Instagramの解析指標、正確に理解してる? 事例詳細|つなweB
 
ウェブ解析士協会 Instagramアカウント
インサイトの指標解説のため、本記事ではウェブ解析士協会のインスタグラムアカウントをサンプルとして採用する。自社で運用しているアカウントをスマホで開いて比較しながら読み進めて頂きたい

 

業種問わず最も重要視するべき指標とは

Instagramのみならず、すべてのソーシャルメディアにおいて最も重視するべきは「発信した情報がどれだけ多くのユーザーに見てもらえたか」という点である。 Instagramの場合、もちろん「いいね」を獲得することやコメントで他のユーザーと交流することも重要だが、それらのアクションすべての結果がリーチやインプレッションなどの「閲覧数」となって顕在化する。

そこでまず、どの業種でどのような目的を持ってInstagramアカウントを運用していようとも「閲覧数」に関する指標の数と推移を追っていく必要がある。ここで混乱しやすいのが「インプレッション」と「リーチ」、それぞれの定義だ。

 

インプレッションとリーチの相違点を理解する

インプレッションとリーチ、両指標の違いを簡潔に表すと、「PV」と「UU」の関係である。インプレッションは投稿コンテンツがユーザーの画面に表示された回数、すなわちPVであり、リーチは該当する投稿が届いた人数、すなわちUUである。

Instagramの効果解析を行う際、閲覧数の指標として一般的にはリーチを用いるケースが多いが、接触頻度の指標としてはインプレッションを利用するケースもあり、運用スタイルによって使い分けたい。

 

インプレッションとリーチの相違点を理解する

Instagramのフィードに投稿すると、画面左下に「インサイトを見る」というリンクが表示される。このリンクをタップすることで投稿ごとの効果を確認することができる(図01、図02)。

「インタラクション数」とは、この投稿を見てプロフィールへアクセスしたユーザーの数値。他の投稿も見てみたいと興味を持ったユーザーがどの程度存在したのかを知ることができる。さらにプロフィール画面にサイトのURLを記載していた場合、この投稿がキッカケとなりURLをクリックされた数が「ウェブサイトクリック」に表示される。

インプレッション数が表示されているが、ここではInstagramのどの画面で該当する投稿が表示されたのか、その内訳が表示されている。「ホーム」は通常どおりInstagramのフィードを流し見ていたユーザーが閲覧したということ。「ハッシュタグ」は他のユーザーの投稿についていたハッシュタグをタップして、この投稿にたどり着いたということである。「プロフィール」は自社アカウントのプロフィール画面で閲覧された数値が表記されている。どんな導線で該当の投稿に来てくれたのかを確認できる。

01_「インサイトを見る」のリンク
それぞれの投稿が表示されている箇所の左下に「インサイトを見る」のリンクが設置されている。このリンクをタップすることによって各投稿のパフォーマンスをチェックすることができる。投稿後しばらくは各数値が伸び続ける傾向があるので、目安としては24時間以上経過したのちに確定数値として確認するとよい
02_「インプレッション」と「リーチ」の数値
インサイトを展開すると表示される「インプレッション」と「リーチ」の数値。インプレッションはPV・リーチはUUを示している。その他インサイト上で示されるか各指標について用語の定義を正確に認識しておく必要がある

 

 

インサイトのコンテンツメニュー

 それではインサイト画面を見てみよう。「コンテンツ」メニューを確認すると、各投稿についてのパフォーマンスが表示される(図03)。図01~図02では個別の投稿インサイトだったが、ここでは過去の投稿をまとめて表示することができる。

 「フィード投稿」「ストーリーズ投稿」それぞれ表示させることができる。また、インプレション・いいね・それらのアクションをすべて合計した「エンゲージ」など、各指標ごとに数値の大きいものから表示できるため、どのような投稿をすればどの指標の数値が伸ばせるのか傾向を掴める。

03_フィード投稿とストーリーズの確認
インサイトのコンテンツメニューではフィード投稿・ストーリーズ投稿のパフォーマンスを一覧形式で確認することができる。画面最上部にはフィード・ストーリーズにあわせた「今週の投稿数」が表示される。投稿の解析とともに投稿頻度が確保できているかも確認するとよい

 

インサイトのオーディエンスメニュー

続いてインサイト内右側タブにある「オーディエンス」メニューをタップする。オーディエンスメニューにはフォロワーについての情報が表示されている(図04)。最上部には現在のフォロワー数と直近1週間のフォロワー数の増減が、続いて「トップの場所」にはフォロワーの居住地、年齢層、性別、最下部にはフォロワーが活動している曜日や時間を確認できる。

04_「オーディエンス」の内容
インサイト画面の上部、右側に表示されている「オーディエンス」タブをタップすると、フォロワーについてのデータを確認できる。フォロワー数をKPIとして運用しているケースや狙った属性のユーザーがフォローしてくれているのかなどを定期的にチェックしよう

 

アカウント運用の目的に応じた指標の抽出

ここまでインサイト画面に表示される指標について確認してきたが、実際の現場では「良かった」「悪かった」と漫然と数値を眺めていては意味がない。そもそもの運用目的のみならず、各投稿の目的を定めるのが先決だ。そして、その目的に応じた指標を他の指標に先んじて確認することが必要となる(図05)。

