プロジェクトで失敗しないための合意形成づくり 事例詳細|つなweB

クライアントと制作側、現場の意思疎通や合意形成は、いかに齟齬なくスムーズにできるかが成否の鍵です。オススメは共有できる場づくりと、共通ルールづくりです。

定例会議がリズムをつくる

みなさんはプロジェクトを立ち上げる際に、メンバーやクライアントとの定例会議を設けているでしょうか。私たちがプロジェクトを立ち上げる際には必ず設けます。

「会議が多すぎる」「非効率だ」というイメージが先行して、会議に拒否感を持つ人たちもいます。確かに無駄な会議を多く重ねても非効率ですが、中身のある効果的な会議は必要です。特に、プロジェクトメンバーやクライアントと定期的に話す場は必須です。「うまく回っていないから助けてくれ」と言われて途中から入る案件では、かなりの確率で定例会議がなく、プロジェクト内での情報共有が図れていません。

定例化せず「必要に応じて」とすると、その多くは実施されません。例えば、近くにいるメンバーと業務についてのコミュニケーションを日常的に持ちますか? 隣や周りにいる気の合うメンバーにも、こまめに状況確認をしあうでしょうか。直近の作業に没頭しがちとなれば、コミュニケーションの時間は意図してつくり出すべきです。

定例会議を設けておくと、日程調整をしなくていいメリットもあります。でなければ、クライアントも含めて、関わる人数が増えるほど、空いているタイミングがなかなか見つからず、調整だけで疲れてしまいます。

定例会議の日程を軸に、全体が動くようにします。定例化すれば会議の進行が洗練され、無駄に長くなることもありません。

コミュニケーションを行える場を意図的に設けておく方が、その都度、状況の共有をしながら網羅的な進行がしやすい

 

どういう会議をするのか定義する

会議体は、クライアントとともに行う全体の計画や作業確認などの会議と、各レイヤーにあわせた会議、制作側の日々の細々とした業務に関わる会議などが考えられます。例えば、プロジェクト全体やフロントデザイン定例、システム・インフラ定例などです。それぞれどういうテーマを話し、誰がリードをするのか、どのような資料を持ち寄るのかを事前に決めておきます。会議体によっては、オンラインミーティングなどになってもいいでしょう。

無駄な会議を増やさず、効果的な会議を定期的に行い、ゴールに向けての共有事項、情報のアップデート、忘れがちなToDoリストの確認を行うようにします。

また、各種の定例会議が、なるべくオープンに、隠し事なく共有できる場となるようにしてください。予定より進行が遅れていれば、ごまかしたくなりますが、嘘は隠し通せないものです。いつかごまかしが効かなくなり、信頼を失います。一度信頼を失うと、報告にかかる工数がかなり膨らみます。遅れた状態や理由をオープンにした方が、意外とクライアントもメンバーも前向きに打開策を講じてくれるものです。

会議終了後は、担当者と期限を明らかにしたToDo、決定事項をメモとして、参加者に展開しましょう。話した内容をすべてメモにすると疲弊するので、最低限ToDoや決定事項だけは押さえましょう。

会議ごとの棲み分け、目的を分けながら、定例会議について上の表のようにまとめて、クライアントと共有しておくのがいいだろう

 

定例会議は木曜日がオススメ

プロジェクトマネージャーの1週間の過ごし方を整理してみます。大きくは、制作側が中心となる内部定例会議と、クライアントとともに行う全体定例会議の2つを中心に考えてみます。参考にしてみてください。

週の始めに内部定例会議を設定し、作業の予定を確認します。一概に言えませんが、朝が苦手なメンバーを想定して、朝早くの設定は控えて、午前は内部定例会議用の準備時間に充てます。スケジュール、タスク管理や進捗状況を反映したWBS(Work Breakdown Structure)、ToDoリスト、課題、前週の議事録を見直して、誰に何を確認すべきかを抽出しておきます。

会議が終われば、クライアントとの定例会議同様に、ToDoなどをまとめたメモをすぐにメンバーに展開します。Wordファイルなどは避けて、開く手間がかからないSlackなどのコミュニケーションツールの利用がいいでしょう。並行して、次の定例会議までの1週間のスケジュール、WBS、ToDoリスト、課題の4点セットの情報更新も行って、内容のアップデートを共有します。

クライアントを含めた定例会議は、木曜日がオススメです。金曜日だと、週末を挟み内容が忘れられがちに。月曜日は祝日などで休みも多いので、内部の融通がつけやすい会議を持ってきます。木曜日が休みの週は、より進んだ状況になることを優先し、水曜日より金曜日を選びます。

クライアントとの定例会議は木曜日にするのがオススメ。月曜日は連休など祝日になる割合が高いので、調整がつきやすい自社内の定例会議を据える

 

共通ルールでストレス軽減!

プロジェクト期間中は、クライアントとも内部メンバーとも、かなり頻繁なやり取りが発生します。膨大な数があるだけに、ルール化できることは決めておき、作業上の混乱やストレスを軽減させましょう。

メールの運用では、タイトルの付け方を指定し、フィルタをかけやすくします。添付ファイルのパスワードは、プロジェクト期間中は決まった文字列を設けておくと、しばらくぶりに開く状況が起きても、「パスワードは??」などの混乱が避けられます。

ファイル名も、決まった書き方を設けて、誰でも迷わず所定のファイルにたどりつけるようにします。Dropboxなどを利用して、関係者ならいつでも共有ができるようにもします。フォルダごとで目的/内容別の管理をしておくといいです。フォルダには「00台:計画/管理系」「10台:要件定義系」「40台:インフラ関連」などとルールをつくり、闇雲にファイルが保存されないようにします。

また、フォルダ内は作業の区切りごとに不要ファイルを削除するなどして、常に見やすい状態に保つようにします。細かい作業ですが、探す苦労や間違ったファイルを更新するようなストレスを回避できます。

運用ルールは経験を重ねるほど洗練されてくる。知見をためながらクライアントと折衝しやすい最適なルールを追求しよう

 

教えてくれたのは…下田 幸祐さん
株式会社JQ 代表取締役社長 https://www.j-q.co.jp/
教えてくれたのは…小原 和典さん
株式会社JQ プロジェクトマネジメント事業部 執行役員
遠藤義浩
※Web Designing 2020年2月号(2019年12月18日発売)掲載記事を転載

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