アフターコロナにおける2023年のEC注目キーワード 事例詳細|つなweB

「コロナ後」とは言っても、まだまだしばらく新型感染症の混乱は続くでしょう。しかし、正常化に向けて動いているのは間違いなく、さまざまな面でコロナ前からはガラリと変わってしまいました。そんな中で2023年はどうなるでしょうか。ECを取り巻くテクノロジー、お客様の動向、法律や規制の3つの視点で見てみます。

 

2023年の「テクノロジー」

2019年から始まった「コロナ禍」。まだまだ完全なる終息は見えませんが、世の中は大きく変わっています。まず注目すべきは、ECを取り巻くテクノロジーです。その中でもAI(人工知能)は(01)、機械学習アルゴリズムとディープラーニングの進化が凄まじく、私達の生活に急速に普及してきました。もはやAIはECにとっては無くてはならないテクノロジーになっています。

リアル回帰で売上が厳しい、円安で仕入れの費用も上がって厳しい店舗さんもあることはありますが、私が計測しているEC全体の売上は全体的には上がっています。総じて、コロナバブルで一気にECが広がり、売上が伸びている企業が増えてきました。そこでかつてからあった大きな課題が、ますます顕著になってきました。人材不足です。ECが儲かるのなら人材を確保してもっと売上を上げたい、さらにサポートしたい企業やソリューションを開発したい企業が出てくるのは当然です。その影響で、アウトソーシングをするか、テクノロジーを使うかという選択が出てきますが、今の流れから考えると、AIを使うという手段はかなり現実的な選択肢になっていると考えられます。

将棋のAIのように、次の一手を教えてくれるとしたらどうでしょう? 今まで天才的な頭脳とセンスで売上を上げてきた店長からすれば、優れたAIがあれば、カスタマーサポート、受注予測や受注作業、ページデザイン、自動ページ生成、検索対策などを自動で行ってくれれば人材がいなくてもある程度はカバーできるようになると考えられます。部下はすべてAIというのは可能かもしれません。そうなれば人は企画やアイデアなどに集中できるようになるかもしれません。

 

01 AIがもたらすECでのメリット
すでにAIの活用により「ECサイトの課題」を解決する事例が多数できています。ECサイトで活用するメリットとしては、例えば上のようなことがあります

 

2023年の「顧客動向」

2023年の動きとして注目すべきポイントの2つ目は、お客様の動向です。コロナ禍で大きく変わったなと感じるのは、安心安全な商品、原材料を気にするお客様が増えたところです。この先の未知なウイルス発生なども考えると、この安心安全というキーワードは必須だと考えられます。

SDGs関連のキーワードも重要になっています。2019年2月から4月にかけてECではマスクや消毒液関連が非常に売れたのですが、フードロスも大きなキーワードになりました。最近の異常気象もかなり気になります。異常高温・大雨・日照不足・冷夏などがこれだけ続くと、地球への影響を配慮して行動するのは当然の成り行きかなと思います。私自身、今年2022年9月の台風でクルマが水没してしまいました。50年に1度の大雨として対策を考えていたのですが、それを上回る災害の場合にはなす術もないですし、今後はどうすればよいかを真剣に考えたくなります。 

SDGs関連のキーワードでECに現れているのは、フードロス以外には「エシカル消費」(02)や「ギルトフリー」があります。これらに共通しているテーマは、倫理だと私は考えています。身の回りの出来事から地球規模まで、「倫理的にどうなのか?」を考える方は多いと思いますので今後はますますSDGsを意識したお客様の動向に注視しながらEC運営を考えていく必要があります。そうは言ってもなかなか取り組めないことも多いとは思います。まずはダンボールや梱包の袋の見直し、サンクスカードの素材の見直しなど、身の回りの小さなことから取り組むのも良いと思います。

 

2023年の「法規制」

注目ポイントの3つ目は、法律や規制についてです。このテーマは、個人情報保護の影響が大きいです。ネット広告の世界では、サードパーティクッキー規制の関連でAppleやGoogleも積極的に動いていますが、2023年は大変な状態になると思われます。法律もどんどん変わってきて、ECが盛んになればなるほど規制もそのガイドラインも厳しくなると予想できます。2022年から2024年にかけてECに関係しそうな法改正は表のとおりです(03)。特に労働環境や運送業界への規制、インボイス制度はECにとってかなりの影響があると予想できます。

さらには、Google、Apple、Meta(元FaceBook)、Amazonといった、いわゆるGAFAや日本の楽天やヤフーなどのプラットフォームの独断専行にも規制が入り始めました。今までのように自由に規約やガイドラインを変えることはできなくなっています。これはデジタルプラットフォーム取引透明化法で進んでいます。ただ、まだまだ始まったばかりで、政治的な動きや象とアリの戦いになりがちなので、ここについて弱い立場のEC企業の味方として関係者にはガンバってほしいです。一緒になってECを盛り上げたいです。

 

02 SDGs観点でのECにおける取り組み
フードロス、エシカル消費、ギルトフリーなどECに関わるキーワードの根底は「倫理」でしょう。安心安全な商品、原材料を気にするお客様が増えたことで、今後避けては通れない課題になります

 

03 ECに影響を及ぼすであろう法改正をピックアップ
他にも労働関連でも多くの法改正がありました。2023年の10月にはインボイス制度の導入が控えており、多くの対応が求められます

 

川連一豊
JECCICA(社)ジャパンE コマースコンサルタント協会代表理事。フォースター(株)代表取締役。楽天市場での店長時代、楽天より「低反発枕の神様」と称されるほどの実績を残し、2003 年に楽天SOY受賞。2004年にSAVAWAYを設立、ECコンサルティングを開始する。現在はリテールE コマース、オムニチャネルコンサルタントとして活躍。 http://jeccica.jp/

 

Text:川連一豊
※Web Designing 2023年2月号(2022年12月16日発売)掲載記事を転載

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