SNS運用のマネジメント。長期プロジェクトと捉えて取り組もう 事例詳細|つなweB

企業のSNS運用は、戦略を欠いたままでは担当者の負荷が高まり、投稿ネタの枯渇やトンマナを逸脱してトラブルが生じるリスクも。今回は運用体制のつくり方から省力化のアイデアについて考えていきます。

 

【SNS担当 仲野ヒトミ】
とある中堅メーカーに勤務する仲野さんは、ある日SNSアカウントの担当に指名されました。企業アカウントの「中の人」としての活動をウォッチしていきます。

 

企業のSNS運用は長期プロジェクト

企業のSNS運用には目的があり、目的の実現のために行われるすべてのアクションは「プロジェクト」と呼ぶことができます。そして、そのプロジェクトを円滑に遂行するには、マネジメント(管理)の視点が必要です。

ところが、SNSの特性を正しく理解せず、運用の目的も社内で共有されないままスタートしてしまうケースがいまだに多いとSNSコンサルタントの田村憲孝さんは語ります。

「SNSの黎明期は運用ノウハウが少ないこともあって、現場主導あるいは社長自らが勝手に始めることが多くありました。その後、既存メディアを超えるような影響力をSNSが持ち始め、企業の公式アカウントの存在感も増しています。代表格はTwitterで、シャープさん(@SHARP_JP)やタニタさん(@TANITAofficial)ですね。しかし、SNSのメディアとしての重要度がここまで認知された現在、目的が曖昧なままアカウントを開設することはリスクを伴います」

公式アカウントの運用目的が「認知の拡大」なのか「これまでにない顧客コミュニケーション」なのかによっても重視すべき指標は異なり、運用の設計なども変わると言います。

「アカウント開設直後であればフォロー数などを見ていくことも大事ですが、それだけを指標とし続けるわけにはいきません。どのSNSでも言えることですが、認知、検討、コンバージョンという目的に対して打ち手をどうするかという認識が運用担当者に求められます。もし、その理解に乏しい上司であるならば、運用目的を説明して前提を共有しておかないと後で仕事が辛くなってしまいます」

 

社内で味方を増やそう

しかし、プロジェクトの目的がいかに明確で優れた計画であったとしても、それを実行に移すための具体的なオペレーションが計画できていなければ運用はうまくいきません。ビジネスにおける「ヒト・モノ・カネ」の経営資源をどう投入していくかと言い換えてもよいでしょう。

「運用担当者は複数が望ましいです。投稿作業自体は短時間でもSNSの世界は休みなく動いていて、特にTwitterなどではリアルタイムでの反応が好まれるからです」

もちろん、プライベートでもSNSに手慣れた担当者が1人で運用することにもメリットはあります。しかし、その一方で作業負荷の集中や投稿のバリエーションを出すことの難しさ、事前に設定したトンマナが守られているかのチェック&バランスが取りにくいなどのデメリットも無視できません。

「さらに、SNS担当は内勤のスタッフに割り当てられることが多いのですが、広報や営業など顧客に近い職種の人と連携をとるのがおすすめです。店舗やイベント会場で写真を1枚撮って送ってもらうだけでも投稿内容はグッと人間らしいものになります」

 

SNS広告で影響力をブースト

また、プロジェクトを推進するにあたって予算の計画も重要です。SNSでは投稿やユーザー同士のやりとり自体に費用はかかりませんが、意図的に認知度を上げたりWebへと誘導するには各SNSの広告メニューを活用するのが効果的です。

「業種や目的によって相場は異なりますが、Twitter広告の場合は獲得単価が700円/人とイメージするとわかりやすいです。1,000人ならば70万円掛かると計算できればOKです。1人で広告運用は難しいというのであれば、定額でその日の5ツイートを自動プロモーションしてくれる『オートプロモート』などから始めましょう。国内のTwitterユーザー4,500万人、Facebookユーザー2,600万人に向けて、今月は100万回表示されたことに価値を感じてもらう状態にするのが重要です」

一方、SNSの影響力の大きさはマイナスの方向に働くこともあります。担当者の悪気のない失言であっても、トラブルの初動を誤ると、いわゆる「炎上」という事態を引き起こすことになります。

「炎上が何をきっかけに発生するかは予想することは難しいのが実情です。しかし、そのようなダメージコントロールを行うには、担当者個人では動かないほうがよいケースもあります。なぜなら、それは担当者個人の発言ではなく、企業の公式の見解と受け取られるからです。日頃からこうした事態を想定して直属の上司はもちろん、法務部門や経営層と連携が取れる体制を構築しておかなければなりません」

企業アカウントのSNS運用は社内で「横の繋がり」と「縦の繋がり」をきちんと利用できる人が向いていると田村さんは語ります。

 

 

教えてくれたのは…田村憲孝
SNSコンサルタント ソーシャルメディア研究家 ウェブ解析士協会 SMM研究会代表

 

Text:栗原 亮 Illustration:シライカズアキ