知的財産権に関する資格 事例詳細|つなweB

今回は少し趣向を変えて、知的財産権に関する資格をご紹介します。

知的財産権のスペシャリストというと真っ先に思い浮かぶのは「弁理士」です。特許権や商標権などについて特許庁への出願業務や、知的財産権に関する裁判での代理人となることもできる、独立開業も可能な強力な資格です。試験は、短答、論文、面接の3段階に分けて実施され、平成29年度の合格率は6.5%、合格者の平均受験回数は4.2回という、国家試験の中でも最も厳しいものの1つなので、ややハードルは高いかもしれません。

この弁理士試験を目指す場合は、LEC東京リーガルマインドやTACなどの受験予備校に通ったり、通信講座を受講するのが一般的です。

2つめは知的財産管理技能検定試験に合格すると得られる国家資格の「知的財産管理技能士」です。1級から3級まで設けられており、政府の知的財産戦略本部の「知的財産推進計画2017」でも推奨されている試験で、知的財産権についての知識や管理能力を示す資格として、学生はもちろん、社会人にとっても取得することでさまざまなメリットが期待できます。

資格取得のためには学科試験と実技試験の両方に合格する必要がありますが、片方に合格すると翌々年度まではその科目の受験は免除されます。合格率は、受験する級によっても異なりますが、最もやさしい3級はおおむね3分の2程度が合格をしています。

受験勉強には、弁理士と同様の受験予備校にも講座がありますが、3級であれば市販のテキストで過去問題をしっかり勉強すれば取得することは十分可能なので、まずは3級を目標としてみたらどうでしょうか。

以上の2つが特許権や商標権なども含んだ知的財産権全般に関する資格であるのに対して、著作権に限定した試験が「ビジネス著作権検定」です。2004年から始まった比較的新しい民間資格ですが、著作権に特化した国内唯一の検定試験なので、著作権だけを集中的に学びたい人、学んだということをアピールしたい人にはいいのではないでしょうか。難易度に応じてBASIC、初級、上級の3つがあり合格率は56.9%(平成28年度)です。上級に合格すると、前述の知的財産管理技能検定の1級(一部)の学科試験が免除されたり、2級の受検資格として認められるなどのメリットもあります。

これについては、初級は公認セミナー、初級と上級にはeラーニングや通信講座があります。公認のセミナーは2日間の集中講義の終了後、直ちに受験でき、受講生の合格率は90%を超えているそうです。短期間で効率よく学べて資格も取得できるので、気軽に受講できると思います。

春を迎え、一念発起で今年は知的財産権に関する資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。

今回紹介した知的財産権に関する3つの資格の特徴
Text:桑野雄一郎
1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2003年骨董通り法律事務所設立、2009年より島根大学法科大学院教授。著書に『出版・マンガビジネスの著作権』社団法人著作権情報センター(2009年)など。 http;//www.kottolaw.com/
桑野雄一郎
※Web Designing 2018年6月号(2018年4月18日発売)掲載記事を転載

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