スキルシェアサービス大手ココナラ、ロゴリニューアル事例 事例詳細|つなweB

[Creative]「500分の1」のアイデア

2021年8月、株式会社ココナラの新しいロゴが発表されました。コンセプトはユーザー起点で考えたといいます。 

「『ご意見BOX』に寄せられる声や、毎年実施しているアンケートを読み込むことで、ユーザーの印象を把握することから始めました。そのうえで、会社が目指す印象と重なる部分を抽出してコンセプトとしました。それは、『多様性・オープンな感覚』『可能性やワクワク感』『信頼感、安定感』『人や社会とのつながり』といったキーワードで表しています」(外崎匠さん) 

そうしたキーワード一つひとつをロゴの中のマーク、テキストの色や形状で表現しています。 

「例えば、マークの色は以前のロゴの3色から6色に増やしており、『多様性』をイメージしています。また、色を重ねることで新しい色が出てくる、という重なりのデザインによって、『人や社会とのつながり』も表現しています」 (高津戸啓太さん)

想いが集約した新しいロゴに行きつくまでには、相当な数のアイデアが出たとのことです。 

「ひたすら出していった結果、プロジェクトを通して500案以上は出たと思います。その後アイデアをグループ化して、社内でフィードバックをもらいながらやっと1つに絞ったという感じです」(外崎さん)

サービスロゴでの展開
コーポレートやスキルマーケット「ココナラ」のロゴだけでなく、別サービスのロゴも同時に刷新。信頼感や安定感を意識して「太く、丸く」したタイプロゴがビジネス系サービスにも効果的に取り入れられています。
アプリアイコンでの展開
スキルマーケット「ココナラ」のアプリのアイコンも刷新。6色を用いたマークが鮮明であり、スマートフォンのホーム画面においても際立ちそうな印象です。
検討時のロゴ案とデザイングループ
500を超えたという新ロゴ案は「旧ロゴに近いもの(Refine)」「ココナラのC、Coがモチーフ(C or CO)」「いずれにも該当しないもの(抽象化)」の3種類に分けられ、アイデアの収束を図っていきました。

 

[Process]言語とビジュアルの往来

そもそも、なぜロゴを変えることになったのでしょう。 

「サービス開始当初から事業環境が大きく変化したことが理由です。当初は、占いなどのCtoCのスキルシェアを中心にしたサービスでした。ただ、年々用途は多様化しており、ビジネス利用も増えるなど、取引単価も上がっています。そこで、カジュアルな印象は残しつつも、ビジネス用途に耐えうる信頼感を醸成したい、と考えたのです」(外崎さん) 

外崎さんを中心にデザイングループや経営陣と連携しながら、2020年12月にプロジェクトは始まりました。 

「外部パートナーとの連携も模索はしましたが、基本的にはインハウスで進めました。スタートアップならではかもしれませんが、社内メンバー全員が持つ自社サービスへの理解の深さや熱量の大きさを活かす意味でも、自社で細かくアイデアを出し合いながら進めたいという気持ちがあったんです。コンセプトをただ忠実に落とし込むだけではない、試行錯誤する中での偶発的な飛躍、いわゆるクリエイティブジャンプを起こしたいという期待もありましたね」(外崎さん) 

内製で進められたプロジェクトは、関係者が密接にやりとりをしながら、柔軟なアジャイル型で進行していきます。 

「最初から要件をガチガチに固めることはしませんでした。ユーザーの声を調べたり、他社事例を見ながらのトレンドリサーチは実施したうえで、大まかなコンセプトだけを書き出してスタート。早速それをビジュアルに落とし込みました。数パターン出してみると、コンセプトがどんなビジュアルで表現できるのか、だんだん見えてくるんですよね。つくり手の判断基準を持つためにも、ビジュアル制作とコンセプトの言語化を何度も行き来しながら、試行錯誤しました」 (外崎さん)

クリエイティブの実制作ではデザイナーの高津戸さんが大きな役割を果たし、アイデアを一通り出し切った後は、グループ化しながら約50の案に絞り込みました。

アイデアの発散から収束までのプロセス
ポイントになったのは「言語化とビジュアル化の行き来」と「全部署・全社員からのフィードバック」。当初考えていた以上の「自社らしさ」をロゴに反映できたうえ、最も身近なステークホルダーである社員全員に寄り添って制作されました。

 

[Outcome]社員からの愛着醸成

そして、ロゴのアイデアは社内にてフィードバックをもらう段階に入っていきます。

「メンバー全員の働くモチベーションにつながるロゴにしたいと思っていたので、全部署・全社員にレビューしてもらう機会をつくりました。人気投票を実施したほか、『カラフルな方がココナラらしい』など率直な印象も聞けました」(外崎さん)

採用案は得票数トップクラスで、経営陣も満場一致で賛同した案だったとのこと。8月の対外リリースに先立つ形で、Zoomの全社集会にてお披露目され、ポジティブなコメントも目立ったといいます。

「デザインチーム以外の社員も、プロセスに参加したこともあって、出来上がった時には全社員がすでに愛着を持てていたと思います」と話すのは、広報の柳澤芙美さん。「完成後に新しいロゴが入ったエコバッグ、水筒、タオルが全社員にプレゼントされたんです。社員同士のコミュニケーションのきっかけにもなりましたし、広報ならメディア、人事なら求職者に配布するなど、ファンをつくるツールとして実際に使っていけそうです」と続けます。 

社内向けには新しいロゴが定着しているように思えますが、デザインチームはどう考えているのでしょう。

「ロゴをつくって終わりにならないように、というのは意識していました。グッズに限らず、オフィスの壁紙や自動販売機にも新しいロゴを取り入れていますね。目に見える、触れる形で社員との接点をつくりたいなと。もちろん社員だけでなく、ユーザーに対してもですが、そこには使命感を感じています」(高津戸さん)

社内での浸透を経て、次なる目標には社外への訴求を掲げます。

「最近、多色の企業ロゴは増えていますよね。そんな中、ロゴマークを見ただけで企業名を連想させるハードルは高いと考えています。それでも、企業としてはこの6色の構成を見ただけで『ココナラだ』と思ってもらえるようなところを目指していけるといいのかなと思っています」(高津戸さん)

全部署レビューの風景
コロナ禍ではあったため密にならないよう配慮しながら、会議室にてコンセプトの紹介やロゴの人気投票が実施されました。
新ロゴ入りのバーチャル背景
新しいロゴが配置されたバーチャル背景も社員に提供。色やサービス名の異なる25種類程度が用意され、中にはアニメーションが施されたものも。Web会議が社外との接点として当たり前になっている今、ひとつのブランディングツールとして捉えているそうです。

 

Interviewee>>外崎 匠さん
プロダクト本部 デザイングループ マネージャー
Interviewee>>高津戸 啓太さん
プロダクト本部 デザイングループ アートディレクター/dd>
Interviewee>>柳澤 芙美さん
CEO室PRチーム PRマネージャー
編集部
※Web Designing 2021年12月号(2021年10月18日発売)掲載記事を転載

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