セールスフォース・ジャパン(Salesforce)は11月10日、最新の消費者調査「コネクテッドショッパー最新動向」(第5版)の日本語版を発表した。同レポートでは、小売業者と買い物客がコロナ禍後の小売業界の状況にどう適応しているか、生成AIが小売業の状況にどのような変化をもたらしているのかをまとめている。
このレポートは、18か国の2,400人の買い物客と1,125人の小売業界リーダーを対象に実施した調査結果に基づくもの。
17%の買い物客は、生成AIを使用して購入商品のインスピレーションを得たことがあると回答している。買い物客の大半は生成AIを積極的には利用していないが、それがショッピングに役立つかどうかを探ることには関心を示している。これを受けて小売業者は生成AIを積極的に導入しないまでも、顧客エンゲージメントやオペレーションにおいて生成AIがどのような役割を果たすかの評価に追われているという。
実店舗でのショッピングはコロナ禍後の回復期に入り、2021年には購入の59%がデジタルで行われたと推定されるが、今年は51%に減少した。しかし、2025年にはデジタルでの購入が全体の56%に増加すると予測されることから、小売業者は統合プラットフォームへの投資を促進しており、60%は戦略立案または実行のフェーズに入っているということだ。
今でもEコマースやアプリは、ブランド、小売業者、オンラインマーケットにとって人気のデジタルショッピングツールだが、SNS、メッセージングアプリ、ライブストリーミングなど個々のブランドや小売業者とは関係がないデジタルチャネルや配信アプリも勢いを増し、現在では買い物客の59%がSNSで購入したことがあると回答し、2021年の15%から約4倍に増加した。
買い物客の間でもデジタルツールが実店舗での体験に浸透しており、60%が店舗内でモバイルデバイスを使用していると回答した。その方法として、スマートフォンを使って商品をネット検索(36%)、QRコードをスキャン(32%)、店舗内での購入品の代金をモバイル経由で店舗のアプリを使用して店内で決済(スキャン&ゴー、18%)が挙がっている。
小売業者も、32%の店舗スタッフが仕事でモバイルデバイスを使用していると推定され、この数字は2026年までに41%に増加するとみられる。その用途としてはロイヤルティプログラムの登録、カスタマーサービス、POSの操作などがある。また、買い物客の57%はオンラインで購入した商品を店頭で受け取っており、49%はオンラインで購入した商品を店頭から自宅へ配送している。一方、小売業者は実店舗での配送機能の計画を強化しており、オンラインで購入した商品を実店舗に返品できるサービスを提供する小売業者は52%に増加し、オンラインで購入した商品を店頭で受け取ることができる割合は66%に増加すると予想されるという。
また、買い物客が加入しているロイヤルティプログラムは、2021年の4.3個から減少し、現在は平均3.4個と推測される。買い物客がメンバーシップを絞り込む中、小売業者はロイヤルティプログラムを強化。現在、75%の小売業者がロイヤルティプログラムを提供しており、さらに24か月以内に22%が提供する予定だという。
既成のポイントプログラムを超える新たな戦略が求められているという。SephoraのBeauty Insiderのように、ランキングを設定したロイヤルティプログラムに加入している買い物客は1/4に過ぎず、Nectaのようなヨーロッパで人気のブランド連携モデルへの加入者はさらに少ない。そのため、小売業者は差別化された特典や体験を提供し、顧客内シェアを高める余地が十分に残されているとしている。
どのタイプのロイヤルティプログラムを計画するかにかかわらず、小売業者は、投資収益率(ROI)の向上を妨げる一連の課題、特に不十分なターゲット設定に関する顧客インサイトや、市場機会/競合他社への速やかな対応の欠如に対応しなければならないと、Salesforceは指摘する。
Salesforceのリテール担当VP兼ジェネラルマネージャーのRob Garf氏は、次のように述べている。「消費者はショッピングジャーニーを通じて、店舗内でのブラウジングからソーシャルでの購入まで、リアルおよびデジタルでの多くのタッチポイントを行き来しています。生成AIは、小売業者のパーソナライゼーションを高め、摩擦を減らすためのゲームチェンジャーとなり、最終的にはロイヤルティを高めウォレットシェアを拡大するでしょう」