Web担当者の心構え・その1 “相手への一声”を徹底しよう!
前回の反響を受けて、編集部では過去に取材した事業会社、代理店、Webプロダクションのみなさんに対して、現場でよく直面する疑問についてヒアリングを重ねてきました。編集部に寄せられた声を整理すると、主に2つの方向性に分けられます。1つが、相手の権利を侵害しているかどうかという、自分たちが加害の立場となるかもしれないことへの関心。もう1つが、著作権を巡って、最悪訴訟に応じるようなことになりかねないようなケースについて。今回は、これら2つの方向性を前後半に分けて解説しています。
Chapter01で展開する6つのケースに共通するのは、「相手に断りを入れれば、問題が大きく拡大することはない」ということ。日々悪戦苦闘する現場だからこそ、一声かける余裕を惜しみ、「これくらいなら、大丈夫」という気持ちから無断で事を進めてしまう。それが想定外の問題を引き起こしたり、炎上やクレームにつながりかねません。寸暇を惜しんだ結果、寸暇では済まされないほど膨大なケア、リカバリーの時間が割かれるようなら、それこそ皮肉です。
Question2 自社を取り上げた新聞や雑誌の写真公開は?
載った箇所を撮影した写真、SNSでよく見かけるけれど…
全文確認さえできなければ、別に大丈夫では?
Answer 掲載元に事前確認したかどうか。無断だと厳しい風向き
こうした問題については、なるべく否定的な回答は避けたいのですが、厳密に判断を求められれば、法律上、無断掲載はアウトです。掲載元の許可なく、該当箇所の写真や、スキャニングしたデータを自社サイトや自社のSNSで公開すれば、掲載元の権利を侵害していることになるからです。
ただし、掲載されたメディア側はどう考えるでしょうか? 例えば、毎日発刊される新聞だと、該当箇所を勝手にアップロードされれば購買の機会損失を招く可能性が高いと判断されて、クレームがつきやすいかもしれません。ですが、SNSの投稿で「自分たちのことが載っているので、皆さん買ってください」と文章を添えていたら? 法的にはアウトでも、掲載された側は悪い気はしない可能性がある。「この人は、自発的に宣伝してくれて、普段買わない層への購買意欲を掻き立ててくれている」と考えてくれるかもしれません。
雑誌だと、該当箇所をアップにして撮影した写真をSNSに投稿したからといって、出版社側からクレームがつくことは、非難のためでもなければ考えづらい。
Check!
事前に伝えれば、許諾が得られずとも先方から代替案を示してくれる可能性もあります。相手への確認を怠ったことで、不要に相手の心証を悪くすることは避けたいところです。
Question3 自社コンテンツに他社のロゴデータを使うのはOK?
直近で仕事をしていたことだと、アピールになるし使いたくなる気持ちが…
例えば、WDのロゴが勝手に使われていたら、違和感はあるかも(苦笑)
Answer 無断使用は商標権侵害にもなる。まずは相手に一声、相談すること!
サイトやSNSで実績を紹介したり、自社をアピールすること自体は、悪いことではありません。ただ、無断で他社のロゴデータを使うことは許されません。ロゴの著作権侵害、商標権侵害といった問題も生じかねないからです。特にナショナルクライアントほど、この件は厳しく対応されると覚悟した方がいいでしょう。
この件も先ほどと同様で、使用の前に一言断ると解決します。すんなり許諾が出る場合があれば、許諾が出ない場合もあるでしょうが、「違法につながること」を未然に防いだと考えた方がいいでしょう。
中には、下請けの形で参画した場合もあるでしょう。大手企業とは直接やりとりをせず、代理店などの中間業者を通じて仕事に携わったケースです。従来だと契約書で秘密保持を含めて取り交す可能性が高いので、改めてその内容を確認することと、契約段階で交渉すること自体は差し支えないことです。
Check!
他社のロゴは時に反響が大きく、自社活動の強力なアピールになる可能性も。だからこそ、使われる側の立場を考慮しましょう。許諾の交渉の余地はあるはずです。
Question4 二次利用はどこまでセーフですか?
