UI改善はユーザーの「自己解決」向上に貢献する 事例詳細|つなweB

インターネット普及以前から、消費者と企業とのダイレクトコミュニケーション接点(インターフェイス)を担ってきたのはコールセンターだ。電話に抵抗のある若い人たちが増えて、コール(電話)だけでなくメールやチャット、SNS公式アカウントへの問い合わせへの対応も不可欠なので、最近ではコンタクトセンターとも呼ぶ。こうした多種多様なチャネルに求められるのも、広い意味でのUI といえる。

コンタクトセンター業界では、Webサイトやスマホアプリによる「自己解決」がキーワードとなっている。消費者や顧客が自らWebサイトで適切なコンテンツを探し出し、課題や問題を解決することを目指す。自己解決が増えれば問い合わせ件数は減り、浮いたコストを別のマーケティング施策に利用することもできる。消費者と企業の双方にメリットは大きいのだが、現実にはなかなか難しい。

業界大手のトランスコスモスが、2022年末に公表した調査によれば、企業や商品に関して探し物や調べ事をする際に、半数以上のユーザーが企業の公式サイトに必要な情報やコンテンツを見つけられない、あるいは探しにくい、たどりつけないという経験をしている。自己解決できない場合、3人に2人は他社乗り換えを検討したことがあるという結果も出ている。逆に言えば、まだまだWebサイトのUI改善の余地はあるということだろう。

UIの出来は消費者の感情や評価に直結し、ダメなUIはストレスを生む。コンタクトセンターに蓄積されたユーザーの良い体験(UX)についての情報や知見は、WebサイトのUIにも示唆を与えてくれるものが多い。先入観にとらわれず、ユーザーが求める適切なコンテンツを探そう。そしてデータに基づいたデザインや導線の設計で、ユーザーの自己解決率の向上に貢献してほしい。

 

商品・サービスの購入前・購入後において、情報収集・疑問点・不明点・困りごとが自分で解決できなかった場合の原因として挙げられた項目の比率
出典:トランスコスモス株式会社「消費者と企業のコミュニケーション実態調査2022-2023」(有効回答=3,000件)
https://www.trans-cosmos.co.jp/company/news/221201.html

 

Text:萩原雅之
トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/

 

萩原雅之
Web Designing 2023年4月号(2023年2月17日発売)掲載記事を転載

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