読み手の時間を奪う長文を止めるには、可能な限り「冗長表現」を排除せよ! 事例詳細|つなweB

仕事現場での長文は罪「わかりやすさ」を追求する

前回の本連載で、私は「文章は短くしてください。長いとわけわかんなくなるんです」と書きました。本当です。本当なのですが、世のビジネスパーソンは、自らの文章展開力を過信し、とにかく長い文章を書きがちです。もちろん1文が150文字でありながらも、ビシっと論理展開の整った名文を書かかれる方もいます。でもそれは、ごく一般的なビジネス文書や、皆様が手掛けられるようなWebサイトでは必要ありません。何より重要なのは、「わかりやすさ」、この一点です。

思い浮かべてください。あなたの職場でも、メールだっていうのに『rockin’ on』誌の1万字インタビューよろしく、信じられない長文を送りつける人がいるでしょう。あれは罪です。?人の時間を奪う罪?長いから要点がわからない罪?なんかわかんないけど同じくらいのテンションで文章を返さないと、自分が手抜きしているように感じられるんじゃないかと思わせる罪、この3つの罪に問われることになります。

今回は、少し掘り下げて考えてみましょう。「なぜ、長くなるのか」です。ひとつは、「構成ができてない」ということ。これは根本的な問題ですが、本連載の第二回で切り込んだテーマですので、ここでは「みなさんクリア済」とします。もうひとつの原因、それは、「冗長表現」を投入してしまっているからにほかなりません。「構成ができていない」は文章を書く前の課題ですが、「冗長表現」は、文章を実際に書くときに起こる問題点です。こちらはいくつかのルールを知っておくだけで、劇的に改善されるので、ぜひ覚えておきましょう。

具体的に説明します。?余分・曖昧?繰り返し?形式名詞?意味の重複?手クセ文、この5つが「冗長表現」をブレイクダウンした項目です。

さて、今みなさんが構築しているWebサイトの「サービス紹介文」で、この?~?の表現がなされていないかチェックしてください。きっとどんな文章にもあるはずです。今回の連載を参考に、「冗長表現」のない、すっきりしたテキストに修正してみてください。みなさんでも実践することができるはずです。

ね? この「さて」以降の120文字くらい、冗長でイラっとしたでしょう?

5つのポイント改善で文章がグッと簡潔に

まず?余分・曖昧。これは「こう書いときゃなんとなく締まるだろう」的な表現です。「この記事を参考にPythonをしっかりとマスターしてほしい」みたいな、常套句をそう呼びます。

?繰り返し。これも書きがちです。「50代の転職は非常に厳しい。なぜなら50代の転職市場は求人が少ないからだ」。「50代の転職」は、1文にひとつで十分。「50代の転職は非常に厳しい。なぜなら求人自体が少ないからだ」。繰り返しは割愛しましょう。

?形式名詞とは、「~すること」という表現。これ、めちゃくちゃ頻出します。しかし、これらはなくても意味が伝わるので、極力減らしましょう。「50代でも転職することができる」は、「50代でも転職できる」でいいのです。

?意味の重複、これは語彙の問題。「発売を開始した」「各項目ごとに」「最後の追い込み」、みんなダブってます。重言ともいうこの表現は、無駄な長文化につながります。

?手クセ文。つい書いてしまう表現を私はそう呼びます。「この件につきましては」は、「この件は」でいいのです。「子どもという生き物は、元気なものだ」なんて、「子どもは元気だ」で十分。若干ニュアンスは変わるので、精査は必要になります。

【悪い例】ご存じない方に詳しく説明しましょう。「Web Designing」という雑誌は、ネットビジネスに携わる事業者や企業のWeb担当者などに向けた「ネットビジネス情報誌」です。今話題のネットビジネスをグッと掘り下げて解説するとともに、具体的な事例をたっぷり紹介。インターネットを利用してビジネスを展開するすべての人に向けた情報をお届けします。6月号発売開始です! 最寄りの書店やネットショップで購入することができます。編集長はご存じ、あのオカケンです!

【良い例】雑誌「Web Designing」は、ネットビジネスに携わる事業者や企業の担当者などに向けた「ネットビジネス情報誌」です。各ビジネスをグッと掘り下げて解説するとともに、具体的な事例をたっぷり紹介。6月号発売中。最寄りの書店やネットショップで購入できます。

これくらいタイトでいいのです。あっ、勢い余ってオカケンのところもカットしてしまいました。まあ、文意に変わりはないので問題ないでしょう。

文章は肉体と同じ。ぜい肉が付いていると、見る人(読み手)に心地よく感じてもらえません。必要以上に長い文章、ぜい肉の多い文章は、ビジネスシーンで相手の時間を奪う「罪」です。相手に「あっ、この人できるな」と思ってもらうために、「冗長表現」のダイエットをおすすめします。
まついけんすけ
株式会社ワン・パブリッシング取締役兼メディアビジネス本部長。20年間雑誌(コンテンツ)制作に従事。現在はメディア運営のマネジメントをしながら、コンテンツの多角的な活用を実践中。自社のメディアのみならず、企業のメディア運営や広告のコピーライティングなども手掛ける。ウェブサイトのディレクション業務経験も豊富。
松井謙介
※Web Designing 2022年6月号(2022年4月18日発売発売)掲載記事を転載

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