企画力をつけるとはどういうことなのか 事例詳細|つなweB

 

[STAGE 1]企画力は“共創”の関係から生まれる

Web Designingでは2019年2月号(2018年12月発売)にて「Web制作のリアル2019」と題し、Web制作に関わる企業・個人を対象としたアンケートを実施しました。その中で、個人に対して今後習得したい技術を尋ねたところ(複数回答)、JavaScriptやUXデザインなどを抑え1位になったのが「企画力」でした。回答からは「請け負う仕事として企業の事業戦略に関わるものが増えた」「より上流工程からクライアントに切り込みたい」など、“Web制作”に含まれる仕事の内容が拡大・多様化している現状があることも明らかになりました。

では、Web制作者にとって企画力とは一体どのようなものなのでしょうか。 アイデアやひらめきを得る力? クライアントの要望に応える力、課題を解決する力? あるいは仕事を獲得するための力?

仲山さんは「制作者にとっての企画力とは、楽天社員がECコンサルタントとして出店者のサポートをしてきたことと似ているのではないか」と言います。ECコンサルタントが大切にしているのは、出店者と「一緒に考える」という“共創”スタンスです。共に価値を創っていく共創と、よい企画を生み出していく企画力。これらがどうつながるのか、考えていきましょう。

本誌が昨年実施したアンケートにて、今後習得したい技術を尋ねたところ、4割近い方が「企画力」を選択(複数回答)。従来の“制作”の範囲を超えた仕事が増えている現状が明らかになった

 

[STAGE 2]企画書より前に企画は始まっている

人間的に話し合えるフラットな関係に

事業戦略に関わるコンサルティング的な仕事では、クライアントよりも知識がある立場として「マウントポジション」からアドバイスしようとしていませんか? 逆に知識がないからと、要望に何でも応じる「手足ポジション」になっていませんか? こうした「タテの関係」ではお互いの強みを掛け合わせることができません。ベストは強みを活かし一緒に試行錯誤しながら企画をつくっていく「仲間ポジション」です。人と人の立場で話し合える「ヨコの関係」をつくるには、相互理解が重要です。仕事の話ばかりでなく、積極的に雑談することがカギになります。

 

「ご提案」よりも「ちょっと相談」から

自分だけで企画案を完成させて「ご提案」すると、クライアントからはうまくいかない理由やリスクを挙げて反論が返ってきます。これに対して「相談」した場合はアドバイスが返ってきます。まずはフラットに「最近考えていること」などの雑談から始め、その延長で「だったらこんなことをやってみてはどうでしょう?」といった形で相談を始めてみるのがよいでしょう。クライアントとのコミュニケーションの量を増やすことが、よい企画内容につながっていきます。

 

共通言語で質の高い打ち合わせを

コミュニケーションの量を質に転化させるために欠かせないのが「共通言語」です。情報を持っているほうがマウントポジションを取りやすいため抱え込もうとする人がいますが、それでは共創の関係にできません。クライアントと「売り上げ=アクセス人数×転換率×客単価」という考え方を共有したり、「よいSEOとは何か」という認識を共有したり、「サイト制作のプロセスがどうなっているのか」を共有することでこそ、一緒に試行錯誤しやすい環境ができるのです。

 

[STAGE 3]企画の共創とはクライアントとのチームビルディング

Webの大きな特徴は、何らかの施策を打てばすぐに反応を得られることです。反応がなければ「それではダメだった」という答えがすぐに得られたことになります。ダメなら反応が良くなるまで改善を繰り返すわけですが、そこで大事なのが「ふりかえり」です。(1)何が起こったか、(2)どう思ったか、(3)得られた学びは何か、(4)次にどうするか、をクライアントとすり合わせます。お互いに持っている情報、それぞれの強みを持ち寄って、同じものを見ながら一緒に考えることが大切です。

クライアントの強みと制作者の強みが掛け合わされたときに、よい企画は生まれます。ふりかえりを重ねれば、企画の精度も上がります。これが、企画力のある状態と言えるでしょう。

変化が激しいこの時代、走り出す前に計画を練りすぎることで変化に置いていかれてしまう恐れがあります。求められるのは、走りながら一体となって成長していくことのできるチームです。これを前提とすると、事前に仕様を固めて発注し期日までに納品する従来のスタイルではやりにくい場合があります。Web制作の仕事内容が多様化している現在、月額費用を決めた上で話し合いながらできることに取り組むなど、仕事のやり方に合わせた契約形態を検討することも必要になるでしょう。

企画力は相互の関係の中で高めていくもの
同じものを見て一緒に考えていくことが、企画をつくる力。やりとりする情報量を増やすことで、理解と信頼を積み重ねていくことができる。だから、お互いの強みを信頼して活かしていける

 

笠井美史乃
※Web Designing 2019年6月号(2019年4月18日発売)掲載記事を転載

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