自分のことを取り上げた記事なら…扱いは自由でしょ?
一次利用と二次利用は別問題? なら面倒で厄介(苦笑)
Answer 原則、事前に決めた掲載しかできない
コーポレートサイトやSNSで実績を公開しているケースで、その延長線上として、外部のプレゼンテーションの場でも自社の実績として伝えていいのかどうか。この件は、二次利用の扱いを巡る問題です。答えは、相手や関係者との取り決めの中身次第です。実績を外部に伝えること自体は、秘密保持に関する契約でも結んでいなければ著作権侵害とはなりませんが、プレゼンの場で、クライアントのロゴやサイトイメージとともに紹介することは、事前承諾が必要です。
実績紹介の取り決めとして、あらかじめ相手から承諾を得ているケースに入った条件ならいいのです。特に何も相手と取り交わしていない場合、取り扱いには慎重になってください。外部のプレゼンで使いたいという場合、外部の規模も大小さまざまです。規模の大小で判断を変えられるケースもあるでしょう。
Check!
自社の権利である時ほど、二次利用の扱いはルーズになりがち。逆の立場にも立って考えて! 自分の本意ではない作品の見せられ方をされたら嫌ですよね?
Question5 「無断転載禁止」の記事を転載したら、どうなる?
物騒な文言だし、関わりたくない(苦笑)
宣言した者勝ちになっちゃうということ?
Answer 「引用」の要件を満たすなら禁止とならない
参考にした記事が「無断転載禁止」を謳っていたとします。掲載記事の根拠を示したいので、参考になった箇所を引用したい。仮に「無断転載禁止」を指定する記事だと、転載すべきでないのでしょうか?
この場合、テキストについては明らかに引用の要件を満たしていれば法的には問題ありません。例えば、出典元を明らかにした上で(記載したりリンクを張ったり)、該当箇所を引用する(つまり、そのまま改変せずに記載する)ことは咎められません。ただし、そのように指定した引用元が快く思わないことは予想されるので、その覚悟をした上での判断にはなります。
写真や画像などの絵要素はどうでしょう? 絵要素はそのものズバリ、直感的にわからせる要素ですので、先方への承諾を得たほうがいい。禁止を謳う相手だと、連絡をとっても承諾は得られそうにないので、転載しないで最善の表現を目指すのが適切です。
Check!
逆に「転載自由」だとする記事の場合、文字通り、文言をそのまま忠実に転載する分には自由ですが、明らかな改変や捏造しての利用は×。避けてください。
Question6 法律と掲載ポリシー、どちらが優先されますか?
法律より掲載ポリシーの方が厳しく感じることがある
どちらを信じたらいいのか?
Answer 契約しているかどうか。法律より契約が優先されます
例えば、広告出稿を検討する際に、出稿に関するガイドラインや掲載ポリシーが法律とどうリンクしているかといった意味になるでしょうか。気になるとすれば、掲載ポリシーが法律よりも厳しい設定がある場合でしょう。やはり掲載ポリシーを守るべきなのか?
答えは、契約した以上は厳守です。前回、「効果がある」「効く」「治る」といった、効能、効果、性能について触れた文言は薬事法で禁止、規制された表現だと取り上げました。その薬事法では禁止、規制されていないけれど、掲載ポリシーでは禁止、規制の文言、類する表現とみなされるならば、守ってください。
大前提として、法律と契約だと契約が優先されます。もし迷うことがあるなら、より基準が厳しい方が優先されると意識しておくのもありです。
もちろん、契約を交わす前であれば、交渉の余地はあるでしょう。交渉して掲載ポリシーの変更を勝ち取るのは困難が予想されますが、出稿元に掲載ポリシーに関する趣旨や、細かな箇所の見解などを問い合わせることで、自分たちの納得感が得られるかもしれません。
Check!
掲載ポリシーについて納得できない場合は、無理に関わらないことが無難な選択。自社とあわないという割り切りが必要な場面にも見えます。