企画書の目的を考える
まずは前提として、企画書はあくまでも情報を伝えるためのツールなので、企画内容が優れていることが基本です。企画はよくないけれど、企画書でよさそうに見せる、という目的でつくるものではありません。それを踏まえた上で、企画内容をいかに効果的に相手に伝えるかを目的として考えていきます。企画自体はよいのに、企画書がよくないばかりに、わかりやすくその魅力を伝えられないということは起こり得るからです。
よくあるのが、自身の頭の整理が主旨となっている企画書です。企画立案時にまとめるものであればそれでよいですが、クライアントなど伝える相手がいる場合は、相手の頭の中のプロセスに置き換えて、情報や構成を組み替えていかなければなりません。「読み手の知りたいこと」「読み手が納得すること」「読み手の興味のあること」をわかりやすく伝えるということを意識していきましょう。
また、見やすくきれいなデザインにするのはよいですが、あまりそこに過度な労力をかけても、企画を伝えるという目的においては大きな違いはないように思います。わかりやすく伝えるためには、まずは企画内容と伝えるべきポイントをしっかり見極め、適切に伝える言葉遣い、見やすいデザインという優先順位で考えていくのがよいでしょう。
読む人の属性、立場、状況を考慮する
企画書をつくり始める前に、まずはどんな人が読むかを考えます。例えば企業の経営陣や役員ばかりであれば年配の方が多いかもしれません。その場合は、老眼の方にも配慮して文字サイズを少し大きめにしたほうがいいでしょう。逆に若い方ばかりのときは、古い言葉や言い回し、年齢的に知らないかもしれない出来事などが出てくる際には配慮しましょう。
また、企画書を読む方の知識やリテラシーにあわせるのも大切です。専門用語など、わからないかもしれない言葉がなるべく出てこないように、出てくる場合は解説も入れるようにします(02)。
その他にも、企画書を読む相手は、理論で動くタイプか、感情で動くタイプか。斬新な発想を求めているのか、それとも保守的なものを求めているタイプなのか(これは企画そのものにも関わる話になってしまいますが)。企画書を作成する側と読む側で意見は一致しているのか、していないのか。そして、相手はどんな場所・状況で、何人くらいで、どのくらいの時間をかけて企画書を見るのか。そういったさまざまな要素を考慮して、企画書を読み手目線にチューニングしていきます。
つくり始める前に構成から考える
企画内容をわかりやすく伝える上で、構造がきれいに整理されていることは最も重要です。最初に構成を考えていくようにするとよいでしょう。ストリームラインで企画書制作を手掛ける場合は、いったん必要な情報をひととおり並べた上で、そこから不要なものを削っていくという作業をします。思いが溢れたりせっかく調査したデータをたくさん伝えたいという気持ちもわかりますが、情報が多すぎると企画書を読む側の負担にもなるので、すべての情報を見せればよいというものではありません。読み手の負担を減らすというのも、重要な観点です。
企画書制作によく使われるプレゼンアプリ、Microsoft PowerPointの場合では1ページごとの表示なので、全体の構成が見渡しづらいです。そうした理由からも、実際にプレゼンアプリで企画書制作に入る前に、この作業をしておくのがよいでしょう。
構成は、主に起承転結の順番で伝える場合と、先に結論を伝えてからその背景や理由を説明していく場合とがあります。どちらがよいかは、相手にどんな印象を与えたいかによって変わってきます。企画書を読んだ結果、何を思い、どんな判断をしてほしいのかをしっかり念頭に置いて考えましょう。
Web制作会社がクライアントに提案する企画書では、クライアントの課題解決をする目的が多いと思います。そういう場合では、クライアントの現状、クライアントのあるべき姿、クライアントの課題、解決策の提案、そして自社がそれを実行するのにふさわしい経験を持っていること、最後に予算やスケジュールといった具体的な条件という流れが一般的ではないでしょうか(03)。
新サービスや新商品を訴求する目的であれば、最初にどのようなものかという結論を伝え、それからどういう背景があるのか、どんな特徴があるのかといった、サービスや商品が必要とされる理由を答えていくという流れが向いていることが多いでしょう。
企画書は、できるだけ1ページ1テーマでまとめるのが原則です。そして、ページ間の繋がりにも注意しましょう。同じ情報を重複して掲載する必要はありませんし、この情報を先に見せておかないと意味が通じないということにならないよう注意します。
よい企画書は、必ずこうすべきという形式はありません。どんな読み手に、何を伝えたいのかという、企画書が果たすべき役割によって変わってきます。条件に応じて、そのつど最適な構成を考える必要があります。