リターゲティング広告のポイント 事例詳細|つなweB

一度Webサイトへアクセスしたユーザーに表示するリターゲティング広告。その特徴について、デジタル領域を中心に統合的なマーケティングを手掛ける株式会社アイレップの帷勝博さんと村上祐さんに話を伺いました。

 

帷勝博さん
株式会社アイレップ/2009年アイレップ入社。事業の要となる運用型広告を力強く牽引し、2015年に最年少で執行役員に就任。2019年からは取締役として広告運用領域、AI・テクノロジー領域を管轄する。
村上祐さん
株式会社アイレップ/ソーシャルメディアマーケティングの黎明期よりアカウントプランナーとして市場開拓を行い、2016年よりアイレップのメディア部門責任者を務める。https://www.irep.co.jp/

 

 

費用対効果のとても高い定番の広告手法

リターゲティング広告とは、Webサイトなどにアクセスしたユーザーに広告を表示する手法です。何かのWebサイトを見た後に、そこで見た商品やサービスの広告が他のサイトを見ている間も追いかけてくるという経験をしたことがあるという方も多いでしょう。それがリターゲティング広告です。

仕組みとしては、クッキーという技術を使います。企業のWebサイトなどを訪問した時にユーザーのWebブラウザにタグを設置し、「このユーザーは訪問しました」というラベルを付与します。その訪問履歴を使い、「何日前に訪問したユーザーに広告を表示する」といったように実施していくものです。履歴が保存できる期間は広告のプラットフォームによって違いますが、例えば1年間といった上限値があり、広告主側で最適だと思われる期間を設定します。

リターゲティング広告の強みは、Webサイトを一度以上見に来ているユーザーは何かしらの興味関心がある可能性が高く、購買や申し込みといったコンバージョンに対する見込みが高い点です。また、サイトの記事や動画をすでに見ているので、広告が表示された時点で商品やサービスへの理解があることも期待できます。そうしたユーザーをターゲティングして表示するため、とても費用対効果が高くなる広告手法の一つです。デジタルマーケティングに取り組む企業であれば、まず使っている定番の広告手法だと言えるでしょう。

この広告の成果指標としてよく見るのは、CPA(Cost Per Action/顧客一人を獲得するのにかかった単価)です。リターゲティング広告では、他の広告手法と比べてCPAが20~30%ほど低く抑えられることが多いです。なかには、CPAを50%ほどまで抑えている企業もあります。もちろん広告の目的や企業の持つ成果の目標値をクリアすることが大前提であり、ただただCPAを低くできればいいというものではありません。しかし、多くの広告主がリターゲティング広告に期待するのは、やはり費用対効果の高さでしょう。出稿予算としても、1カ月数万円程度から取り組むことができるので、大手から中小企業まで、業種・業態を問わず幅広く使われています。自動車のようにオンラインで直接商品を販売しない商材でも、もちろん活用できます。

ユーザーに想起させ購買や申し込みの決断を促す

リターゲティング広告は費用対効果が高くなるものの、訪問履歴のあるユーザーにしか表示させられないため、例えば訪問したユーザーが10万人だとしたら広告を配信できるのが10万人までに留まるという側面があります。集客ができなければ広告を少しの人にしか表示させられないため、ビジネスを拡大していくためには、ディスプレイ広告やSNS広告など他の広告手法も併せて活用していくのがよいでしょう。弊社ではオンラインを中心にテレビCMなどのオフライン広告まで網羅してご支援していますので、他の広告メニューと組み合わせて提案することが多いです。実際にリターゲティング広告だけを利用するという企業はほとんどありません。

他の広告メニューと併用する上で、リターゲティング広告はファネルで言うと最後の購入や申し込みの直前で背中を押すという役割を担うことが多いです。

一度は悩んで離脱したユーザーに、先日見た商品やサービスを「やっぱりどうですか?」と思い出してもらうという使い方のため、広告を一回見たらすぐに購入や申し込みを決定してもらおうという効果を期待するものではありません。特に高単価商材の場合は検討期間が長くなることが多く、認知から購買に至るまでにリターゲティング広告を複数回表示することになります。段階的に表示する内容を変えるといった設計をし、一定期間をかけて効果を見ていくとよいでしょう。

