働きやすさへの配慮が長く良い付き合いをつくる 事例詳細|つなweB

制作会社にとって、業務委託先は単なる作業者ではなく、成果物の価値創造に重要な役割を果たす存在です。良い関係を長く続けるために、フリーランスの働きやすさを重視している株式会社ディスプレイの取り組みを聞きました。

 

見元俊一郎さん
株式会社ディスプレイ 代表・クリエイティブディレクター/フリーランスのデザイナーを経て、2013年に同社設立。上流工程からデザインまでを手がける。
永田健二さん
フリーランスへの業務依頼、ディレクション、進行管理などマネジメント全般を行う。
株式会社ディスプレイ
社員4名の少数精鋭。幅広い業種・規模のコーポレートサイト、ECサイトなどの企画・制作を行う。Web戦略支援、運用支援なども提供。
https://dis-play.net/

 

フリーランスの経験から働きやすさを重視

[Q]御社からフリーランスへ制作業務を依頼することはありますか?

[A]はい、弊社はコーポレートサイトやECサイトを中心に、企画から運用までを手掛けています。顧客とのやり取りは社内の者が行い、要件を固め、デザインが決まったところでコーディングを依頼するケースが多いですね。デザインを依頼することもありますが、その場合もワイヤーフレームまでしっかり決めた状態にしています。他に、撮影やロゴデザインなどをスポットで依頼しています。コンセプトや要件定義などの上流工程は経験則が重要で、どうしても属人的になります。そこは私たちの持ち味でもあるので、その先の作業を要件定義書・仕様書・手順書に落とし込み、依頼しやすい形にして発注する流れです。

[Q]報酬はどのように決めていますか?

[A]基本的には、あらかじめ業務の種類ごとに大体の価格表を共有してもらい、時給で計算するか、一式で見積もってもらうかを案件の発注時に相談して決めています。時給は作業の難易度によって4段階の金額を設定し、休日の割り増し料金もあります。これは、長く信頼関係のあるパートナーとの間で成立するやり方ですね。時給式を希望する方から、一律料金よりもメリハリをつけた方が納得感があるとの声をいただき、このスタイルになりました。私たちとしても、コーディング案件がない時にもリサーチや入力作業などでコンスタントに仕事を依頼することができます。

[Q]きめ細かい配慮があるのですね。

[A]働きやすさは長く付き合えるかどうかに関わりますからね。私たちも長くフリーランスを経験してきたので、その点は実感しています。他にも、比較的大きな案件では弊社の受注が確定する前の段階で近況確認を兼ねてメールで概要をお伝えし、依頼が唐突にならないよう心がけています。また、パートナーの方の稼働時間を把握するのもポイントです。ビジネスアワーに働く人もいれば、夜や土日が中心の人もいます。この人は夕方までに指示書を送ればいいとか、週末にかかる急ぎ案件でも請けてもらえるなど、相手の動き方がわかればこちらの動きも変わります。子育て中の方ならお子さん優先で学校行事に参加してもらったり、16時以降は連絡しないといった点も配慮しています。

そして、案件終了時にはヒアリングを行い、金額やスケジュールに無理がなかったかなど、案件全般についてフィードバックをもらっています。気持ちよく働けるとパフォーマンスも確実に上がってきますから、改善するべきところは改善し、回数を重ねる度にお互い働きやすくしていけるよう、忌憚なくやっていきたいと考えています。

 

パートナーの見極めはレスポンスの速さと質問力

[Q]御社が自社サイトで積極的にパートナーを募集しているのはなぜですか?

[A]理由の一つは、“コアメンバー”として長く一緒に仕事をできる人を常に探していることです。パートナーとの信頼関係は仕事のやり取りでしかつくれないと思っています。まずは仕事でつながり、回数を重ねる。そしてスキルやカルチャーがあえば社員になっていただくとか、社員でなくてもチームとして仕事ができる関係を築いていきたいと考えています。特に、ディレクターやデザイナーには上流からしっかり関わっていただきたいので、密なコミュニケーションが必要になります。その意味で“コアメンバー”という表現で募集をしているのです。

[Q]依頼先を決める基準は何ですか?

[A]弊社の場合、即戦力になってもらえる実績が前提ではありますが、その他の点でいうと、まず初回のメールをやり取りする際のレスポンスの良さです。テンポ良く話が進む方だと相談しやすく、依頼につながりやすいです。次に、未確定部分が多い段階で相談する際にも、的確な確認ができる質問力です。これが曖昧な人は、実作業に入ってからもその場その場での確認が多くなる傾向があります。経験上、この2点ができる方とは大体安心して仕事を進められます。もう1点、案件の規模や予算感に応じて、柔軟に、幅広く対応していただける方だとよりありがたいですね。

私たちの仕事は、毎回“ホームラン”を出す必要はないと思っています。ヒットや二塁打が出れば得点にしていける。そういったチームプレイを、パートナーの方ともしていきたいと考えています。

 

ディスプレイ流フリーランスとの付き合い方

依頼先の見極めには、レスポンスの速さ、幅広い種類の案件に対応できる質問力・柔軟性などを重視。依頼の際には報酬の決め方を相談し、相手の稼働時間帯やライフスタイルを把握して、働きやすさに配慮しています

 

Text:笠井美史乃
Web Designing 2023年2月号(2022年12月16日発売)掲載記事を転載

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