発想の源は「驚き」への挑戦心
2017年11月、「くら寿司」のユニークな訴求が話題を呼んだ。“インスタ映え”にちなんだメニューを投入したからだ(01)。2017年の「新語・流行語大賞」では年間大賞を受賞したホットワードに絡めた、時宜を捉えた柔軟性のある企画の実行がなぜ可能だったのか? 企画性がある分、賛否両論が渦巻きそうな切り口でも進められる実行力の源は何か?
(株)くらコーポレーション広報宣伝部の辻明宏さん曰く、創業以来のスタンスが「飲食業の前にサービス業であれ」。「お客様を驚かせたい」という精神を核とした企業風土だからこそ、それにつながる“インスタ映え”メニューも実現できたという。
「当初は“インスタ映え”企画ではなかったんです。海外店舗の新商品開発において、和を意識したメニューの開発中に、竹を模した容器に入れるアイデアが出てきました。検討段階から見映えのかわいさに気づき、“今ならインスタ映えという切り口もあるな”、と考えたわけです」(辻さん)
生鮮食材を扱う同店は、もともと料理の見映えに敏感だったことも功を奏した。とはいえ食より見た目? と警戒する顧客の視線も当然意識できていたはずである。
話題化の先を見据えた戦略
賛否双方の声を予測しつつ、それでも実行に踏み切れたのは、「話題化の先」を見据えていたからだ(02)。
「彩や見映えとともに、竹姫寿司の肝は、“食材がこぼれない”。このメニューが成功すると握りや軍艦巻き、細巻きと並ぶカテゴリとして扱えるようになる。カテゴリが増えると、メニュー開発の可能性が一気に拡がります。握りや巻き物に不向きなこぼれやすい食材も利用できるからです」
メニューの開始以来、Instagramへの投稿も確認でき、来店数も向上。一定の成果は得た。流行に乗っただけではないのだ。確かな商品力と先を見越した定番化という目的があるからこそ、ぶれずに実行でき、成果につながった。
何も今回だけに限らない。例えば、回転寿司チェーン店ですっかり定番化したラーメンの導入も、先駆けはくら寿司だ。
「家族連れ、ナマもの嫌いという方にも心底楽しめる空間にしたい。“寿司屋がなぜ”という厳しいお叱りの声も拝聴しながら、新規開発、新規分野開拓を進めています」
気になるのは2018年の動向だ。
「詳しくは守秘義務が…(笑)。新メニューや新企画を着々進行中で、デジタル施策も絶賛検討中です。ぜひご期待ください!」