Webデザイナーの独り立ちに求められる、+αのスキル 事例詳細|つなweB

現在働いている株式会社KOSでは、デザイナーという職種の社員は私一人です。WebサイトやSNSまわりのクリエイティブをつくるほか、代表の頭の中のイメージを具現化・言語化したり、カメラマンさん、コーダーさんなどのアサインや認識合わせ、スケジュール共有などを含めた進行管理など、さまざまな役割を担っています。

以前、制作会社のデザイナーとして勤めていた時は、アートディレクターやディレクターの先輩がいたので、クライアントとの打ち合せや撮影についていくことはあっても、メインで発言することはほとんどなく、どちらかというと「手を動かす」ことに時間を割くのがほとんどでした。「いずれはアートディレクターのように上流工程から関わりたい」と、当時の入社面接で話していたのですが、デザイナーになって半年で現在の会社に転職するチャンスをいただき、ひよっこデザイナーのまま、ほとんど独り立ちすることになります。

まず一人であれこれやってみて、デザイン力以上に、ヒアリングやディレクションの力が足りないことに気づきました。そして、できないことに対しては想像以上に時間がかかるもので、結果的に「今日、デザインソフトを一度も立ち上げていない…」という日もしばしば。「自分にとってデザイナーとしての価値ってなんだろう」と自身に問いかけてみたり、活躍する同世代のデザイナーを見て焦ったり、ヒアリング力やディレクション力が足りないことと連動して、アウトプットも納得いくものができなかったり、と悩むことも多々ありました。

また、最終的には制作物にアウトプットするのがデザイナーの仕事ですが、見てもらう人に対して、どんなクリエイティブだったら届くだろうか、行動してくれるだろうか、ワクワクしてくれるだろうか…ということを考えながら動いていると、どうしても制作の範疇を超える作業も発生します。そんな時は、不慣れながらも、サービスの設計や進行管理など、これまでやったことのない仕事に取り組むこともありました。

そうした経験で感じたのは、「手を動かすことに限らず、相手のことを考え続けられる人こそが、これからのデザイナー像である」ということ。そのためには、前述したヒアリングやディレクションをはじめ、単に制作物を形にするだけに留まらないスキルも必要です。

最近は、デザイナーという職業の中にも、Web・グラフィックのみならず、さまざまなジャンルが存在し、マーケティングや経営といったレイヤーの視点を持つ方もいます。それぞれの得意分野があるのは専門職ならでは。ただ、届けたい相手にとって最適な解を出すためには、時には自身の専門分野だけに囚われず、「越境」することも必要なはずです。私も一人のデザイナーとして、越境することに挑戦し続けるデザイナーでありたいと思っています。

2020年3月にリリースしたタレントオーディション「KOS,inc AUDITION 2020」。まさに、サイト制作だけでなく、オーディション本体のスケジュール設定、カメラマンのアサインも含め、デザイナーの職域を越えて包括的に関わった例です。 https://kospro.jp/audition/
ナビゲーター:小島香澄
株式会社KOS デザイナー。ハウスメーカーに新卒入社、資料のデザインが褒められたのをきっかけに、デザイナーとしてWeb制作会社に転職。日々の学習記録をSNSで発信していると、“モテクリエイター”として活動するゆうこす(菅本裕子)の目に留まり、2019年より現職。ゆうこすの手がけるサービスやプロダクトのデザイン全般を担当。 Twitter:@_mi_su_ka_
小島香澄
※Web Designing 2021年2月号(2020年12月18日発売)掲載記事を転載

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