萩原雅之氏が解説する、「テレワーク、都市圏と地方の違い」 事例詳細|つなweB

テレワーク(リモートワーク)の全国規模での浸透状況を見るのに最適なのが、厚生労働省がLINE社と共同で行った大規模アンケートである。コロナ対策のために4月上~中旬で4回にわたり実施。体調や外出機会など行動様式の変化を調べるのが目的で、テレワーク実施についての質問も含まれる。LINEユーザー約8,300万人を対象に依頼されたアンケートは毎回2,400万人前後が回答。日頃回収率に苦労するアンケート調査をする立場には夢のようなデータだ。

サンプルが大きいので、都道府県別の状況も詳細にわかる。公表されている3回分のテレワーク実施率は、企画や事務などオフィスワーク中心の約600万人分、販売や製造などは含まれず正確な実態を表す。グラフを見ると、4月7日の緊急事態宣言を受けて、4月2週目には実施率はほぼ倍に。特に首都圏や近畿圏のテレワーク率は高く東京都では50%を超えた。

一方、地方は10%以下の県が多い。今回のコロナ禍では、感染状況にあわせて自粛要請のレベルに差があったこと、地方では車で通勤が一般的なのも関係するのだろう。テレワークに対するリアリティは都市圏と地方ではまだ大きな違いがありそうだ。 

それでも、コロナ禍がなければこれほど多くの人たちが実際にテレワークを経験することはなかった。重要なのは選択肢が増えることだ。テレワークのテレとは、もともと「遠く離れた」という意味である。会社サーバをリモートで使えるネットワークが整備され、オンライン会議のためのツールの普及も進む。Zoom(ズーム)は半年前にはほぼ無名だったのだ。

エンジニアやWebデザイナーのような仕事は、テレワークに最も適した仕事である。個人の状況にあわせて郊外や地方でも働ける機会が増えることを期待している。

厚生労働省がLINE(株)との協定に基づき行った調査結果(2020年4月30日にリリース)。グラフ中の数値は、第3回の結果が高く、特定警戒都道府県(13都府県)にも重なる都市圏を記載
出典:第1-3回「新型コロナ対策のための全国調査」(対象は日本全国15歳以上) https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_11109.html
Text:萩原雅之
トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/
萩原雅之
※Web Designing 2020年8月号(2020年6月18日発売)掲載記事を転載

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