知っておきたいAIのコト　ビジネス導入のためのQ&A 事例詳細

Q1・「AIで成果を出して」と命令が… どうすればいい?!

AIをビジネスに導入する場合、「既存の業務の一部にAIを使う」と「新たな付加価値をつくる」の2通りが考えられますが、導入しやすいのは前者でしょう。しかし、人が行なっている一連の業務をすべて担うことのできるAIは存在しません。例えば営業の仕事であれば「顧客にアポを取る」「要望を聞く」「商品を提案する」「見積りを出す」といった形で、業務内容を細かく分解し、その中からAIの得意なことで課題を解決できる「AIに向いている（導入効果が大きい）部分」を見つけましょう。

Q2・AIの得意なことって？

AIは与えられた学習データから情報の関連性を見つけて分類したり、規則性・ルールを見つけてスコア判定することなどが得意です。迷惑メールの振り分けはその代表的な例。大量の「迷惑メール」と「そうでないメール」のデータからルールを学習し、初めて見たメールも分類ができるようになります。また、コールセンターのサポートAIのように会話内容から回答候補を表示するなど得意な分野でオペレーターを補助しつつ、まだ苦手なコミュニケーションの分野はオペレーターが担うことで運用を現実的なものにしています。

Q3・AIを導入するべきか、判断のポイントは？

迷惑メールを例にすると「◯◯という単語があったらNG」「△△というドメインはNG」といった判断項目が無数にあり、人がルール化するのは困難です。無理につくれば矛盾や間違いも生まれるでしょう。AIはそうした人が把握しきれないルールを学習によって作り出すことができます。もし表計算やデータベースで高精度なルールをつくれるなら、あえてAIにする必要性はないでしょう。また瞬時に大量の作業ができるのもAIの利点。逆に、発生頻度の少ない作業は学習データが溜まりにくいこともあり、導入効果は得られにくいと言えます。

Q4・導入したらすぐに効果が出るの？

今のところ「汎用」といえるAIは存在しません。自社の業務のためには自社のデータを学習させ目的にあわせた作業ができるAIを開発する必要があります。また、精度を高めるためのトレーニングも必要です。AIを組み込んだ業務支援ツール等のソリューション製品においても、多くの場合は自社のデータを学習させるフェーズが必要になるでしょう。同時に、AIと前後のワークフローをどう繋ぐのか、業務体制やシステム側の受け入れ準備を十分に行うことも重要なポイントです。

Q5・どんなデータがあればいいの？

Excelやデータベース、業務システムから書き出したものなど、一定の書式で蓄積された大量のデータが必要です。同じ業務でも支社によってテンプレートが違ったり、同じ意味を表すのに「晴れ」「晴天」「いい天気」など記載方法が属人的である場合は学習に適さないので、適した形に変換する前処理が必要になります。また、迷惑メール判定のように判断を行うAIでは「何が正解か」を学習するための判別情報も必須です。必要なデータの量はケースによりますが、数千件～数十万件に上ることもあります。データの質と量はAIの精度を高めるための大切な要素です。

Q6・導入後のメンテナンスやアップデートは必要？

永遠に変わらない仕事があればAIもそのまま使い続けられますが、ビジネスは度々新しい情報が追加さたり環境が変わるものです。それに応じて適切なタイミングでAIにも新しいデータを学習させる必要があります。ただし、学習の追加によってAIが持つルールの一部が変わり、判断・解答の内容が従来と変わってしまう場合があります。単に学習を追加するだけでなく、目的に沿った形で成長するようチューニングする作業も必要になります。

Q7・こんなハズじゃなかった…となりがちなポイントは？

AIは与えられたデータから学習したルールに基づき情報を分類・判断しますが、判断の過程や理由を示すことはしません。その中身は人間にとってブラックボックスとなっているのです。そのため「なぜその判断をしたのか」と理由を求められると、人間が後付けで考えるほかありません。判断の理由が重視される業務ではこれが問題になることも考えられます。それを理解した上で導入するか、場合によっては人手によるチェックの併用で納得感を担保するのも一つの手段です。

笠井美史乃　監修●大西可奈子
※Web Designing 2018年10月号（2018年8月18日）掲載記事を転載

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