Web解析術 再入門!「なんとなく」の自己流分析を見直そう 事例詳細|つなweB

サイト改善といわれてアナリティクスの数字は眺めるものの、結局よくわからないまま思いつきでやってみる、「なんとなく」のサイト改修に陥っていませんか? ここでは、サイト改善のエキスパートである小川卓さんのWeb解析術を紹介。正しい分析手順や具体的な施策立案のコツを学び、説得力あるサイト改善を始めましょう。

小川 卓
株式会社HAPPY ANALYTICS 代表取締役 https://happyanalytics.co.jp/

 

Q.Web解析を取り巻く環境について、最近感じる変化などはありますか?

A.ユーザー行動の軸がネット情報にシフト、サイト改善がますます重要に

コロナ禍以降、ユーザー行動に大きな変化が生まれています。例えば、宿やレストランを予約するにも、まずネットで衛生管理の状況などまで細かく調べてから、オフラインでの行動に移るといったことです。このことから、オンライン上での情報の探しやすさは、これまで以上に重要視されていると考えています。

技術的なトピックとして、Cookie規制、いわゆるITPのことがあります。プライバシー配慮の観点から、データの取得方法には、今後ますますの注意と技術的配慮が必要になるでしょう。しかし、サイトが使いやすいことはユーザーも求めるところであり、それがひいては事業者(サイトオーナー)の利益につながります。それゆえに、データを活用したサイト改善は今後も大切です。

AIを活用したデータ分析の自動化によって、分析の手間が減り、改善施策により多くの時間を割けるようにもなってきました。そのため、単なる数字のレポートではなく、数字からユーザーが求めていることを推察し、施策に落とし込むWeb解析力がますます有用になってくると思います。

 

Q.Web解析は、まずアナリティクスデータを見ればいいんですよね?

A.いいえ、分析対象や目的を明確にする事前準備が大事です

Web解析というと、アナリティクスツールを駆使して、膨大な数字から何かを読み取る仕事…というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、データは数字にすぎず、そこに改善案があるわけではありません。目的意識を持って初めて、検証の意義や改善のアイデアが浮かんでくるのです。

そのため、まずはヒアリングや分析対象の理解といった事前準備をしっかり行い、分析方針という「目的」を定めることが重要です。

 

 

Q.Web解析を学ぶ上で、大事なことはなんですか?

A.「ユーザーを知る」という探求心です

Web解析で用いるアナリティクスツールの真価は、ユーザーの足跡、つまりユーザー行動が素直に表れる点にあります。前述のように、消費者行動にサイトが不可欠となっている現状、数字からユーザー行動を読み取れる力は、クライアント等と相対する上で大きな武器になります。

そこで、Web解析力を高めるには、単に数字をまとめるのではなく、数字から「ユーザーを知る」という意識や探求心を持つことが大切です。

また、改修後に数字が悪化することを過度に恐れる人もいますが、サイト改善はなによりも実践です。仮に失敗したとしても、そこから知見を得ることができた点で、停滞よりはずっと良いのです。

改善施策の実施には、予算や体制などさまざまな制約が立ちはだかります。しかし、そんなときこそ「停滞よりは実践」のマインドで、やれることから前進していきましょう。

 

PART1 事前準備

アナリティクスで得られるデータは膨大です。そのため方針もなくいきなり飛び込んでしまうと、「ただ見てるだけ」で終わってしまいます。

なんのために、なんの情報が必要なのか。ビジネスゴールの共有や対象サイトの理解など、事前準備をしっかりと行い、分析方針を立てましょう。

 

Q.サイト分析に入る前の注意点は?

A.動作確認のテストを行う際のルールを確認しましょう

Web解析というと、アナリティクスツールを駆使して、膨大な数字から何かを読み取る仕事…というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、データは数字にすぎず、そこに改善案があるわけではありません。目的意識を持って初めて、検証の意義や改善のアイデアが浮かんでくるのです。

そのため、まずはヒアリングや分析対象の理解といった事前準備をしっかり行い、分析方針という「目的」を定めることが重要です。

 

Q.クライアントへのヒアリングでは、なにを訊けばいいですか?

A.ビジネスモデルや達成したい目標、計測の実施状況などを確認・共有します

Web解析というと、アナリティクスツールを駆使して、膨大な数字から何かを読み取る仕事…というイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、データは数字にすぎず、そこに改善案があるわけではありません。目的意識を持って初めて、検証の意義や改善のアイデアが浮かんでくるのです。

そのため、まずはヒアリングや分析対象の理解といった事前準備をしっかり行い、分析方針という「目的」を定めることが重要です。

 

Q.分析って…まず何からやればいいですか?

