ECでは欠かせないWebAPI、メリットとデメリットを押さえよう 事例詳細|つなweB

今やECを行う上で欠かせないのが、WebAPI(Application Programming Interface)です。APIの登場により、従来手動でやっていた商品データや在庫データの連携も受注データの連携を簡単・確実にできる時代になりました。ここでは、ECにおけるAPIのメリット・デメリットを見てみましょう。

 

ECサイトの代表的なAPI連携

ECサイトにおけるAPIは、主にモールが提供しているものを中心に、ショッピングカートシステムや、在庫管理などのバックオフィス業務で利用できるものなどが各社から提供されています。

ECサイト運営でAPI連携を考えるシチュエーションは、大きく2つあります。

?外部システムがECシステムのAPIを利用する場合

?ECシステムが外部WebサービスのAPIを利用する場合

ECサイトが基幹システムやPOSなどの外部システムと連携するケースは?であり、ECサイトにSNSの投稿を掲載したり、外部の決済機能を利用するケースは?です。

ECサイトと基幹システムの連携が求められるデータには、主に「商品データ」「在庫データ」「顧客データ」「受注データ」「出荷データ」の5種類があります。「商品データ」は、例えば商品番号、商品名、販売価格、サイズ、色、商品情報スペック、販売期間などです。これは定期的な情報更新が必要になります。

「在庫データ」は売れた数をリアルタイムに在庫情報を更新して、各ECサイトへ反映していきます。そして「顧客データ」は顧客名や住所、メールアドレスなどECサイトで必要な項目です。さらに「受注データ」は、販売時に受注システムに取り込まれたり、基幹システムへ連携されることもあります。リアルタイムで情報を見える化することでマーケティングや経営判断にも使用できます。

最後に「出荷データ」です。主な役割として出荷指示の取り込み、出荷のステータス更新、配送問い合わせ番号の反映、入庫済み実績からの在庫更新などが挙げられます。これらのデータを登録、取得、更新、削除といった処理をAPIの連携で自動化することができます。

 

01 開発と運用コストを大幅に削減するAPI
ECの場合、APIを利用して外部システムとの連携を行う場合、「顧客データ」「商品データ」「在庫データ」「受注データ」「出荷データ」をECシステムと外部システム間で連携することがほとんどです

 

API連携の主なメリット

APIはWeb上のシステム同士をつなぐ役割を担い、ECサイトとAPIを連携することで、時間とコストの大幅な削減やユーザー満足度の向上といったさまざまなメリットがあります。

例えば、開発期間の短縮とコスト軽減。新規で開発する期間やその開発初期費用を抑えることが可能です。さらに、連携先システムのデータが更新されると、APIで連携されていれば自動で最新情報に更新されます。修正・更新するのに手動で作業する必要がないので、情報を正確に保てます。また、人手のリソースを大幅に削減することができます。効率化という観点で見ると、ECサイト側で顧客データを管理する必要がなくなる場合もあり、個人情報の流出や悪用などのリスクを抑えることが可能となるのです。

さらには、ユーザーの利便性も高まります。ユーザーが会員登録をする時には、今までは電話番号やメールアドレスなどを入力する手間がありました。しかし、APIでAmazonや楽天、Google、SNSなどのアカウントを使用して会員登録ができ、手間がかからないため、新規ユーザーの獲得が期待できます。

そのほかには、ECシステムのプログラム言語や環境を考える必要がなく、API仕様書があれば外部ベンダーに開発の依頼をすることができます。そのため、自社内の開発リソース不足を解消し、効率的なシステム開発も考えられます。

 

APIで押さえておくべきデメリット

では逆に、API連携のデメリットはなんでしょうか。1つは、データベースに穴をあけるためセキュリティが弱いと考えられること。しっかり対策をすることが必要です。

2つ目に、APIは通常のインターネット回線を使用しているため、データロスの可能性があります。対策としては、定期的にバックアップを取って、データロスの対策を行うことになります。3つ目は、外部のサービスに依存するため、サービス提供が突然止まってしまう可能性があることです。提供元と契約内容の確認とメンテナンスを含めた今までの実績を確認しておく必要があります。また、そもそも導入するにはWebやAPIに関する技術的な知識がどうしても必要になります。便利な機能をどんどん導入した結果、APIだらけで複雑怪奇なサイトになるといったことも起きやすくなります。

このように、APIを導入すれば非常に多くの恩恵を得ることができるとともに、それなりにデメリットもあります。こうしたデメリットもあることを理解したうえで、しっかりドキュメントをつくって関係者と共有できるようにしておくことが必要です。そして何より本当に必要な機能のみをAPI連携するのが大事なのです。

 

02 楽天市場のRMSから取得できる
楽天市場では出店者をサポートする独自システム「RMS(Rakuten Merchant Server)」を用意されており、その中の「拡張サービス一覧」に「RMS WEB サービスリファレンス」に、11種類のAPIが用意されています。例えば「商品API(ItemAPI)」は、楽天市場に出品する商品の管理をサポートするAPIで図の6つの機能があります。利用には、商品一括登録サービス(月額利用料1万円)を申し込み、利用許可を受ければ利用可能になります

 

03 Amazonの「SP-API」
https://developer.amazonservices.jp/
セリングパートナーAPI(SP-API) は、現状のECビジネスの需要に対応した最新のAPIセットです。AmazonマーケットプレイスWebサービス(MWS)が2023年12月31日以降利用できなくなり、Amazonにおける開発環境はこちらに移行することになります。セリングパートナーAPIは、MWSで利用可能な機能はもちろん、最新のJSONベースのREST API設計基準、Login with Amazonを使用するOAuth2.0出品パートナー認証、テストエンドポイントなど、多くの新しいAPIが含まれています

 

04 「Yahoo!ショッピング」が解放している無料API
https://developer.yahoo.co.jp/webapi/shopping/
Yahoo!にももちろん、出品管理や商品管理などストア構築・運営する出店者が利用の対象となるAPIの提供がされています。「Yahoo!デベロッパーネットワーク」から登録すれば無料で利用できます

 

川連一豊
JECCICA(社)ジャパンE コマースコンサルタント協会代表理事。フォースター(株)代表取締役。楽天市場での店長時代、楽天より「低反発枕の神様」と称されるほどの実績を残し、2003 年に楽天SOY受賞。2004年にSAVAWAYを設立、ECコンサルティングを開始する。現在はリテールE コマース、オムニチャネルコンサルタントとして活躍。 http://jeccica.jp/

 

Text:川連一豊
※Web Designing 2022年12月号(2022年10月18日発売)掲載記事を転載