生活者意識はゆっくりと変わる 事例詳細|つなweB

企画やアイデアは、時代の変化を理解することから始まる。短期間の流行とは別に、私たちの生活や意識は長い時間をかけて少しずつ変わる。そのようなゆっくりとした変化を明らかにするのが、何十年にもわたって継続される社会調査や世論調査である。

NHKが1973年から5年ごとに実施している「日本人の意識」調査もそういう貴重なデータだ。今年1月、2018年に実施された第10回調査の結果が発表された。質問はあらゆる分野をカバーするが、結婚観や家族観はもっとも大きく変化したものの一つである。「結婚は必ずしもしなくてよい」「子どもをもたなくてよい」など、今では当たり前の価値観が20年、30年前はそうではなかったという項目は多い。自分の考え方が世の中の多数派なのか少数派なのかを、こうしたデータで確認することはプランナーやマーケターには欠かせない。新元号も「令和」と発表された今、平成時代の変化を振り返るのはいいタイミングだろう。

ところで、この調査の第1問は「ふだんの生活で欠かせないこと」を聞いている。メディアでは「テレビを見る」が8割前後でトップが続く一方、「新聞を読む」「本を読む」などは下落傾向にある。着実に増えているのは2003年調査で初めて追加された「携帯・スマートフォンを使う」「インターネットを利用する」の二項目だ。項目を立てるのが遅すぎる気もするが、1998年の時点ではテレビや新聞と並ぶ「欠かせないもの」ではなかったわけだ。

また「家族と話をする」「友人と話をする」という回答も減っている。実際はSNSを通したコミュニケーションは増えており、「話をする」という行為の一部に取って代わったとも解釈できる。新聞や本を「読む」という行為も同じだ。デジタルで多様化したメディアやツールの無意識な使い分けが、平成における最大の変化かもしれない。

「あなたのふだんの生活で欠かせないと思うこと」の推移(1988年~2018年、複数回答)
NHKが5年ごとに調査し、今回で第10回となる「日本人の意識」調査の結果より。 元の質問は11項目あり、そこから7項目を抜粋した 出典 : https://www.nhk.or.jp/bunken/research/yoron/pdf/20190107_1.pdf
Text:萩原雅之
トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/
萩原雅之
※Web Designing 2019年6月号(2019年4月18日発売)掲載記事を転載

関連記事