デザイン知見を活かし急成長する企業
GoogleやFacebookなど、シリコンバレーの地域ではエンジニアがスタートアップを始めるケースが多いです。その一方で、最近ではサンフランシスコ市を中心に、デザインバックグラウンドを持った人たちによってつくられた企業の活躍が目立っています。TwitterやAirbnb、Pinterestなどがその例です。
もともとデザイナーだった人が中心となりつくったサービスなので、自ずと見た目だけではなく、使いやすさ、いわゆるUIやUXのクオリティも高くなり、ユーザーからの支持を集めやすいのです。そして最近話題のサービスデザインやデザイン思考などの経営とデザインを融合する仕組みで、それらの企業の成長も加速していると言えるでしょう。今回は、デザインバックグラウンドを持つ創業者によるスタートアップを紹介します。
美大出身者で創業したAirbnb
ザイナーが立ち上げた会社としておそらく一番有名なのが「Airbnb」です。創業者のBrian Chesky、Joe Gebbia、Nathan Blecharczykのうち、BrianとJoeは RISD(リズディ:ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン)出身のデザイナーです。美大のハーバードとも呼ばれる有名校であるRISDで出会った2人に、本家ハーバード大学でコンピュータサイエンスを学んだNathanが加わり、Airbnbは生まれました。彼らは「信頼関係のデザイン」によって、「現地の人の家に泊まる」という今までにない体験を実現したのです。
デザイン経営を実践するPinterest
「Pinterest」も同じようなバックグラウンドを持っています。まるで写真をアルバムに貼っていくように、ネットで見つけたお気に入りの写真を保存、分類、共有することのできるPinterestの魅力は、何と言ってもそのデザイン性にあります。まるでファッション雑誌のようなインターフェイスは多くのデザイナーをユーザーとして獲得してきています。
そんなPinterestの共同創業者であるEvan Sharpもデザインバックグラウンドを持ち、「デザイン経営」を実践する1人。コロンビア大学院で建築を学んだ後に、Facebookでデザイナーとして活躍していたEvanは、勤務時間外の空いている時間に仲間とつくっていたのが、後にPinterestとなりました。
1人のデザイナーが爆発的成長の鍵だったYouTube
もはや我々の生活になくてはならないサービスとなった「YouTube」ですが、その創業メンバーの1人もデザイナーです。共同創業者のChad Hurleyは大学で美術を専攻した後、YouTubeの立ち上げ前まではPayPalでデザイナーとして活躍していました。PayPalのオリジナルのロゴは彼によるデザインです。その後、PayPalでの同僚だったSteve ChenとJawed Karim とともにYouTubeを立ち上げました。彼がデザイナーでなければ、YouTubeがここまで成長するサービスになっていなかったかもしれないとも言われています。
YouTubeが爆発的に普及した2006年に執筆されたTime誌の記事によると、世の中に受け入れられた理由は「簡単さ」と「格好良さ」のバランスが良かったことだったとのこと。
優れたツールデザインのSlack
続いては、企業向けチャットツールの「Slack」。ベイエリアでは導入していない会社を探す方が難しいほど普及率の高いチャットツールになっています。その魅力は「手軽さ」と「便利さ」で、業務効率を上げたければ何をするよりもまずSlackを導入しろ、という声があがるほど。もっとも成長速度の速いスタートアップだと言われています。
Slackの創業者であるStewart Butterfieldもデザインバックグラウンドを持っています。彼がSlackで実現した「ビジネスコラボレーションハブ」としてのチャットツールのデザインは、UXの観点から見ても非常に優れています。
創業者が昔からデザイン思考を実践していたTwitter
最後にTwitter。創業者のJack Dorseyはべイエリアでもっとも著名な起業家の1人です。今では起業家としての側面が強い彼も、Twitterを始めた当初は実はファッションデザイナーになりたかったといいます。
結局ファッション業界へと進むことはなかったですが、PradaやDior Hommeのスーツ、そしてRick Owensのレザージャケットを愛する彼のコーディネートから溢れる美意識は、Tシャツにジーンズの多いシリコンバレーの起業家の中で一層際立っています。彼が昔からデザイン思考実践者だったという意味ではビジネスにおけるデザイナーの考え方の重要性を理解していたと言えます。