 

リターゲティング広告の仕組み

Webサイトに訪れたものの、購入や申し込みに至らなかったユーザーに広告を表示します。購入を検討していたけれどそのまま忘れていたという場合に想起させたり、迷っている際に背中を押して決心させたりという効果が期待できます

 

ユーザーの状況や気持ちに応じてアプローチを設計する

リターゲティング広告は一度Webサイトを見ているユーザーの目に止まりやすい反面、広告主からの一方通行な発信だけを行うと不快感を持たれてしまうことがあります。ユーザーにとっても有用な情報を届けることが大切です。

例えば、マフラーが欲しいと思っていたけれど、急を要するわけではないので後でじっくり考えようと一旦離脱したユーザーに広告を表示することで、「あ、そういえば後で買おうと思っていた」と思い出させる効果が期待できます。これはユーザーにとっても広告が役立つものだったと言えるでしょう。また、ユーザーが誤解していたり、まだ知らなかったりするその商品の魅力を訴求して再考を促す、買わずに離脱した商品と似たものの広告を表示し提案するといったアプローチ方法も考えられます。

実店舗で接客する場合、来店客が初めて来た人か、1カ月前にも来た人か、あるいは欲しい商品がどこにあるか探している様子なのか、すでに買うものは心に決まっていてじっくり検討している様子なのかによって、店員の方は声をかけるタイミングや内容を変えていると思います。Web広告でも同様に、ユーザーの気持ちや状況にあわせたアプローチが大切になってきます。

実際に大きく成果を挙げた例では、Webサイトのどのページで離脱したか、広告の内容、リーセンシー(前回の訪問からの期間)の3つを組み合わせて設計し、CPAが2分の1に抑えられたというものもありました。このページを離脱した人にはこういうアプローチをしたらよいだろうと仮説を立て、1週間後にはこの内容を、1カ月後にはこの内容をと段階的に設計し直したことで効果が上がったのです。一度訪問した人すべてに一律で同じ内容や頻度で広告を表示するのではなく、ユーザーの気持ちを考え抜き、表示内容や頻度・表示期間を設計することが大切です。

ユーザーに不快感を持たれない頻度やクリエイティブに

リターゲティング広告の設計をきちんと行わないと、せっかく予算をかけた広告が売り上げに貢献できないどころか、ブランドへの印象や好意度をじわじわと下げる結果になってしまうことがあります。これは数字には表れづらいのですが、ボディブローのように徐々に効いてきます。あまりにも高頻度で表示したり、もう購入済なのに表示され続けてしつこく感じた経験のある方もいるかもしれません。表示頻度の調整はもちろん、すでに購入や申し込み済のユーザーには表示しないよう設定しておくことも大切です。ただ、最初に閲覧したのと別のWebサイトで同一の商品を購入したという場合にはコンバージョンを判定することはできません。

また、先述したように離脱の理由を考えないと不快な広告になってしまう場合があります。「ちょっと高い」と思ったユーザーに「安いですよ!」という内容の広告を表示したらブランドの印象は下がりかねません。その場合は、商品の品質や機能の素晴らしさを伝えたり、購入済みのユーザーによるクチコミがとてもよいことを伝えたりすることで、「高いけれども買う価値のあるものだ」と思ってもらえるかもしれません。

そしてこれはリターゲティング広告に限った話ではありませんが、広告を配信するメディアがどのような特徴を持つかを理解し、そこに適したクリエイティブにすることも大切です。例えばInstagramではタイムラインに馴染むクリエイティブがよいかもしれませんが、次々にスクロールをして読んでいくYahoo!ニュースでは目にとまりやすいよう目立つクリエイティブがふさわしいでしょう。特にInstagramとYouTubeは、タイムラインを自身の心地よい空間という認識で見られている方が多く、そぐわないクリエイティブを出してしまうとネガティブに捉えられてしまう面があるので、注意が必要です。

 

ユーザーが離脱した理由の仮説を立てアプローチを分ける

ユーザーがWebサイトを離脱した理由を想像して仮説を立てることで、リターゲティング広告ではどのようなアプローチをすればよいかを考えていきます

 