A.分析対象のサイト等を、率直な目で閲覧してみましょう

アナリティクスデータを見る前に、まず分析対象のサイトやページを閲覧していきます。ポイントはユーザーとアナリストの、2つの視点で見ることです。

まず「ユーザー」として、ペルソナやシチュエーションを意識しながら、ごく普通に閲覧します。そこで気づいたこと、気になったことを率直に書き出していきます。

次に「アナリスト」の視点で、アナリティクスツールでデータを見る際の確認事項や、データ取得の懸念点等、主に技術的な気づきについてメモしておきます。

 

POINT
CMSの仕様でパラメータを利用してページを生成している場合、アナリティクスではわかりにくいため、この時点でURLをメモしておきます。

 

Q.単なる「思いつき」になるのでは、と不安です

A.だからこそ、データを用いた「検証」を行います

アナリティクスデータを見る前に、まず分析対象のサイトやページを閲覧していきます。ポイントはユーザーとアナリストの、2つの視点で見ることです。

まず「ユーザー」として、ペルソナやシチュエーションを意識しながら、ごく普通に閲覧します。そこで気づいたこと、気になったことを率直に書き出していきます。

次に「アナリスト」の視点で、アナリティクスツールでデータを見る際の確認事項や、データ取得の懸念点等、主に技術的な気づきについてメモしておきます。

 

 

PART2 データ分析

いよいよアナリティクスデータを見ていきます。PART1でまとめた分析方針に基づいて、必要な項目を確認しましょう。

ただデータを見るだけではなく、仮説を「検証」する意識を持って、適宜、深掘りやグルーピングなども用いて、求める情報に近いデータを取得しましょう。

 

Q.データを見るべき期間はどれくらいですか

A.できるだけ直近かつ長い期間を見ます

データが膨大な場合は、Google アナリティクス側でのサンプリングによって近似値での表示になるため、表示期間を調整し、サンプリング率が100%~50%に収まるところを解析対象としましょう。

また、ある時点でサイトリニューアルなど大きな変更を行っている場合は、それ以前のデータは「現状」を分析する上では有用ではありません。そのため、基本的には変更以降の期間を解析対象とします。

 

Q.アナリティクスではどの項目を見ればいいですか?

A.基本項目と分析方針で定めた項目を確認しましょう

まず、下記の優先度「高」の項目を、業種や商材によっては優先度「中」の項目もあわせて確認します。特にユーザーサマリーの週別、月別のトレンドで、季節性の特徴や突然の変化等が見られる場合は、変動要因を調査しておきましょう。

続いて、PART1で作成した分析方針に従って、必要なセグメントを絞り込んでの深掘りや、イベントの発生状況等を確認していきます。

 

 

Q.いまいち何を見ればよいかわかりません…

A.ユーザーの存在を想像しながら、深掘りしていきましょう

アナリティクスデータの良いところは、サイト閲覧だけではわからない、ユーザー特性による行動の違いを発見することができる点です。ユーザーを特性や行動で分類し、セグメント機能等を活用して比較すると、新たな気づきを得やすいでしょう。

下記のような、細分化やグルーピングといった基本テクニックを知っておくと、分析がはかどります。

 

Q.データをまとめる際のポイントは?

A.データをエクスポートしたら、目的を忘れないうちに加工しましょう

アナリティクス画面を見ているときはあれこれ気づくのですが、時間が経つと、なぜその絞り込みをしたのか、どこに着目したのか…といったことを忘れてしまいます。

そのため、データをエクスポート等した時点で、抽出目的がわかるよう加工はしておきましょう。

また、Googleアナリティクスでは、URLで閲覧データを復元できるので、エクスポート時のURLを控えておくと便利です。

POINT
● エクスポート時のURLを控える
● 最低限の加工・集計をしておく (ピボットテーブル、条件付き書式…等)

 

PART3 改善提案

アナリティクスデータでの仮説検証を経ても、改善のアイデアは複数あることが普通です。予算や技術面での制約と効果予測の両面から、具体的に実施する施策やその優先度を決定していきます。

いかにロジカルに効果予測を説明できるかがポイントです。

 

Q.KGI、KPIってなんですか?

A.KGIは「登る山」、KPIは「どうやって登るか」

KGIは達成すべき「指標」「期間」 「値」を含む最終目標、KPIはそれを「どうやって」達成するかです。

KPIについては、例えば「集客数を増やす」だけでなく、SEOなのかメルマガなのか、あるいは広告なのか。施策を具体化するためにも、どの手法を用いるかまで決めることが必要です。

 

Q.改善施策はなにからやればいいですか?

A.「悪いところを直す」を基本に、できるところからやりましょう

すでに数字が出ている部分をさらに伸ばすことは難しく、また改修により悪化するリスクもあります。そのため、基本的には、悪いところを直し、マイナスをゼロにする施策から始めましょう。特に流入が多くて直帰率が高いところを直すことが有用です。

一方で、機能改修を伴う改修など、実施が困難な施策もあります。施策内容には実施難易度があることを念頭に、やれることからやる、という意識も必要です。

 

 

Q.改善施策の優先度はどう決めればいいですか?

