーカーや小売店が正面から輸出や越境ECを考えても、価格面でなかなか太刀打ちできないのです。
アウトバウンドにはローカライズが必須
着物やアニメグッズ、中古のオーディオなど、ある種のマニア向け商品を海外に販売する場合はそこまで気にしなくても大丈夫かもしれませんが、食品や日用品など、広くマスに向けた商品を越境ECなどのアウトバウンドで買ってもらうためには、ローカライズが必要です。
たとえば中国のECサイトでウケる写真の見せ方は国内と違ってきます。また、求められる商品情報の量も膨大で、成分リストなど細部までを知りたがります。偽物が流通しやすいお国柄もあり、本物である証明書が掲載されているかも判断材料となります。商習慣が違うので、ただ翻訳しただけではローカライズにならないのです。そうした対応を、現地のニーズがわかっている中国人スタッフを起用してきちんと行うと、多くのコストがかかります。実際に大手小売店でも、ECサイトの売り上げ月額が3,000万円でやっと収支がトントンだという話があります。
それでも取り組む理由は期待できる成果の大きさにある
ここまで、インバウンド・アウトバンドの厳しさばかりをお伝えする形になってきましたが、それでも大企業から中小企業まで、海外での顧客獲得に向けた取り組みをするところは多くあります。そのメリットは、やはりマーケットの大きさです。たとえば中国一つをとってみても、日本の人口1.2億人の10倍以上もの13.8億人になります。そのため、中国で大ヒットまでしなくても、10%のシェアを取れただけで数としては大きくなるのです。
また、中国は富裕層自体の人数も多くなっています。その中でも億万長者だけを数えたリストでは世界で1位になるほどです。それだけの人数や資金力を持つ層を顧客にすることができたら、大幅にビジネスを拡大することになるでしょう。つまり、当たれば大きいということです。