人気ECショップの顧客エンゲージメントが高い理由 事例詳細|つなweB

お客様とのエンゲージメントを高めるには、その接点における「ちょっとした工夫」がものを言います。その点、成功しているECショップがどんな取り組みをしているのかは注目に値します。

人気ECショップでは、顧客との接点である「集客」「接客」「梱包や同梱」「フォロー」の4つの段階で、お客様の心に響くサプライズを用意し、それらすべての接点を重視します。対面接客のないECでは、この部分に磨きをかけることこそが成功の秘訣だからです。

EC業以外の方にも知っていただきたいのは、接客は「掛け算」だということ。一つでも「0」があればすべてが無駄になる一方、それぞれの値が大きくなれば、共感は大きく増し、強い信頼と愛着が生まれます。今回はそれぞれの接点でお客様とつながりができているECサイトの具体的な事例を紹介します。

 

★engagement★1【BEAMS】

サイト上に「なじみのスタッフ」を

最近リニューアルをしたBEAMSでは「接客のできる集客ツール」を目指し、ECでは珍しく「タイムライン」を導入しました。個性豊かなスタッフが多いBEAMSですが、その中から、自分と好みのあったスタッフを選ぶと、その彼または彼女がセレクトするコーディネートやレーベル、ショップの情報が表示されるようになります。「信頼」や「共感」を抱いたスタッフが発信する情報に対しては顧客の関心度も非常に高く、タイムラインからのコンバージョンは他のページを大きく上回っていると言います。

一つ、この仕組みのいいところは、スタッフ側のモチベーションが上がること。店側が楽しんでいる雰囲気は、顧客にも必ず伝わります。

BEAMS公式サイト
タイムラインのサイトへは上記ページのリンクから

 

★engagement★2【TOUCH】

リアル店舗とECの「壁をなくす」

高価格帯のタオルやパジャマを販売しているTOUCHでは、接客をたいへん重視しています。ECサイトへの問い合わせに対してリアル店舗から連絡を入れたり、その逆に、店舗での質問にECサイトから返答をしたりといったことを当然のようにしています。店舗とECに壁がないのです。実はこれができていない、あるいはこの意味を理解できていないショップは多いんですよね。この連携をありがたいと感じるお客様は多いのです。

同社は時々エンゲージメントを測るアンケートを行うのも特徴です。単なる質問ではなく、「好きなタッチはどれ?」と、さりげなく超高級タオルに触れてもらうアイデアは秀逸ですね。

TOUCH:内野株式会社
高級タオルとパジャマで圧倒的な人気!

 

★engagement★3【オイスターシスターズ】

サイトにはあちこちに「顔」を出そう

ECサイトの構造的な問題点は、そのお店に人がいるのかどうか、そして、そこがちゃんとした会社なのかがわからないことです。その問題を一気に解決する方法が、「堂々と店員さんが出てくること」です。それも顔出しで。

顔を出すことは、「逃げも隠れもしません」という安心感を醸し出し、「ようこそ!」という歓迎の気持ちを伝えてくれます。その点、「美人3姉妹」で有名なオイスターシスターズのサイトはとても参考になります。築地市場でも有名な3人は、サイトのあちらこちらに堂々と登場してきます。商品を売るその場所に「人」がいること。それがお客様とのつながりを醸成し、エンゲージメントを高めることにもつながっていくのです。

OYSTER SISTERS:株式会社船曳商店
テレビなどにも登場する三姉妹の店

 

★engagement★4【中古パソコンのくじら】

気配りができることを示す「100%返品OK」

中古パソコンなのに即日出荷。中古パソコンのくじらの売り文句の一つです。パソコンが欲しい人や企業は、すぐに使いたいと考えているもの。ここをズバリ訴求ポイントにしています。お客様にとって何が必要なのか、細かい点にまで気を配れることが伝わってきます。入荷から最終検査までのフローを見せたり、マニュアルづくりなどにも手を抜かずに行っているのも素晴らしい。

そしてもう一つのポイントが「100%返品OK」の取り組みです。中古PC購入時の最大の不安を取り除く、決定的なひとことと言えるでしょう。実現するのは大変ですが、お客様は、気に入った店は何度も利用してくれるもの。将来への投資になります。

即日配送のくじらや:株式会社パコネット
中古パソコン専門店。安心保証が売り

 

★engagement★5 猿梅

ベストなタイミングで「心づくしのメール」を

ECサイトで購入した商品が届いた時は感情が高まるものですよね。ダンボール箱を開けて商品を取り出す。その際に同梱物やサンクスカードが付いていると、ちょっと嬉しい気持ちになりますが、この時、さらにメールでのメッセージが届いたら…。

縁起ものの「梅」を製造販売する猿梅(えんばい)では、メールでのフォローに力を入れています。初回購入時だけでなく、リピート購入の際にも徹底されています。「うるさいな」と思われないように、一人ひとりのお客様のことを考えて、ベストのタイミングにベストのメッセージを伝えています。私も実際にリピート購入をしていますが、その心遣いにいつも嬉しい気持ちになるのです。

猿梅 (紀州の梅干):有限会社三友農園食品部
贈答品として人気の高級梅販売店
JECCICA 川連一豊
フォースター(株)代表取締役、ジャパンEコマースコンサルタント協会代表理事。1999年よりEコマースを始め、倍々で業績を伸ばす。楽天市場で講師等を手掛けた後独立。これまで1万社以上にアドバイスや取引実績あり。本誌連載「ECサイト研究」でも執筆中。
川連一豊
※Web Designing 2017年4月号(2017年2月18日発売)掲載記事を転載

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