教育機関と関係者の「絆」を紡く?、広報メテ?ィアのリフ?ランテ?ィンク?とCMS 活用 事例詳細|つなweB
教育機関と関係者の「絆」を紡く?、広報メテ?ィアのリフ?ランテ?ィンク?とCMS 活用

組織にとって広報活動の重要性が増す一方で、事務的な運用からの脱却に悩む声も多い。本稿では、教育機関の広報誌のリブランディングの事例を通じて、ステークホルダーとの関係性を深めるコンテンツづくりとCMS構築のヒントを学ぶ。

 

G.LiFE Web 学習院の今を綴る 広報マガジン :https://glifeweb.jp/
平出 杏
quip Design代表 兼 クリエイティブディレクター デザイナー https://qpqp.jp/
平出 修二
テクニカルディレクター バックエンドエンジニア
相川 直希
アシスタントデザイナー フロントエンドエンジニア

 

 

「誇り」を醸成する媒体に広報誌の挑戦

今回のプロジェクトの対象である『G.LiFE』は、学校法人 学習院 総合企画部 広報課が発行する、学習院関係者向けの広報誌である。読者層は、運営する幼稚園~大学の7校の在校生から保護者、教職員、卒業生等と幅広く、年2回・各号2万部以上を発行している。

105号まで発行を重ねる中、企画や内容がスポット的になりがちなことや、掲載の体裁がバラバラであることなど、メディアとしての軸の弱さに課題を感じていた。そこで同課は、「学習院の教育機関としての活動」のよりよい情報発信のあり方を模索し、広報誌のリニューアルとWebメディアの立ち上げを検討。本件のディレクションと企画制作を担うことになったのが、グラフィックからWebまで媒体を横断する総合ブランディングとCMSカスタマイズに長年の実績を持つquip Designである。

「刷新前は、取材にかける熱意や労力の反面、散漫な情報発信になっていたため、Webを広報のプラットフォームにしたいとの相談をいただきました。そこで、ターゲット(読者)の優先順位と『G.LiFE』の役目を明確にした上で、読者に学習院の『誇り』を感じてもらえるようなメディアを目指しましょうと提案しました」(平出杏さん)

 

「読みたい」基準で考えるコンテンツ主体への方針転換

旧来の『GLIFE』には「らしさ」がなかったと、quip Designは初見での印象を振り返る。

「学習院の歴史、趣ある学舎や構内の豊かな自然、そして、等身大の学習院生の姿。こうした学習院ならではの魅力が上手く打ち出せておらず、さらに、読者の中心であるべき学習院生が楽しめるコンテンツが少なかったことも改善点だと考えました。

当初から広報課さまがしっかり『今後はコンテンツ主体にしたい』と考えていたので、私たちはまず、そのコンテンツがより魅力的に感じる『箱』を整えるべきだと考え、そこに『らしさ』をしつらえました。加えて、学習院生が楽しめるコンテンツとして新企画も複数提案。『私も出てみたい』と思えるようなクオリティでの写真撮影にもこだわっています」(平出杏さん)

ヒアリングやリサーチが進む中、学習院の「らしさ」として拾いだしたキーワードは「伝統」と「気品」。それらは媒体の随所に表現されている。

「全体の方針としては、誌面での縦書き導入など各媒体に適した『箱』としての『読みやすさ』を最重要視した上で、フォント選びや余白のバランスを意識しました。

『G.LiFE』のロゴも制作し、学習院の校章に使われている桜をモチーフに、つぼみから開花していく様子の表現とコピーで『私たち(それぞれ)が主役となって育てていく学習院のメディア』というメッセージを込めました。

また、継続して発行するものですから、読む人にも更新する人にも、『次号が待ち遠しくなる』『続けることで付加価値がつく』仕掛けが欲しいと思いました。そこで、『伝統』に着目して、和色のキーカラーと和柄文様のパターンを毎号ごとに定め、最新号の発行にあわせて、Webサイトのテーマも変更できるような仕様にしました」(平出杏さん)

 

 

コンテンツ主体での運用にハッシュタグが大活躍

CMS構築では、要件にあわせたフレームワークの選定が重要になる。本件では、国内では珍しいDrupalを用いているが、採用のポイントや活用方法を訊いた。

「教育機関のCMSではセキュリティ面に重きを置くケースが多いです。Drupalは、高いセキュリティレベルが求められるサイトでも多く導入されていて、比較的攻撃数が少ないことやメンテナンススケジュールが予告されていること等が安心材料となり、選択肢の一つとなりました。

その他、大規模サイトでも出力にストレスの少ない運用ができる点や、クライアント側の使い勝手にあわせたカテゴリ設置や自由なサイト構築など実務面でのメリットも加味しました。

さらに、CMSとフロントを分離したヘッドレスなサーバ構成にすることで、CMSはコンテンツ管理に注力。一方で、フロント側は前述のカラー更新や『じっくり読んでほしい』コンテンツの『見せ方』にもこだわりつつ、機能追加や改修が随時反映できるよう配慮しました」(平出修二さん)

Webサイトを実際に閲覧してみると、運用と閲覧の利便性を図るため、ハッシュタグを巧みに活用していることがわかる。

「コンテンツ主体で運営していくことから、カテゴリ定義を厳密にしすぎることは避けたいと考え、ナビゲーションの大カテゴリはシンプルにNewsとAriclesのみにして、記事カテゴリはタグで管理を行い、柔軟な運用ができるようにしました。

また、広報課さまとのブレストの中で読者層が学習院「関係者」と幅広く、関心がそれぞれ異なることから、検索機能のニーズがあると推量しました。そこで、記事が増えていくことを想定し、フリーワードとタグの併用を組み合わせて検索できる機能を自社開発で実装しています」(平出修二さん)

 

 

健全な更新の維持には事前の計画と準備が大切

『G.LiFE Web』を見て驚くのは、CMSサイトでありながら、「思わず読みたくなる」デザイン性の高いページ制作を実現していることだ。

「コンテンツを『楽しく』読んでもらうためには、ページにデザイン性が必要だと考えました。例えば、対談記事では、各語りの前に話者のアイコンがあるほうが断然わかりやすいです。こうした複雑なレイアウトを実現するために、仕様確定前に各コンテンツをどのように扱うか、誰が更新したいかを入念に精査し、主にクライアント側が更新するシンプルな入力と、quip Designが更新するコード記述ができる入力をCMSのユーザー権限で細かく設定しました」(平出修二さん)

加えて、CMSは構築で終わりではなく、活用できる体制づくりも重要だ。

「案件当初よりプロジェクトマネジメントには力を入れていますが、メディアの軸を保って更新を維持する際も、あらかじめの計画を大切にしています。年間を通しての取材計画や更新予定は案件初期から用意して意向を確認。さらにコンテンツの連載化や運用中に想定される不測の事態に備えたコンテンツの『ストック』、撮影写真の共有なども行い、よりよいコンテンツづくりの環境アップデートを続けています」(平出杏さん)

『G.LiFE Web』リリース後、CMSを導入したことによる広報課の業務の変化や、読者からの反響もあったという。

「Webは公開してまだ3カ月ほどですが、プラットフォームが定まったことでコンテンツや学内取材に注力できるようになりました。また、『各学校の様子を見ることができてよい』といった反響もありました。まずはしっかりと安定的・継続的に運用し、『育てていく学習院のメディア』というコンセプトのとおり成長させていきたいと考えています」(学習院 広報課)

 

 
Text:原明日香(アルテバレーノ)