ユーザーに嫌われる広告にならないために

ユーザー心理にそぐわない内容や、メディアのトーン&マナーに馴染まないクリエイティブの広告が表示されることでユーザーの好意度がじわじわ下がってしまう場合があるので注意しましょう

 

ニューノーマルによって出稿量とユーザー数が増加

ここ2年弱のニューノーマルによって、企業のデジタルシフトが加速してきた結果、広告主によるリターゲティング広告の利用も増えてきています。

一方、Webサイトを利用するユーザーも増え、以前は実店舗で購入していて接点を持てなかったようなユーザーにも、リターゲティング広告でアプローチできるようになりました。

その結果、広告の費用対効果がよくなっているか否かは、ケースバイケースです。オンライン上にユーザーが増えたことにより、従来よりも見込み度が低いユーザーにもアプローチすることが増え、リターゲティング広告の費用対効果が少し悪くなるというケースもあります。ただ、購買数や申し込み数は増えている企業が多いです。

また、広告在庫と呼ばれる、その媒体の広告枠の数やそこに広告を表示できる回数には限りがあります。出稿量が増えることにより競争が加速し、それらをオークションで取りあうことで、広告費は上昇傾向にあります。とはいえ、リターゲティング広告はそもそもがとても費用対効果の高いものなので、多少高くなってもみなが買いたがるプロダクトであり、引き続き多く利用されています。

クッキーレス時代に向けて今後どう変わるのか

リターゲティング広告はクッキーでユーザーの行動履歴を記録しているため、クッキーレス化が進むことでとても影響を受けることが予想されます。長期的に見ると、今後配信量は減少していくでしょう。ただ、本当に費用対効果の高い優れたサービスですので、使えるうちは使っておくと考えるのが現実的かなと思います。

弊社では定期的にウェビナーを開催していますが、その中でもクッキーレスをテーマにした回はとても人気が高いです。効果測定や他の広告にも影響しますし、注目されている企業の方が多いと感じています。現状は危機意識を感じて備えるというフェーズで、すでに別の広告手法に置き換えるなどの対策を始められているところはまだまだ多くないという印象ですが、前述の通り減少することが予測されるため、今後の対策は必要となります。

クッキーレスになっても、リターゲティング広告がなくなるわけではありません。使えなくなるクッキーは訪問したWebサイトのドメイン以外から発行していたサードパーティクッキーと呼ばれるものです。リターゲティング広告で利用するユーザーの行動履歴のほか、広告の効果測定やコンバージョンの分析などに使われてきました。しかし、訪問先のWebサイトのドメインから直接発行されるファーストパーティクッキーの利用は制限の対象になっていません。サードパーティクッキーに比べて多少できないこともありますが、そちらを利用しても同じような方法でリターゲティング広告を行うことができます。

また、リターゲティング広告に近い広告手法で、クッキーレス後も使っていけそうなものが二つあります。一つは、検索キーワードを軸にしたターゲティング広告です。広告主があらかじめ設定したキーワードで検索したユーザーに向けて、そのユーザーが検索画面から離脱した後に見ているWebサイトの広告枠に広告を配信することができます。キーワードで検索するというのは、Webサイトへの訪問同様にユーザーに興味関心があると考えられ、費用対効果は高くなりやすいです。

そしてもう一つは、「類似ユーザーターゲティング」と呼ばれるものです。過去に購入や申し込みなどをしたユーザーと似たユーザーにターゲティングして配信する手法です。広告のプラットフォーマー側が「コンバージョンしたのはこういうカテゴライズの人だ」という判定をし、それに近い人は見込み度が高いと考え、それまでに広告を閲覧したユーザーリストの中から該当者にアプローチしていきます。

クッキーレスになっても、このように代替手段や似た手段でリターゲティング広告と同様の効果のある広告を利用していくことはできるでしょう。

 

キーワードを軸にしたターゲティング広告

広告主があらかじめ登録したキーワードを検索したユーザーをターゲティングし、その後他のWebサイトを見ているときに広告を配信します

 

類似ユーザーへのターゲティング広告

購入や申し込みをしたユーザーと類似のユーザーをターゲティングし、その人たちに向けて広告を配信します

 

 

Text: 平田順子
※Web Designing 2022年2月号(2022年4月18日発売)掲載記事を転載

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