ジェンダーギャップの“データ”と“実体験” 事例詳細|つなweB

2019年末、日本のジェンダーギャップ指数が世界121位であったことが話題となりました。そして2020年の国際女性デーには日本マスコミ文化情報労組会議がマスコミの女性管理職の比率を発表し、新聞社の女性管理職比率が7.71%であると報じられています。片や、海外では女性首相が続々と登場し、特にフィンランドの内閣は19人中12人が女性であることは有名な話ですね。

私は2019年の夏からポートランドで暮らしていますが、かつては日本で暮らすITベンチャー界隈のワーキングマザーでした。女性役員比率も育休復帰率も他業界よりは高い傾向にあったと思います。私自身も育休復帰後に独立起業し、その後次男を産んだ後に現職上場会社の子会社代表に就任しました。周りにも子どもを育てながらバリバリ働いているママが少なくありません。男女雇用機会均等法成立時の先輩たちが切り拓いてくれたから、就職氷河期世代の私たちは働きやすい環境を得ることができ、日本でも女性が働きやすくなったかな、男性も育児に参画するようになったかな、なんて感じていた当時。保育園ではパパがママチャリで送迎する姿も見かけ、同世代で育休を取得するパパも増えました。

そしてポートランドに移住した私が最初に驚いたことは、20代に渡米してそのまま米国で暮らしている日本人女性の多さでした。個々にさまざまな事情あれども、自分らしく生きられる選択をした結果、彼女たちはこちらを選んだのだと思いました。そもそも、平日の朝10時にたくさんのパパが公園で子どもと遊んでいますし(仕事は…?)、保育園の送迎はパパが担当する家庭もたくさんあります。小学校の送迎さえも(14時迎えなのに)パパがたくさんいます。自転車に子どもを乗せて、街を走るパパの姿もたくさん見かけます。

「ママはダウンタウンまで通勤しているからさ、僕が送迎も買い物もやってるんだ!」その光景はまさに“衝撃”でした。先日は小学校のお迎えの時に「おやつにスコーンどう? 僕が焼いたんだ!」と、パパ友からひとつもらいました。生のブルーベリーが入っていて、それは美味しくいただきました。

さて、冒頭のデータは日本女性の活躍が確実に世界から遅れていることを物語ります。それと同時に、私は暮らしの中の実体験として、日本のジェンダーギャップの大きさや、性による役割分担が根強く残っていることを感じていました。

データがすべてではない、私はそう思っています。データは信用しすぎると「細かい事象」や「大事なこと」を見落とすから、自分の目で確認することが必要だと思っています。その意味において、このジェンダーギャップはデータと事象が両方揃ってしまった出来事だったのです。

私は地方出身であり女性であることから、多少ですが我慢した経験があります。だから20代になってから「選択できる人生と暮らし」ができるよう努力を継続し、今も続けています。

そして多くの人が、もっと選択できる、自分の人生をつくれる世の中にしていきたいと思っています。「暮らしをつくろう。自分の暮らしのオーナーは自分自身です」と会社のヴィジョンに記しました。これは私が、多くの女性に伝えたいメッセージでもあり、私の信条です。私にできることは、発信すること、サービスをつくること、ぐらい。それがこのジェンダーギャップを埋めることに少しでも貢献できたらと思っています。

このコラムは今回で最終回。皆さんお付き合いありがとうございました!

先進国の中でもジェンダーギャップにおいては断トツに後進国な日本。日々の暮らしで体験するさまざまな事象とデータが結びつくと、真の姿がよりくっきりと浮かび上がってくるのだと思います
出典:Global Gender Gap Report 2020
http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2020.pdf
スイスの非営利財団「世界経済フォーラム」が、男女間の格差を「経済」「教育」「保健」「政治」の4分野を指数化したもの。男性に対する女性の割合(女性の数値/男性の数値)を示しており、0が完全不平等、1が完全平等となる
ナビゲーター:松原佳代
2005年に(株)面白法人カヤック入社。広報および企業ブランディングを担当する。2015年に独立し、株式会社ハモニアを設立。スタートアップの広報戦略、広報人材育成をおこなう。2017年7月より、(株)カヤックLivingの代表取締役を兼任。暮らし、住宅、移住をテーマとする事業を展開する。カヤックLiving/ Twitter @kayom
松原佳代
※Web Designing 2020年6月号(2020年4月17日発売)掲載記事を転載

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