PV?CV? ユーザーファーストの評価指標、お悩み解決! 事例詳細|つなweB

パムが考える成果指標の意味は?
“ユーザーファースト”を「数字」で裏づけたい

 

STEP 1 きちんと自社のビジネスモデルを捉える

指標は「ユーザーの姿を具体化する手段」

今回、沖縄に本社を構え、旅行予約サイト「たびらい」などを運営する(株)パムの現場に潜入した。全国各地に実店舗を抱える大手企業、国内外のオンライントラベルエージェンシーと、ライバル会社が玉石混交にひしめく厳しい世界で、価格競争と一線を画したサービス展開で勝負する会社、それがパムだ。

2016年12月号の本誌では、予約申し込み者用にカスタマイズした電子ガイドブックを贈呈するサービスを取材。「アイデア勝負」で荒波に打って出るパムだからこそ、サイト運営の指標や数字への考え方に「一家言あるはず!」と踏んだ。

「予約“数”だけを追求しているわけではない」という同社。では、重視する指標と、実際に得られた成果とは何なのか?

 

STEP 2 「ユーザーファースト」実践のための取り組み

KPI開発を呼んだ、毎週500以上の指標を共有

Webサイトで旅行を予約する場合、大半のユーザーは一度の訪問でいきなり決めないだろう。パムは自社ビジネスの大前提に立ち返り、事業の本質に辿りつこうとする作業を続けている。

「創業以来、パムが大切にしているのが“ユーザーファースト”。ユーザーが望む行動を予約サイトを通じて実現できれば、結果として予約数にもつながるというスタンスです」(妻夫木友也さん)

もともと全社員は、全事業の500超の主要な指標、データについて週次で共有。全社的に数字への意識は高いが、PVや予約数などのCV(コンバージョン)への意識が強すぎた時代があった。

 

STEP 3 ビジネス最適化のためのKPI開発

KPI開発がもたらした昨年対比2倍増

自社ビジネスの特徴を見つめ直し、判断に迷えばユーザーファーストへと立ち返る。つまり結果を導く、事業に合った中間指標(KPI)が開発できれば、そのKPI改善に専念すればいい。これはさまざまなビジネスに応用できる考え方で、検討期間の短い商品であれば、その性質に合わせたサイト構造を見出し、ふさわしい中間指標を設けていく。すぐに“ズバリ”のKPIが見つからずとも、ビジネス最適化の手がかりが模索可能だ。

 

STEP 4 「広告」も新KPIでGo!

タイアップ広告で育成した認知度の効果は?

たびらいにはタイアップ広告ページ枠があるが、広告にもサービスサイトで開発したKPIの思想が活かされている。

「予約サイトでエリアのファン=パム(たびらい)のファンとなって、何度も訪問してくれる“リピーター数”が開発したKPIの代表格。この考え方を出稿希望のクライアントと共有、納得してもらうことが私のミッションです」(松尾大地さん)

PVやインプレッションといったわかりやすい(表層的な)数値を稼ぐような小細工をせず、対象コンテンツをいかに深くユーザー(ファン)に届けるかが大事だ。「アンケートなどの事後調査で、ジワリと認知を高めていた事実がわかった。クライアントから“成果の手応えを感じた”とお褒めいただいた例があり、第二弾の出稿につながりました!」(松尾さん)

 

STEP 5 エンゲージメントの可視化

数字に表れない「中身の評価」に力点を置く

SNSについて、パムはFacebookページに注力する。もちろん、1エントリーあたりの「いいね!」数を絶対的な評価指標には据えていないが、パム流にどういう場所と捉え、どう評価しているのか?

まず、沖縄はじめ地域ごとにアカウントを発行。目的を「エンゲージメントを深化させる場」とし、「地域ファンが集まり、愛情あふれるコメントを残したくなる場」(妻夫木さん)を目指している。

「旅行全般のアカウントだけを用意しても、ファンが集いづらいもの。名目上の“ファン数”は追いかけず、エリアへの愛情を感じるコメントを残してくれることが、この場の価値です」(妻夫木さん)

現地発信が強みなだけあって、ネタ はいくらでも用意できるとか。毎日の多 数投稿を支える実践力は敬服に値する。

 

STEP 6 インバウンド対策は?

1PVごとの質が追求できれば…施策の見方や解釈も変わる

パムはインバウンド対策にも着手しているが、国内向けと異なる指針は設けず。KPIの考え方は国内向けと同様だ。

「台湾での展開に注力中です。国内向けとの違いは、現状は地域を細分化しすぎると効果が期待できない点。まずは“日本”全体について、ジャパンファンになってもらうことです」(妻夫木さん)

総括すると、常に試行錯誤の中、見出したのがPVやCV偏重からの脱却。パムの原点「ユーザーファースト」を継続的に実践するため、ユーザーファーストの可視化を示すKPI開発へ。現地発信情報などの強みを背景に、「リピーター数」など確度の高いKPIを発掘した。

ぜひ、自社ビジネスの特性を踏まえ ながら、CVに至る過程=ユーザーファ ースト追求のあり方を参考にしてほしい。

 

今回、取材した相手は…
Tomoya Tsumabuki/Daichi Matsuo
遠藤義浩
※Web Designing 2017年12月号(2017年10月18日)掲載記事を転載

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