Web制作プロジェクトの成否は「要件定義」にあり。雑誌『Web Designing』、株式会社LIGが提供する『LIGブログ』とのコラボ連載「どうする要件定義」では、発注者と受注者が「後でモメない」要件定義のポイントを紹介します。第1回のテーマは「要件定義はなぜ必要か」。なぜ要件定義をやるのかという大前提を、つなweBでは発注サイドの視点から解説します(制作サイドの視点でまとめた記事はLIGブログで公開中)。
監修
要件定義はなぜ必要?
登場人物
プルルルル…ガチャ
アーー、うちの会社のWebサイトをフルリニューアルしたいと思っとりまして。 まずは概算のお見積りをいただけませんでしょうか?
ずっと寝かせておいたら、本部長から急かされちゃったんだよなぁ…。
ええぇ、来ましたよ。「とりあえず概算」!
エーー、ご連絡ありがとうございます。 お見積もりの前に、お打ち合わせで詳しいお話をお伺いできますでしょうか。
ボリューム感はメールでお送りしておきます。 ざっくりで構いませんので、アーー、月曜までにどうにかお送りいただけないでしょうか。
この感じ!メールの内容も絶対ざっくりしてる!間違いない!
Web制作の前に要件定義をまとめるのが、 弊社のルールになっとりまして…。エエ。
と言っても、実はまだ自分でまとめたことないけど…
用件?幼犬?
はいはいはいはい、ようけん定義ですね……。アーー、やっぱり必要でしょうか? どしても? どうして?
エーー、どうしてって…。どうしてでしょうね? あれ?
認識の食い違いによって起きるダメージの深さを想像してみよう
要件定義とは、実際の作業が発生する前に、プロジェクトの全体像を明らかにする工程です。技術的な仕様を決めることだと思っている人もいるかもしれませんが、それがすべてではありません。「そのWebサイトで何を実現するか」という枠組みを決め、関係者全員で認識を共有することが、要件定義における一番の目的です。
要件定義を行なっておかないと、発注側と制作側の認識のズレが見過ごされたままになり、思わぬトラブルにつながる可能性があります。例えば、ECサイトの制作依頼を受けてフロントエンドの構築だと思って進めていたら、実は在庫管理などのシステムが丸ごと必要だった…というケースもあります。この場合、スケジュールと費用も大幅な見直しが必要になり、途中まで進めていた作業も仕切り直しになってしまいます。
要件定義のためのコミュニケーションをしっかりと行っておけば、こうしたトラブルを避けることができるでしょう。最終的には、制作会社が「要件定義書」という書類にまとめます。書面にすることで、打ち合わせに出席していない人も目を通すことができ、プロジェクトに関わるすべてのメンバーが共通の認識を持てるようになるのです。
プロジェクトを「自分事」として捉え、全体像を見渡せるのがメリット
発注者からすれば、「要件定義は制作会社のため。何かあったとき責任逃れをするためにつくるのでは?」と、疑念を抱く人もいるかもしれません。しかし要件定義には、発注側にも多くのメリットがあるのです。
まず、要件定義をまとめることで、現実的な費用やスケジュールを立てられるようになります。これは発注側にとっても制作側にとっても大きなメリットです。加えて、自分たちで用意すべきものが明確になるという点も、発注側にとっての大きなメリットです。例えば企業のコーポレートサイトなら、会社の沿革や代表のあいさつなど、自社で用意すべきコンテンツもたくさんあります。しかし、要件定義をしておかないと全体像を見通すことができず、制作会社から要素の送付を頼まれるたびに右往左往することになります。
そもそも「Webサイトは制作会社に任せておけばいい」と、どこか他人事になっていないでしょうか。発注者である自分たちが考えを詰めていなければ、いざ出来上がってきても良いかどうかを判断できません。社内の意見もバラバラで、なかなか公開に辿り着けないかもしれません。要件定義をまとめるための話し合いを行なっておけば、こうしたトラブルも未然に防げるでしょう。
社内の認識を共通化させるためにも、要件定義書をつくっておくのがよさそうだな!
本記事は、マイナビ出版が発行する雑誌「Web Designing 2023年4月号(2月17日発売)」を元にしています(編集・執筆:小平淳一)。本誌では、2人のキャラクターが登場し、発注側と制作側の双方の視点でノウハウを解説。株式会社LIGが提供する『LIGブログ』では、「制作側の視点」の記事を公開中です!