「環境」「会議」「効率性」…リモートワークの問題解決術 事例詳細|つなweB

「ワークスペース」と「オンライン会議」をどうにかしたい!

IT企業以外でもリモートワークを導入不満や違和感をどう解決した?

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、今までオフィスワークが中心だった多くの企業がリモートワークに移行しました。地域振興やマーケティング、美術館・博物館施設などの分野で、調査研究やコンサルティング、企画設計を行っている(株)文化科学研究所もそのひとつです。 

「弊社は、比較的ロングスパンのプロジェクトにチーム体制で取り組んでいます。基本的にオフィスワークが中心でしたが、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた頃より、全社的にリモートワークに舵を切りました。私自身も、完全リモートワークの生活が続いています」 

そう語るのは同社取締役の西澤信一さん。空間設計や映像関係のキャリアを活かし、リモートワークの課題を自ら解決したそうです。 

 

【CASE1】「仕事に集中できない環境」に困った!

ノートパソコンさえあれば仕事ができる…と、リビングやダイニングルームなどで仕事をする「自宅内ノマド」なワークスタイルが通常モードに。同じくリモートワークをする家族のタイピング音やオンライン会議が気になったり、Stay Homeに飽きた子どもに邪魔されたりと、昼間、仕事に集中できない人も多いようです。

また、一人暮らしでも、いつでもどこでもできるリモートワークは、逆に仕事のオン・オフの切り替えが難しく、集中できないという声も…。

今後もリモートワークが継続するならば、この際、きちんとしたワークスペースをつくりたいと思う人も増えています。

「うちは夫婦二人暮らしですが、妻も在宅時間が長くなりました。私たちにとってリビングダイニングはパブリックなスペース。朝から夜にかけて、いつもだれかがいる空間です。逆に、寝室は就寝時間以外は使われていない。そこで、寝室にワークスペースをつくりました」

180?×40?のバーカウンターのようなテーブルを寝室の壁際に設置。椅子を2脚並べれば、夫婦共有のワークスペースに。テーブルといってもパソコンと資料を置く程度で、奥行きは40?あれば十分だそう。

「壁と椅子の背側にあるベッドとの間は1メートルちょっとしかないのですが、それでも十分なスペースが確保できました。ワークスペースをつくるなら、家の中でもっとも使われていない部屋をアレンジする。これがポイントです」  

 

 

【CASE2】「オンライン会議」に困った!

 最初は戸惑いを感じたオンライン会議に、慣れてきた人も多いのでは? 西澤さんは、オンライン会議の質をグレードアップするためには、ちょっとした準備が必要だと言います。

「リアル会議と比べて、オンライン会議では目に入ってくる情報が限定されます。その分、画面に映るもののディテールが気にかかるはず。たとえば視線。顔が見えていても、相手と自分の視線が一致していないと、とても不自然に感じます」

 椅子の高さとカメラの位置に無頓着だと、上目遣いに映ったり、逆に見下ろす形になったり。正面に視線が来るように調整すると、「アイコンタクト」に助けられ、相手の意思も汲み取りやすくなるのだとか。

「光の効果も重要です。背にした照明や窓からの逆光のせいで、顔が暗くなり表情がよく見えない人を時々見かけますが、これでは台無し。顔にはきちんと光をあてて、明るく映るように工夫すると良いです。照明は壁に反射させ間接照明のように使えば、柔らかい光になって肌もよりきれいに見えるはず。また、背景にも配慮が必要です。オンライン会議のために部屋の模様替えはできないとしても、カメラに映る範囲だけで良いので、余計なものが入らないように整理すれば、雑情報がないすっきりとした映像になり、会議にもより集中できるでしょう」

 オンライン会議は画面に映るものがすべて、最高の“オンライン会議映え”を目指しましょう。

 オンライン会議とは、リアル会議をオンラインで行うだけのもの、という認識は改めた方がいいのかもしれません。

「リアルと映像では、入ってくる情報の質と量が圧倒的に変わります。オンラインでは無駄な情報を減らし、視線を一致させ、表情に相手の視線を集中させれば、説得力や安心感が増す。チーム間のミーティングでは、コミュニケーションが円滑になるでしょう。また、クライアント向けのプレゼンでは、パフォーマンスを向上させることができると思います」

「効率の悪さ」と「孤独感」をどうにかしたい!

【CASE3】「作業効率が悪い」のが、困った!

リモートワークでは、自宅にいながら仕事モードになるために、通勤時と同様のタイムスケジュールで生活している人も多いようです。早朝に起きて、夜は早く寝る—人は体内時計に即して生活するのが、健康ならびにパフォーマンスを発揮するのによいとされています。 

しかし近年、そんな常識が覆される説が発表されました。 それは、人の体内時計は20種類ほどの「時計遺伝子」によって決まるということです。人間の体には、脳だけでなく、皮膚、血管、臓器…各器官に時計細胞があり、それらに24時間というリズムを刻んでいるのが時計遺伝子。時計遺伝子には朝型、昼型、夜型の3グループがあり、相互ネットワークを形成しているのです。 

