【タイアップ】コミュニケーションデザイン 最適な形を求めて 事例詳細|つなweB
【タイアップ】コミュニケーションデザイン 最適な形を求めて
タイアップ:一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会

 

目まぐるしい技術の進歩や、生活様式や人々の習性の変化により、企業と消費者のコミュニケーションは常に転換している。情報伝達媒体の役割や提供方法にも見直しが求められ、紙以外のメディアが主流の現代で、正しい情報を、求められるタイミングで、どう正確に届けるか頭を悩ませる企業も多い。そこで多様な専門家による座談会を開催し、これからのコミュニケーションデザインのあり方を考えていった。

 

社会の変化がコミュニケーションのあり方を変質させる

企業と消費者間のコミュニケーション、その変化に影響を受けるもののひとつとして取扱説明書がある。従来は紙にまとめられ製品と同梱されて消費者に届けられていた取扱説明書は、近年、メディアの多様化、紙資源保護、ニーズの変遷等の理由でWebやアプリなどデジタルでの提供が増えている。これには利便性を高める側面もあるが、情報のつくり方や伝え方にも変化が求められるため、制作側には悩みの種である。そこで、製品情報の作成と提供に関する専門家団体である一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会は、企業と消費者のコミュニケーションをテーマにするコミュニケーションデザインシンポジウム(以下、CDシンポジウム)に向けて、コミュニケーションの最適解を考えることとなった。議長を務める小野友嗣氏は、製品情報をめぐる現状とCDシンポジウム2024について次のように話す。

「製品サポート情報はなくならなくとも、フィジカルな伝達媒体がなくなる可能性を感じます。CDシンポジウムでは色々な情報を提供・交換しながら、未来を見据えた最適解を導くきっかけをつくりたいと思っています。そんな想いを抱きながら、シンポジウム2024実行委員会で今年のテーマを検討しました。」(小野氏)

 

多様な効果が期待できる製品情報のオープンソース化

今後のコミュニケーションや取扱説明書のあり方の議論の中で、Web解析やデジタルマーケティングの専門家である安西敬介氏からは「製品情報のオープンソース化」という提案がなされた。誰もが製品情報の修正や追記をできる環境を用意することで情報精度の向上や、ユーザーが求める情報の集積が実現できる他、利用者や製品・サービス関係者の知識のアップデートなども期待できるという。

「先日ある製品の購入を検討していた際に『この情報がわかれば買うのに』と悩んでいたのですが、企業公式のどこを見ても求める情報はありませんでした。その後一般ユーザーの口コミで疑問を解決できたので購入を決断したのですが、そういったケースは少なくないと思います。製品を世に出した後に多くの人の目を通すことで企業が考えつかなかった製品自体の強みや弱み、それに付随する情報の粒度の適正さがわかってくるはずなので、そこに企業も関わる仕組みができれば、自ずと“野良情報”のようなものも減らしていけるでしょう」(安西氏)

アメリカでは実際に企業がインターネット上のコミュニティに参加することでユーザーの意志決定に関与するケースが増えているという。

 

求められるのはコミュニケーションチャネルの創出

新時代の製品情報のあり方を探る上で考えなければならないことは他にもある。例えば「いかにしてコミュニケーションチャネルを創出するか」という点だ。これまでは製品に同梱された段階で自然と消費者の手元に届いていたが、紙以外の媒体で提供することとなると、ユーザーが能動的に情報を取得する動きを求めることとなる。そうなると、単に情報のつくり方を変えるだけではなく、マーケティングやセールスの領域も含め、より俯瞰的にコミュニケーションのあり方を見つめ直さなければならない。長らくテクニカルコミュニケーションに携わってきた黒田聡氏は言う。

「安全情報を担保していれば取扱説明書のコミュニケーションチャネルは企業ごとにマネジメントしていいことになっています。そのため、マーケティングやセールスとの線引きを再定義していき、新しいチャネルのあり方を考え、取扱説明書のない世界が来ても良質なコミュニケーションを実現できるように努めていかなければならないと考えています」(黒田氏)

情報の伝え方と届け方は、これからも変化し続ける。だからこそ、試行錯誤しながらコミュニケーションデザインの本質を掴むことが必要となるのだ。

 

