本号には、企画書に関するコンテンツもありますが、よく法律相談であるのが、「企画書の内容をパクられた」というトラブルです。
2017年、アイドルグループ・AKB48の公式アプリ「AiKaBu」に、企画の盗用疑惑がありました。「メンバーに株価をつける」という同アプリの内容に対し、株式会社カリン・パートナーズは、「自社が以前AKB48関係者に提案した『芸能証券』という企画に酷似している」と指摘。真相は不明ですが、仮に盗用していた場合、著作権の侵害になるのでしょうか。
実は、企画書などの内容は基本的にアイデアであって、著作権の保護の対象である著作物にはあたらないとされています。AiKaBuと芸能証券は、「ファンの支持が株価に連動していること」「ユーザーが株主となって仮想通貨で株の売買を行うこと」「持株数に応じて特典が得られること」といった類似点が指摘されていました。
しかし、これらの要素はいずれもアイデアであって、著作物にはあたらないと考えられます。よって、仮に盗用であったとしても著作権侵害にはなりません。一方、企画内容を実際にアプリとして機能させるためのプログラムは著作物にあたるので、プログラムを無断で流用した場合、著作権侵害となります。しかし、同じアイデアを異なるプログラムで実現していたら、著作権侵害にはならないわけです。
もちろん、企画を無断で流用することは、法的にはともかく、道義的には許されません。企画をもらう企業の立場としては、盗用が判明すると、社会的な信頼を損なってしまい、以降のさまざまな取引に悪影響が出ます。なにより、同じ企画が別の会社に持ち込まれていた場合には、リリース後に他社とサービス内容が重複してしまうリスクもあります。
しかし、企画を実現する作業を、社内あるいは受注額が低い別業者にやらせることでコストを削減したい狙いもあるのでしょう。法的にも著作権侵害にならないということで、確信犯的に企画を無断流用する企業は少なくありません。
そういった中、企画を出す側は、何ができるのでしょう。対抗策としては、?企画書などの資料を回収する、?資料に「企画の無断複製・流用を禁止する」旨を明記する、?資料の受領書を交付してもらい、そこに「無断流用はしない」旨を明記するといったことが考えられます。
対クライアントという立場上、難しいかもしれませんが、少なくとも無断流用は許さない、というメッセージを伝えることは励行したいものです。
なお、企画書やプレゼン資料で使った図版などは、企画内容とは別にそれ自体が著作物になります。資料そのものを無断流用した場合は、もちろん著作権侵害です。