アジアでのEC展開に欠かせないインフルエンサーマーケティング 事例詳細|つなweB

日本の企業でも、中国のTmall(天猫)や東南アジアを中心としたLazada(ラザダ)などの有名モールを通して、自社商品をアジアの国々で販売する動きが活発だ。アジアの消費者の購買力が上がり、日本製品は高い評判を維持してはいるが、商品をECに乗せるだけで勝手に売れるわけではない。各国の消費者特性やオンライン行動を正しく理解して、それに対応したプロモーションやサポートが必要である。

トランスコスモスが今年春に発表した「アジア10都市オンラインショッピング利用動向」もそのような目的で実施された調査であり、私も企画と分析にかかわった。全体を通して明らかになったのは、アジアの都市消費者が東京の消費者とかなり異なっているという事実だ。

東京を含むアジア10都市、10代~40代のオンラインショッピング利用者3,200人を対象に、トランスコスモスが実施した調査から、ソーシャルメディアに関する2項目を掲載。小数点以下の四捨五入により、合計で100を超えている都市がある
出典:「アジア10都市オンラインショッピング利用動向調査2018」

ECを頻繁に利用するアジアの消費者は検索サイトだけでなく、FacebookやInstagramなどのソーシャルメディア経由での商品認知が多く、インフルエンサーの意見やクチコミサイトが極めて大きな影響力を持つ。購入した商品や体験をSNSへ投稿するという利用者比率も、東京を大きく上回っている。ECとソーシャルメディアとの関係が、日本で想像する以上に密接なのである。

また東京に比べると、サイトの写真や説明文と実物が違うという経験が多いため、正規品保証や商品の生産地などが重視される。配送への信頼度もそれほど高くないので、職場や店頭での受け取りがよく利用されている。日本ではあまり浸透していないメッセージングアプリや、チャットによる価格交渉やサポートへの対応も検討する必要がある。

アジアでのEC展開を考えるならば、先入観にとらわれず調査データや現地での観察、ヒアリングを十分に行ってほしい。それによってリスクを大きく減らせるはずだ。

 

Text:萩原雅之
トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/
萩原雅之
※Web Designing 2018年12月号(2018年10月18日発売)掲載記事を転載

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