マーケティング戦略立案、企画を得意とする(株)ジェネシスコミュニケーションと、リスティング広告の運用実績が豊富な(株)ディファレントサーチに、昨今の実情に基づくリスティング広告の全容や要点をうかがいました。
ワンソースを徹底的に活かしきる
ここからは、検索連動型広告と言い換えられる、狭義の意味でのリスティング広告を中心に解説します。ちなみに、広義の意味でのリスティング広告となると、Webサイトや動画サイト、もしくはアプリなどに画像や動画などのクリエイティブが表示されるディスプレイ広告も含むことになります。
検索連動型のリスティング広告とは、GoogleやYahoo! JAPANなどの検索画面で、任意のワードの検索結果に基づいて表示されるテキスト広告を指します。前者はGoogle広告として、後者はYahoo!広告として提供され、掲載エリアは検索ページの上部もしくは下部になります。Google広告、Yahoo!広告ともに、表示1行目のURLの冒頭に「広告」という記載があれば、表示された内容がリスティング広告にあたります。基本となる広告フォーマットはテキストで構成されています。1行目にURL、2行目に級数の大きなテキストで表示される広告用の見出し、3行目以降が説明文となっています。
また、地域別や曜日・時間帯別、年齢や性別などのユーザー属性別など、さまざまなターゲティングに基づく出稿も可能です。デバイス別も選べるので、例えばBtoCの商品やサービスであればスマートフォンサイトにのみ出稿し、BtoBを扱う商材であればパソコンサイトへの出稿のみに限定することもできます。実際、BtoCならスマホサイト、BtoBならパソコンサイト経由での流入に偏る傾向があります。
予算は、最低出稿金額が決められているわけではありません。ネット広告全般に対する予算が限られている場合、リスティング広告は少ない金額から出稿できるので、試験的に導入しやすい広告と言えるでしょう。リスティング広告はクリック課金ですので、表示されただけではコストがかからないメリットもあります。その点でもハードルが低く、出稿しやすい広告形態です。
広告経由で流入した後の目的を定めておく
出稿方法は、Google広告やYahoo!広告で自社もしくは自身のアカウントを発行します。アカウントには会社情報や支払情報など必要事項を入力する必要があります。アカウント発行後、キーワードを選定します。キーワードには、対象商品名やサービスのジャンル名、メーカー名、商品を端的に表す特徴など、さまざまな関連ワードが考えられます。リスティング広告を行う目的と照合しながら、目的につながるワードを選びましょう。また、流入先になるURLを登録し、流入先のWebページにあわせた広告文も登録します。例えば、プロモーションを実施中であれば、「キャンペーン実施中」「キャッシュバック実施中」など訴求点を入れておくといいでしょう。アカウントの管理画面上で一通り登録作業を進め終えたら、各媒体の規定に基づく審査が行われます。誇大表現や薬機法違反があったり、リンク先ページが未完成だと不承認となります。
並行して運用開始にあたって、選定したキーワードの入札単価を決めていきます。要はクリック単価などの上限を決めて入札を行うわけですが、新任ユーザーなどが初めて運用する場合、知見がないと難しい工程です。ただし、Googleであれば「キーワードプランナー」(P043)というツールを無償で利用できます。ツールを用いながらキーワードの推定ボリュームや入札単価を調べ、それらの情報をもとにワードを選定すると進めやすいでしょう。後は、配信エリアや曜日、デバイスの選択などもそれぞれ設定し、最終審査が通れば、晴れて配信がスタートされます。
リスティング広告の出稿によって、広告経由での自社サイト、ECサイトへの流入が期待されます。目的次第で流入先のWebサイトの構造も変わりますので、目的にあわせて流入先のWebサイトの最適化もしておきましょう。
リスティング広告の表示とその後
スタートしやすい広告だからこそ相性のいい状況で始めたい
リスティング広告は「検索」という能動的なユーザーの行動に紐づく広告です。つまり、検索対象となる言葉や表現がユーザーの頭にないと検索されず、検索されなければ広告表示の可能性はありません。ですので、向いている状況で展開することが望まれます。
向いている対象とは、自社商品やサービスについて関心を持つユーザーであり、対象商材に何かしらのニーズを感じているユーザーへのアプローチに有効です。自社商材の顕在層にリーチして、オンライン経由の売上や申し込み数、問い合わせ数などのコンバージョンの拡大に押さえておきたい手法なのです。
裏返すと、新商品や新たなジャンルを開拓したばかりのサービスの訴求には向きません。関連ワードの組み合わせでの検索だと表示されるような形もつくれなくはありませんが、商材そのものが知られていない状態で、知名度を高めたりブランディングの役割をリスティング広告に求めるのは不向きです。この場合、ディスプレイ広告やYouTube広告などで認知拡大後、次の一手としてリスティング広告ならありえるでしょう。
また、少ない金額からスタートできる広告ですが、出稿すれば必ず効果が出るわけではありません。実際は、一定金額以上の予算を投じながら効果を引き出すための継続性も求められます。
準備期間や審査期間が必要とはいえ、割とすぐに始めやすく、出稿停止も管理画面で簡単に設定できる半面、短期間だと効果が出てこないことがほとんどです。例えば、1日1万円、1カ月だと30万円という目安で一定期間を継続していくと、予算と期間を保った状態での知見が蓄積されていくでしょう。
補足事項としては、BtoCよりBtoB向け商材のほうがCPA(1件あたりの獲得単価)が高い傾向があります。両者の違いで、予算の考え方が多少変わる点も意識しておきましょう。
ツールも活用し、成果につながるキーワードを選定してほしい