欧米では時計遺伝子の研究が進んでおり、人間にはそれぞれ「クロノタイプ(体内時計)」があり、それに合わせて生活や仕事をしないと、睡眠障害や代謝異常疾患、がんのリスクが高くなったり、仕事のパフォーマンスが低下したりすると考えられています。アメリカの航空会社や米軍では、それぞれのクロノタイプにあわせてシフトを組むという試みも行われているそう

つまり、必ずしも朝型が正しいわけではなく、自分の体内時計のサイクルに即した生活スタイルが、もっとも快適で健康的であるということ。 

昔からどんなにやってみても、生活を朝型にできなかった—そんな人は、夜型サイクルが適しているのかもしれません。それならば、せめてリモートワーク期間中だけでも、通勤時間分遅く起きて、仕事をスタートしてみては。 

続いて、「一人で仕事をしていると、ついネットニュースやSNSを見てしまい、時間が過ぎてしまうことも。メリハリがない分、仕事の能率が悪くなっている気がする」という声もよく聞きます。 

1日8時間業務といっても、人の集中力が持続する時間は90分が限界ともいわれています。しかもその集中時間帯は、体内時計によって個人差があります。 

そこで、もっとも集中できる時間帯を、クリエイティビティや思考力が必要なアウトプットの仕事にあてる。そして、スタート時や食後など、集中力が低い時間帯に、資料整理や事務処理、メールのやりとりなどを行うのもおすすめです。 

自分自身の集中力の高低に合わせて、その日の時間割を決める。こうすると、ダラダラと仕事をするよりも、効率がぐんとアップします。

 

【CASE4】「オフィスが恋しくて」困った!

リモートワークが始まった当初は「マイペースに仕事ができて効率的」という声もよく聞かれました。しかし、それが、1~2カ月と続くうちに「一人の作業がつらい」という弱音もちらほら。オフィスワークの気づかなかったメリットを、あらためて感じている人もいるのでは?

リモートワークにはない、オフィスワークの長所といえば、いい意味での「無駄」かもしれません。

たとえば雑談。仕事に集中できないとき、リラックスしたいときは、同僚と無駄話。ニュースや最近あった面白いことなどを話しているうちに、気が晴れたり、ストレスが解消されることもあったのではないでしょうか。また、クリエイティブ系の仕事などでは、雑談からアイデアが生まれることは珍しいことではありません。互いにグチを言い合ったり、相手の知らなかった面を知るなど、雑談を通じて、私たちはチームワークを醸成している部分があるのでしょう。

そんな雑談的なコミュニケーションができるアプリが「Spatial Chat」。画面上にアイコンで表示される人同士が交流できるコミュニケーションツールです。アイコンが近づくと声が聞こえ、会話ができるというシステムがユニークで、ライブ感があります。Zoomのように退出のタイミングに悩むこともないので、イベントや飲み会などにも活用できそうです。

オフィスの人の気配、雑音がなつかしいという人には「Reichenbergerstr121」がおすすめ。画面上にあるオフィスから、空調や機械の音、話し声などが、邪魔にならない絶妙な音量で聞こえてきます。ウォーターサーバーやパソコンをクリックすると、その作動音が聞こえるというリアルさ。

部屋で一人で仕事していると静かすぎて集中できない、孤独感がきつい…という人は、このアプリを開きっぱなしにしておくと、適度に人の気配が感じられて安心できるかもしれません。

世界規模の未曽有な出来事に、私たちの生活や仕事は大きな影響を受けています。しかし、リモートワークをはじめ、電子印鑑や教育・医療のオンライン化など、実現したくてもなかなかできなかったことが、スピーディに導入されつつあります。

アフターコロナの世界とは? またそこで展開されるニューノーマルとは?  イメージを膨らませつつ、日々のリモートワークを楽しんでいきましょう。

CASE4_人の気配やオフィス環境を感じられるアプリ(1)
Spatial chat
オンライン交流ツール。画面上にアイコンで表示される人同士が会話できる。近づくと声が大きくなるなど、リアルな臨場感が醸し出せる https://spatial.chat/
CASE4_人の気配やオフィス環境を感じられるアプリ(2)
REMO
南の島の海岸にできたという設定のバーチャルオフィス。ログイン中のメンバーの顔が小さく表示され、「そばにいる感」がうれしい https://remo.co/virtual-office-space/
CASE4_人の気配やオフィス環境を感じられるアプリ(3)
Reichenbergerstr121
オフィスの環境音を再現。電話やタイピング音などが聞こえる。邪魔にならない環境音なので、かけっぱなしで仕事するのもおすすめ https://imisstheoffice.eu/
CASE4_人の気配やオフィス環境を感じられるアプリ(4)
roundz
声だけでつながるバーチャルオフィス。隣の人に話しかける感覚で会話ができる。邪魔せず、邪魔されない距離感がかなり絶妙 https://roundz.jp/

 

教えてくれたのは…西澤信一
株式会社文化科学研究所  取締役 プロデューサー。空間設計や映像制作などのキャリアを活かして、文化領域を中心に、地域振興やマーケティング、コミュニケーションデザイン、美術館・博物館施設など、幅広い分野で調査研究、コンサルティング、企画設計、紙媒体やウェブサイトの編集・制作を行っている。 https://www.ifa.co.jp/
片岡理恵
※Web Designing 2020年8月号(2020年6月18日発売)掲載記事を転載

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