変化が大きく、移行が難しいGoogleアナリティクス 4。しかし、猶予期間に余裕はありません。どうすれば素早い移行が可能になるでしょうか。
行動につながる課題を見つけ出す
GA4への移行を検討する時の考え方として大切なのは、「最初から完璧な状態を目指すのはやめる」ということだと思います。GA4をいきなり自社のビジネスにマッチした形にカスタマイズして導入するのは難しいというのが現実です。それよりも、GA4の特徴と、自社の課題を照らし合わせ、すぐに行動につながるポイントを見つけ出し、部分的にでも、手をつけていくのが賢明なやり方だと思います。
例えば、オムニチャネル対応に課題があるなら、まずはGA4で計測がきちんとできるよう、「Webサイト」と「スマホアプリ」の計測ツールの統合から始めるのがいいでしょうし、これまでセッションごとの「コンバージョン率」と「直帰率※」を重視していたならそれを改め、カスタマージャーニーの見直しを行いつつ、「エンゲージメント率」や「LTV」に注目するよう方針を変えていくのがいいでしょう。課題が明確なら、行動を起こしやすいはずです。
※ 直帰率
GA4ではセッションスコープでの計測から、ユーザースコープの計測へと変更がありました。その結果、直帰率という指標は取れなくなっています。今後はエンゲージメント率やLTVに注目していくとよいでしょう。
イベントタグの設定はUAの設定と同時に行っておく
動き出すのにはまだ時間がかかりそうだ、という場合でもGA4で使われる「イベント」用のタグをGTM(Googleタグマネージャー)を使うなどして、設定しておきましょう(GA4ではイベント単位で計測を行います)。設定が不要な「自動収集イベント」もありますが、Googleが計測を推奨する「推奨イベント」の設定を行っておくと後で役立つはずです。GTMを利用すれば、UAと並行して作業できますので、今日から始めてみてはいかがでしょうか。
皆で情報を共有することでいち早く体制をつくる
なお、最後になりましたが、GA4は新しい考え方のもとでつくられたツールであるため、まだまだ活用が進んでいない実情があります。私たち解析に携わる者としては、トライを繰り返しながら積極的に情報発信をするなど、責任を果たしていきたいと考えているのですが、マーケティングの世界全体で、特に現場の最前線にいらっしゃる制作会社やマーケターの皆さんにも活発に発信をしていただき、ともに知見を積み重ねていけたらと思っています。ぜひよろしくお願いします。
まとめ
★GA4移行を機会として自社の課題を解決していく
★すぐに行動につながりそうなポイントを見つけ出す
GA4への移行は「課題」で動かす ー導入案
【課題】オムニチャネルの活用がうまくいっていない
【解決】GA4がWebサイトとアプリの統合分析できる点を利用する
GA4では、Webサイトだけでなくスマートフォンアプリの計測もできるようになったため、これまでそれぞれ分けて利用していたツールをGA4ひとつにまとめることができます。
この変化を機会として、データの収集と解析を統合して行うのはもちろん、そこからさらに踏み込んでカスタマージャーニー全体を見直してお客さんとの接点をどう構築するか、そこからどういったコミュニケーションを取ればコンバージョンにつながるのか、さらにはどうすればLTVを高めていけるかといった課題にも向き合うこともできるでしょう。
今後、オムニチャネル活用はデジタルマーケティングを行う企業にとって大きなチャンスとなります。GA4導入を機会に本格的な取り組みを始めることをおすすめします。
【課題】広告のパフォーマンスが上がらない
【解決】GA4の機械学習の予測を活用しターゲティング広告を強化する
GA4に搭載された機械学習の機能を利用すると、収集したデータを自動で分析して、「7日以内に購入する可能性が高い」「28日以内に利用額が上位になる」「7日以内に離脱する可能性が高い」といったユーザーをそれぞれピックアップしてくれます。この予測を利用すれば、例えばコンバージョンまであと一歩のところにいるユーザーに対しては、Google広告を利用して、キャンペーンなどのフォローアップを行うことで、コンバージョンに至る「ひと押し」ができるでしょう。また、離脱する可能性があるユーザーには、同じくGoogle広告を利用して特典を提供するなどの方法でアプローチすることができます。まだ利用に制限はありますが(P032)、直接的な効果が期待できるため、取り組みを進めやすい機能だと言えるでしょう。
【課題】会員登録後に“休眠”するユーザーが増えている
【解決】GA4のデータと手元の会員データをマージし繊細な分析を
GA4で収集したデータだけでは、ユーザーの詳細や行動が見えてこない場合があります。例えば自社サイトの会員情報については、オフラインに保存してある会員の詳細データと組み合わせて初めて、詳細を分析することが可能になる場合があります。
GA4のBigQueryエクスポート機能を利用すれば、GA4の生データを抽出できますので、これを手元の会員データと統合することで、会員属性と掛けあわせた分析が可能になります。これによって、例えば登録後に休眠してしまったユーザーに共通項がないか、行動にパターンはないかといった詳細を分析することができます。結果が見えてくれば、メールマガジンを利用するなどして、再利用を促すことも可能になるでしょう。