リスティング広告のキーワード選定では、思い浮かびやすいワードだと、すでに多くの広告主が選定済みで、クリック単価が高い傾向にあります。他社が指定しないワードだと、クリック単価の抑制はできても、そもそも検索されにくいキーワードへの出稿となれば、本末転倒です。そこで、キーワード選定に便利なツールやサービスを使い分けられると、選定候補が広がっていきます。
例えば、Google広告では「キーワードプランナー」という無償で使えるツールを用意しています。これは、商品名や商品ジャンルなど、軸になるキーワードで検索すると、検索ワードと関連性の高いキーワードをリストで表示するツールです。推定ボリュームやクリック単価なども確認できるので、それらの情報を加味したキーワード選定が可能です。
検索欄にキーワードを入力する際に、一緒に検索される可能性が高い関連ワードを予測し表示してくれるのがサジェスト(予測変換)です。サジェストワードの候補をリスト上に表示する便利ツールの1つが、「ラッコキーワード」です。検索にかけた選定ワードに対してのサジェストワードを表示してくれるので、表示された言葉の組み合わせから、先ほど同様、キーワード候補を選べます。リストの中には、対象商材と無関係の組み合わせも出てくるので、うまく選別しながら候補ワードを集めましょう。
これらのツールに「Google サーチコンソール」を組み合わせるのもおすすめです。サーチコンソールは、自社サイトに対してGoogleで検索されたキーワードや表示回数、クリック数・率などを確認できるツールです。実際の検索ワードと選定したキーワードを照合したり、検索されやすいワードが抜け漏れていないかを確認するのに便利です。
こうしたツールは有償・無償含めて他にも多数存在します。いろいろと試してみることが大事になります。
リスティング広告に向いている状況と不向きな状況
キーワード選定に便利なツール
画像が表示されることも?!「広告表示オプション」を設定
2021年5月末以降、Google広告の「広告表示オプション」に新たに「画像表示オプション」が加わりました。「画像表示オプション」は、アカウント開設から90日以上などの利用条件があるものの、指定のサイズ画像を登録しておくと、広告文とあわせて表示されます。Googleでリスティング広告を行う場合、これまでと違い画像も自動表示されるわけです。特にスマホサイトで検索すると自動表示を見かけるので、試しに任意のキーワード(商品やサービスのジャンルなど)で検索して表示状態を確認してみましょう。画像がない状態に比べると、「広告」表示の記載よりも掲載画像がアイキャッチとして機能し、画像に視線が誘導されます。
「広告表示オプション」はGoogle広告だけでなくYahoo!広告にも用意されていますが、前者は12種類、後者は4種類に対応しています。両者とも広告費は発生しますが、オプションの設定自体に費用はかかりませんので、それぞれ各項目の設定をおすすめします。
両者に共通する広告表示オプションで、便利な1つがGoogleだと「サイトリンク表示オプション」、Yahoo!だと「クイックリンクオプション」です。これらは、通常のフォーマットに加えて、追加でリンクと説明文を複数で設定できる機能です。両者とも最大で6つの設定が可能(Googleのモバイル向けだと最大8つまで)です。トップページ以外に直接誘導したいページをリンク設定できますし、広告表示の面積も広がります。
他にもGoogleだと「電話番号表示オプション」、Yahoo!だと「電話番号オプション」を使えば、広告テキストに電話番号の表示が可能に。広告フォーマットは表示上の文字数が制限されていますので、こうしたオプション機能も活用しながら、説明に必要な要素を優先順位をつけながら設定できます。
参考までに、2社ともに共通して用意する(類似する)メニューの残り2つにも触れておきましょう。1つが、Googleだと「コールアウト表示オプション」と呼ばれ、Yahoo!では「テキスト補足オプション」と呼ばれる短いフレーズを追記できるメニュー。もう1つが、Googleだと「構造化スニペット表示オプション」と呼ばれ、Yahoo!だと「カテゴリ補足オプション」と呼ばれる、説明文の下に説明内容をさらに追記できるメニューです。Googleはさらに多数のオプションを用意するので、一度、オプションメニューの項目を確認しておきましょう。
コロナ禍で増えるネット広告需要初めて出稿する場合の注意点
他にもGoogle検索では、検索ワードによって「強調スニペット」と呼ばれる、検索内容の回答に当たる箇所を引用して、検索画面の最上部に掲載されることがあります。もし強調スニペットが掲載されると、検索ユーザーのファーストビューが強調スニペットに奪われがちになります。リスティング広告として検討しているキーワードについては、それぞれが強調スニペットを表示するワードであるかどうかも、あらかじめ実際に検索しながら確認しておくといいでしょう。
コロナ禍によって、リアルイベントを中心に集客施策を手がけてきた事業者などが、リアルに代わる施策をネット広告に求めて身近なリスティング広告に期待するケースも、現場を通じて増えていると感じています。これまでネット広告に積極的でなかったところほど、いろいろと試したいニーズを持つことが少なくありません。予算に余裕があれば、知見を蓄積していく目的も兼ねて進める判断もありますが、予算が限られるほど、成果につながりやすい施策が優先的に実行されるものです。その際、リスティング広告ありきとならないことが重要です。自社が求める目的のために、ふさわしい手段が何かを見極めた結果としてリスティング広告を選ぶようにしましょう。
あわせて、出稿前には肝心の流入先となるWebサイトやランディングページ(LP)がきちんと整備できておくことです。出稿上のテクニカルな話にばかり気を取られず、課題と本質的に向き合う動きを常に心がけましょう。
テキスト以外の要素も掲載される
成果を引き出す準備をすること!