ブラウザ外に拡張するWeb制作のスキル 事例詳細|つなweB
小池博史
イメージソース・ノングリッド代表取締役 テクノロジー、デザイン、アートに精通し、テクノロジーを取り入れた高いデザインを得意とする。国内外のクリエイティブアワードを数多く受賞。

 

Webの技術でリアルな場もインタラクティブに

2000年にノングリッドを自身で創業し、1998年に創業したイメージソースと協業することになった2005年にイメージソースの代表にも就任しました。その頃Webサイトは新しい広告メディアとして注目を集めていたので、仕事はたくさん来ました。しかし、どうしてもテレビCMなどのマスメディアには勝てないという感じがありました。

イメージソースでは、マスメディアに負けない他の可能性を広げていこうと考え、インスタレーションやデジタルサイネージ、プロジェクションマッピングなど、リアルな場をWebの技術によってインタラクティブにすることに取り組みました。たとえば2006年には伊藤直樹さん(現PARTY代表)らと渋谷109のビルの壁に人の影を投影すると影がドラゴンに変身する「BIG SHADOW」というインスタレーションを行いました。10年以上やってきて、そうした技術がどんどん必要とされる時代になったのは、すごく良かったなと思っています。

また、受託だけでなく自社での研究開発にも力を入れていて、開発したものを定期的に発表しています。これが営業ツールとなり、新たな仕事に繋がることも少なくありません。最近は、最新技術の開発を行っている大学や企業から、それを世に出す見せ方の部分を相談されることも増えてきました。

事業を成功させるためのコミュニケーションをデザイン

一方ノングリッドは、ずっとビジュアルデザインを中心に据えてきました。以前より代理店を挟まずクライアントと直接行う案件が多く、インハウスのデザイナーに近いような密な関係でプロジェクトにコミットしてきました。そうした結果、いまではWebサイトにとどまらず、コミュニケーション全体を設計するブランディングを得意としています。たとえば店舗の内装、商品パッケージ、イベントの企画・運営など、事業を成功させるためのコミュ二ケーションは何でも手がけています。

4年前に「Why Juice?」という自社ブランドを立ち上げた経験も、新規立ち上げのプロジェクトの場で活かされています。このクリエイティブを見て、仕事の依頼をいただくこともあります。

いまWebサイト制作で目指すこと

両社とも仕事はブラウザの外に広がりましたが、Webサイトは絶対に外せないものだと考えています。たとえリアルな場のものであっても、その情報を得たり拡散したりするコミュニケーションツールとしてとても有効だからです。イメージソースでは全体の3割ほど、ノングリッドでは7割ほどが、今もWeb制作の仕事になります。

近年WebサイトではUXなどが重視されますが、それは踏まえつつも我々はそこにあえてビジュアル表現などを提案しています。利便性だけを追い求めるとブランド力が下がる可能性があるため、そのバランスが重要です。

これまで20年前後やってこられたのは、新しい表現やコミュニケーションを追求したいという気持ちを強く持ち続けてきたからだと思います。「カッコイイものをつくっていれば良い時代」は終わり、きちんと結果を出し、クライアントと一緒に考えることが求められてきています。そのためにチャレンジできることはまだまだたくさんあるので、とてもおもしろい仕事だと思っています。(談)

WORKS1/YOYOGI CANDLE 2020
2017年に開催された、来たるスポーツイベントを記念したプロジェクト。東京のNTTドコモ代々木ビルに、スマホアプリから投稿された応援メッセージをプロジェクションマッピングで投影した。このマッピングやアプリを含めた全体の企画・設計をイメージソースが手がけている。ビルというリアルな場とデバイスを繋ぐことで新体験を生み出すのは、同社の得意なところだ
WORKS2/星野リゾート OMO
ノングリッドでは、星野リゾートの新ブランド「OMO(おも)」のブランディングを手がけた。Webサイトをはじめグラフィックやムービー、館内に掲示する案内マップなどをデザインしている。Webサイトは予約獲得の目的も大きいため、わかりやすく使いやすい設計になっている
平田順子
※Web Designing 2019年2月号(2018年12月18日発売)掲載記事を転載

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