A.「実施可能性」「ボリューム」「期待効果」の3つの軸で考えます

すでに数字が出ている部分をさらに伸ばすことは難しく、また改修により悪化するリスクもあります。そのため、基本的には、悪いところを直し、マイナスをゼロにする施策から始めましょう。特に流入が多くて直帰率が高いところを直すことが有用です。

一方で、機能改修を伴う改修など、実施が困難な施策もあります。施策内容には実施難易度があることを念頭に、やれることからやる、という意識も必要です。

 

 

Q.数字目標はどうやって決めればよいですか?

A.過去データや同業他社の実績などから類推しましょう

施策の効果を断定することは確かに難しいです。しかし、クライアントは「絶対的な正解」を求めているのではなく、「納得できるロジック」を期待しています。

そこで、数字目標を立てるには、下記のように、類似ページや過去データからの類推等を用いて、ロジカルに説明することを心がけましょう。

 

 

A/Bテストで知見を得よう

 

Q.A/Bテストは必ずやったほうがいいですか?

A.結果が「読めない」場合に実施します

A/Bテストは、結果が「どちらに転ぶかわからない」ときに、ユーザーの行動や思いに対する気づきを得るために行います。そのため、テストをしなくても結果が明らかな場合や、悪い方に転びようがない場合は、テストの必要はありません。

母数(訪問数・目標数)が少ない場合も、テストより集客施策を優先する方が望ましいです。

また、テストのために大きな機能改修等が必要で、A/Bテストの結果に関わらず戻せない場合は、テストは不要です。

 

 

Q.A/Bテストに必要な「母数」はどのくらいですか?

A.成果指標(目標数)で100件以上が望ましいです

有効な計測結果とするには、ある程度の母数は必要になります。そのため、購入や申し込みなど、成果指標(目標数)で100件以上あることが、有効なA/Bテスト実施の基準と考えています。

最終成果での計測が難しい場合は、中間成果(マイクロコンバージョン)で計測することもあります。

 

Q.A/Bテストはどのくらいの期間で実施すればよいですか?

A.1~2週間が妥当です

計測期間が長期にわたると外部要因に結果を左右されやすくなるため、長すぎるのはNGです。

一方で、曜日によってユーザーの行動が変動する可能性もあるため、1週間を通しての計測データは欲しいところです。

そのため、1~2週間が妥当な期間と考えています。

 

Q.A/Bテストの内容はどう決めればいいですか?

A.「ユーザーの行動や思いを知る」ことを起点に考えましょう

A/Bテストというと、ボタン色の比較がすぐに思い浮かびますが、こうした表現方法のテストは「どちらが目に留まるか」程度の知見しか得られません。

一方で、例えば「お得感」と「不安払しょく」のそれぞれを打ち出したコピーを比較すれば、ユーザーがどちらをより好むのかを知ることができ、それにより、ページ改修だけでなく、メールマガジンや広告クリエイティブなど、ネット施策全体にメリットのある知見を得ることが可能です。下記の分類で考えるとよいでしょう。

 

 

Q.A/Bテストを活用するための留意点は?

A.反映する/しないの条件を明確に決めておきましょう

A/Bテスト実施後に、反映を実施するかを再協議するのであればテストを実施した意味はありません。実施前に、どのような結果になれば施策を反映するか、反映基準を明確にしておきましょう。

直接指標と成果指標の2軸によるマトリクスで、下記のように考えることがおすすめです。

 

 

Q.A/Bテストを行ったら、数値が悪化してしまいました…

A.「好ましくなかった」という知見を得たことが大きな収穫です

A/Bテストの意義は、数字の直接の改善ではなく、「ユーザーを知ること」にあります。そのため、仮に予想に反した数字が出たとしても、それは単なる失敗ではなく、「ユーザーにとって好ましくない改修案だった」という知見を得ることができた、と理解しましょう。

そこからさらに、なぜ予想に反したのか、原因を分析し、次の仮説やより深いユーザー理解につなげることで、テスト対象ページ以外にも応用できる気づきを得ることこそが大切です。

 

資料を作成し、次のアクションを決めよう

 

Q.資料づくりや報告で心がけることは?

A.「次のアクション」を提示することを心がけましょう

報告会で結論が出ないまま「お持ち帰り」になることは好ましくありません。資料づくりと報告は、「次のアクション」をクライアントに決めてもらうために行うものだと認識しましょう。

そのため、資料はただデータを並べるだけでなく、施策の選択肢と、その根拠やメリット・デメリットといった判断材料を提示し、クライアントが「次のアクション」を決定できるように作成することが大切です。

 

Q.資料はどんなことをまとめればよいでしょうか?

A.読み手を想定して、結論と根拠を明確に示しましょう

報告会でも、資料は必ず「一人歩き」し、個々のペースで読まれることを想定しましょう。結論だけ端的に知りたい人もいれば、データから順を追って説明してほしい人もいます。

そのため、クライアントのタイプや場の合意度などにあわせて、説明の型を使い分けることもおすすめです。

 

Text:原明日香(アルテバレーノ))