これぞ究極の「インスタ映え」 AIで写真をアーティスティックに加工する「Prisma」 事例詳細|つなweB

「インスタ映え」写真をAIで

日本でも大人気のInstagram。「インスタ映え」という言葉が日常で使われるようになっているように、SNS上で目を引く画像をアップし、閲覧者から反応をもらうことが1つのステータスとなっています。

インスタ映えを狙う際、もちろん写真自体の出来栄えも大事ですが、ちょっとした加工(フィルタ)をすることで見違えるような写真に生まれ変わることもあります。そんな写真のフィルタ機能をより一層進めたアプリを提供するのが「Prisma」です。 もちろんインスタグラムにInstagramもフィルタ機能は搭載されていますが、単に色合いや風味を変えるものがメインになっています。Prismaを使えば、そんなフィルタだけでなく、撮った写真をゴッホやピカソの絵画のように、アーティスティックに加工することが可能になります。そして、それを可能にするのが、人工知能(AI)だというのです。

「AIが写真を加工する」と言っても、Prisma自体の使い方はごく簡単で、アプリを起動し、シャッターボタンで写真を撮るか、画面下の矢印をタップしてカメラロールから写真を選びます。そして、下に表示されている数々のフィルタの中から好きなものを選ぶだけで、あっという間に写真がアート作品のように変身します。

これらのフィルタをかけることで、かなり強烈に画像が変化し、場合によっては原型を止めないレベルまで絵画のようになってしまいますが、それはそれで面白いと感じます。Prismaはこれで、今までのInstagramだけでは満足しなくなってきた「インスタ映えを求めるユーザー」のニーズにも応えているのです。

Prisma
経理、福利厚生、採用と、人事に関する作業一括管理できるプラットフォーム。社員100人以下の中小企業や、ベンチャー企業をメイン顧客としています。主に中小企業では管理業務を別の業務と兼務している方が多く、煩雑な作業を一元管理できるということでアメリカでは重宝されているサービスです

 

リリース直後から大反響

PrismaはロシアのPrisma Labsが開発し、現在iOSとAndroidで提供されています。2016年の6月にまずiOS版がリリースされ、1カ月後にAndoroid版がリリースされましたが、リリースされるやいなや大きな話題を集め、わずか1カ月ほどで750万ダウンロードとアクティブユーザー100万人を達成しました。

基本は口コミで広がっていったのですが、現在のロシア首相、ドミートリー・メドヴェージェフがPrismaで加工した画像をTwitterで投稿したことなどで一気に注目を集め、最終的にはiOS、Android両プラットフォームにおいて2016年のアプリ・オブ・ザ・イヤーに認定されるまでになりました。

 

クラウドとオフラインで処理

Prismaは無料でもフィルタを使えますが、有料のプレミアムプランを選ぶとより多くのフィルタを利用できるようになるだけではなく、HDバージョンの保存も可能になります。

PrismaはAIが自動的に写真を読み込み絵画風に画像を編集してくれるとされているのですが、一体どのような仕組みなのかは今だに公開されていません。画像の分析やパターン解析、そしてニューラルネットワークを活用して写真に対する最適な加工を人工知能が提供しているとだけ発表されています。現在のマンスリーアクティブユーザー数は500万人から1,000万人で、今後は動画やVR向けのコンテンツにも対応する予定だそうです。

Prismaのポイントはまだあります。それは、画像処理を個々のデバイス上で行うことにより、通信スピードやバッテリー消費の問題を回避しているということです。

フィルターのいくつかは、写真加工するための独自のAIアルゴリズムを各自の端末で処理する「オフラインモード」を搭載しています。なぜなら、すべての処理をクラウド上でしようとすると、数百万人ものアクセスがあるため、処理速度の問題が出てきます。そこで、各自のスマホで処理することでネットワークオンリーの処理よりも大幅にスピードアップが実現するわけです。最近はAIというと「クラウド」が主流になっていますが、ユーザーの利便性を考えた適切な進化の形の1つであるとも言えます。

 

AI画像処理技術をB2Bへ

このように世界中で話題となったPrismaですが、開発元Prisma Labsのメインビジネスは、人工知能と機械学習を通じた画像処理のテクノロジーをB2B向けに展開することであり、Prismaアプリ自体は彼らの技術を世の中にプロモートするための方法の一つと考えていると、同社CEOのAlexey Moiseenkovは語っています。  彼らのテクノロジーを利用することにより、画像における物体とバックグラウンドとの切り分け、顔のマッピング、物体認識などの自動感知が可能になります。Prisma Labsでは、今後はこれらのノウハウを武器に、「インスタ映え」画像だけでなく世の中のさまざまなサービスに対してのテクノロジー提供を行っていく予定です。

写真を撮影するか画像を選び、下のラインに表示されているさまざまなフィルタを選択するだけで、写真フィルタをかけたとは思えない仕上がりの画像加工が可能です。上図は、インドの画家Thota Vaikuntam風に仕上げてくれるフィルタで加工してみました
Prismaは基本無料で利用できますが、月額4ドル99セント(年額19ドル99セント)のプレミアムプランに課金すると、選べるフィルタの数が増え、HD画質にも対応できます
Text:ブランドン・片山・ヒル
米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。 http://btrax.com/jp/

 

ブランドン・片山・ヒル
※Web Designing 2018年10月号(2018年8月18日発売)掲載記事を転載

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