たとえば、とにかくユーザーとの交流を図りたいと考えてアカウントを運用している場合なら「コメント数」を追うべきだ。多くの人がなんらかのアクションをしたくなるようなクリエイティブを公開していきたいという目的なら「エンゲージメント」を優先的に確認する。あるいは、とにかく多くの人の目に触れたいということなら「リーチ」を、最優先指標とするべきである。

投稿を見たユーザーにどういう動きをしてほしいのかについて、アカウント開設時にずいぶんと考えたのではないだろうか。そして、それは時間が経過するとともに曖昧となり、当初の目的とはまったく適合しない指標に目を取られてはいないだろうか。一旦振り返るとともに、明確な目的を定めていない場合はこれを機にInstagram運用の目的を考えてみて頂きたい。

05_目的に応じた指標の設定
リーチ数なのかエンゲージメント数なのか、自社のInstagramアカウントの運用目的にあった指標を定期的にチェックする。インサイトのコンテンツメニューでは各指標ごとの数値を切り替えて表示させることができる

 

アカウント運用の目的に応じた指標の抽出

目的を定めて運用し、見るべき指標も理解した上で一定期間運用した後にインサイトを確認してみると、なにかしらの傾向が見えてくるはずである。

恥ずかしながら私個人のアカウントをサンプルに効果改善を図る際の考え方をここで紹介する。数値が小さいのはご愛嬌としてお許しいただきたい。

まずは目的にあわせた指標を数値の大きいものから確認。今回はサンプルとして「リーチ」に設定して確認(図06~07)。ざっと1画面を見渡し上位15投稿を見て仮説を立ててみる。

①人物が被写体となっている
②被写体となっている人物は1名より2名のほうが効果がよい
③比較的動画の比率が高い

明確ではないながらも上記の傾向のようなものはどのアカウントでも確認できる。これを踏まえて以降実施すべきこととして、

A_人物が被写体となっている投稿の比率をUPしてみる
B_被写体となる人物は1名と2名を投稿し、引き続き検証する
C_動画の比率をUPする。また動画にて「人物」を被写体としたケースと「風景等」のみのケースで効果を比較する

など、検証した結果得られた仮説をもとに投稿内容に反映させる。この検証→行動を繰り返すことによって、当初設定した目的を達成するため運用する。

06_男女比率とフォロワー属性
インサイト画面オーディエンスタブの下部では男女比率やフォロワーが活動している時間帯を確認することができる。自社アカウントをフォローしてくれているフォロワーの属性や行動パターンを見極めて投稿に反映させよう
07_インサイトから傾向を探る_01
該当期間内で数値の良かったものの傾向を考える。動画であったか静止画であったか、被写体は風景であったか人物であったか、付加するテキストの文字数は、など切り口を変えながら特徴を抽出し仮説を立てる
07_インサイトから傾向を探る_02
このアカウントの場合動画のリーチ数が大きくなる傾向にあったので、動画のみを抽出して一覧表示しさらに傾向を深掘りする。条件を絞るとサンプルが少なく傾向を見出すことが難しい場合は「効果が高いと考えられる種類(この場合は動画)の投稿を増やす」という施策も効果的である

 

数値だけにとらわれない

ここまで解析データの見方とInstagramアカウント運用におけるPDCAの考え方について伝えてきた。誌面に限りがあるので不十分な部分もあるが、基本的な内容はご理解いただけたかと思う。

ただ、InstagramだけでなくすべてのSNSにおいて言えることだが、数値にこだわり数値を追うようになると、SNS本来の良さが失われ、運用者側も閲覧する側も不幸な事態となるケースも散見される。

本来SNSは個人と個人が実際に会わなくてもコミュニケーションできるツールである(図08)。ユーザー数が増加した今では、企業も加わって、従来は発生することのなかった企業とユーザーのコミュニケーションが展開される場でもあるはずだ。KPIとして設定したリーチ数に到達せず、その数値に到達するために労力を割くことももちろん必要ではあるが、根底にある「フォロワーを楽しませる」ことを忘れてほしくないものである。

08_SNS本来の目的とは
SNSはアカウント同士のコミュニケーションを発生させることが本来の目的である。数値目標を追うことも重要ではあるものの、あくまでもコミュニケーションを行った結果の副産物であると考え、まずはフォロワーに喜んでもらうことを目的として取り組んでいただきたい

 

Text:田村憲孝
ソーシャルメディア・WEBコンサルタント。ウェブ 解析士協会ソーシャルメディアマネジメント研究会代表。企業や地方自治体向けにソーシャルメディアの運用指導・運用 コミュニケーション代行・SNSキャンペーン企画・広告出稿代 行などでサポートする http://www.onikohshi.com/profile/
Text:一般社団法人ウェブ解析士協会
事業の成果に導くWeb解析を学ぶ機会の創出、研究開発、関心を持つ人たちの交流促進、就業支援などで、Web解析を通じての産業振興やWeb解析の社会教育を推進する。
田村憲孝ウェブ解析士協会
※Web Designing 2019年6月号(2019年4月18日発売)掲載記事を転載

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