Suggestion_01_説明書自体がない世界になっていく可能性を感じて

近年、技術が進歩し、人々の生活スタイルも変化しました。これまであったものが実はなくなっても大して影響がないのではないか、と気付かされたことも多くあります。時代の転換期に差し掛かり、取扱説明書も従来通りの形ではいられなくなっています。取扱説明情報の必要性はなくなりませんが、説明書自体がない世界になっていく可能性を感じています。一方で、これまで連綿と継承されてきた伝えるための技術や考え方にはリスペクトを払わないといけません。これらを踏まえながら、「情報の伝え方が今まで通りでいいのだろうか」「新しい伝え方とはどのようなものだろうか」といったことを考え、これからの世の中を思い描いていく必要があるはずです。製品情報やコミュニケーションに関わる人々と共にそのことを考えるために、「How do you 伝?」を8月のCDシンポジウムのテーマにしました。

 

例えるなら「伝聞」という古からの伝達、AIなどの最新テクノロジーを駆使した伝達。両者を取り込みながらよりよい情報伝達について考える必要がある
小野友嗣
リコークリエイティブサービス(株)
CDシンポジウム担当 JTCAシンポジウム2024
全国区実行委員会議長

 

Suggestion_02_世に出すことで追加情報を得る仕組みの可能性

ソフトウェアメーカーの間では、公式のヘルプページとは別にGitHubを製品の活用ガイドのように使うケースも多くあります。世に出すことで追加情報を得る仕組みは可能性があるのではないかと感じます。オープンソースコミュニティには検索性や網羅性の低さ、同一情報の頻出などの課題がありますが、従来の取扱説明書が持つ検索性や網羅性といった強みとの融合や、企業担当者やコミュニティリーダーのような存在を用意することで解決できるはずです。その可能性を探ることは、ひとつの糸口へと結びつくと思います。

 

製品情報をオープンソース化することにより、企業からの一方向的な情報の流通から、コミュニティによる“役立つ”情報へのアップデートが期待できる
安西敬介
Nudge Experience合同会社 代表

 

Suggestion_03_コミュニケーションチャネルの創出をデザインする

新しいコミュニケーションチャネルをデザインしていく上で大切になるのは、「どうすれば実現できるのか」ではなく、「より良いコミュニケーションを実現するためにはどのような形、届け方が最適なのか」から考えていくことです。そこに情報伝達のプロであるテクニカルコミュニケーターが関与する余地は大いにありますし、そのあり方をCDシンポジウムという場で議論し、評価したいと考えています。

 

マーケティングでいう「コミュニケーションチャネル」の考え方をもとに、ユーザーへの最適なアプローチについてアップデートしていく必要がある
黒田聡
一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会評議員/企業経営者
大学でコミュニケーション技術の教育にも関わる

 

CD&TCシンポジウム2024

一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会(JTCA)では、取扱説明書というパッケージ化された文書が時代に応じて様変わりしている背景を受け、本座談会の内容をはじめとした情報を「どうつくるか」「どう届けるか」「どう使うか」等について、時代に即した技術の知識と研鑽に取り組むためのシンポジウムを開催しています。

なぜ人と人とのコミュニケーションがこんなにもスムーズにいっていないのでしょうか。テクニカルコミュニケーターのミッションは、必要とされている情報を、ストレスを感じることなく受け取れるように届けることです。提供する情報は簡潔で読みやすいものであることはもちろんのこと、ピンポイントで求められている内容であることも重要です。届ける情報を特定するには各コンテンツに属性(メタ情報)を持たせる必要がありますが、この領域の知識の普及が欧米と比べて遅れているとも感じます。

CDシンポジウムでの意見交換を引き継ぐ10月のTCシンポジウム2024では、このような課題を実務的視点で取り上げます。AIがテクニカルコミュニケーターにどのように関わってくるのかについて意見交換する場も用意します。メタ情報の標準、「Information Management」「Information Delivery」についての理解を深める場としてもご活用いただけるよう、ドイツのTC関係団体の協力を得たセッションも企画しています。コミュニケーションに関する幅広い話題における意見交換と学びの機会になるよう、さまざまな製品分野、担当業務の担い手が集う実行委員会で準備を進めています。皆様のご参加をお待ちしております。

 

上野由紀子
DMG森精機(株)
TCシンポジウム担当 JTCAシンポジウム2024
関西地区実行委員会議長

 

コミュニケーションデザイン(CD)シンポジウム2024

[テーマ] How do you 伝?
配信期間:8月27日(火)・28日(水)・29日(木)
配信形式:Zoomウェビナー形式のオンラインライブ配信
https://jtca.org/symposium/cd-symposium/

 

テクニカルコミュニケーション(TC)シンポジウム2024

開催期間:10月9日(水)・10日(木)・11日(金)
開催場所:京都リサーチパークで対面開催
https://jtca.org/symposium/tc-symposium/

 

本記事は一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会とのタイアップです。

 

Text:久我智也 Photo:山田秀隆