ウェビナー、eラーニング…オンライン化は目標達成を促進するのか 事例詳細|つなweB

研修やセミナーには、参加者が会場に集まる「対面集合形式」、オンライン配信をリアルタイムで行う「オンライン集合形式」、事前に用意されたコンテンツを任意の時間に視聴する「録画コンテンツ視聴形式」の3つのスタイルがある。それぞれメリットがあるので、多くの企業では内容に応じて最適なものを選んでいる。

7月に公表されたパーソル総合研究所「コロナ禍における研修のオンライン化に関する調査」は、研修担当者と受講者へのアンケートで各形式の特徴を分析したものだ。研修担当者の評価では、学習目標8割以上達成はオンライン集合研修形式が46.5%に対し、eラーニング・録画コンテンツ視聴形式では32.0%と低めだ。対面集合形式では目標達成5割以下も32%を占める。ただ全体で見れば、どの形式も達成度のばらつきは大きく、形式の特徴を活かした期待感、没入感、効力感など受講者の心理コンディションづくりが重要と提言されている。

私が担当する大学の授業でも、この3方式の組み合わせで実施されている。講義は教室で行い、学生も対面聴講できるが、同時にオンラインでも配信するハイブリッド方式が一般的だ。授業は録画されて学生は講義資料とともにいつでも視聴可能だ。学習内容の理解という点で見れば、教室での対面講義に比べてオンライン化で理解度が落ちることはなく、むしろ自分の学び方にあわせて選択できることが評価されている。

企業セミナーの場合は、リードナーチャリング(新規顧客育成)が目的だが、フォローや商談はオンラインでもできる。オンラインで参加者が全国から集まり、都合の良い時間でアーカイブを見られれば、セミナーの価値は格段に上がるはずだ。手法の選択肢や工夫の余地が増えただけ、企画者の手腕が問われる。

社内研修の実施担当者へのアンケートによる。横軸は学習目標の達成度を表す。達成度8割以上の合計を比べると、対面集合形式(42.0%)よりもオンライン集合形式(46.5%)のほうが高い。オンライン形式が不利に働いていない結果が出ている 出典:パーソル総合研究所「コロナ禍における研修のオンライン化に関する調査」(2021年7月5日公表)
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/research/assets/online-training.pdf
Text:萩原雅之
トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/
萩原雅之
※Web Designing 2021年10月号(2021年8月18日発売)掲載記事を転載

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