不正競争防止法 | 企業間の公正な競争を確保 事例詳細|つなweB

不正競争防止法は、企業間の公正な競争を確保するための法律で、具体的な不正競争行為が複数列記されています。また、2023年6月の改正では、デジタル空間における商品の形態の模倣行為も明確な規制対象として示されました。

 

大井哲也先生
パートナー弁護士/TMIプライバシー&セキュリティコンサルティング株式会社 代表取締役
柴野相雄先生
パートナー弁護士
鈴木翔平先生
弁護士

教えてくれたのは…TMI総合法律事務所
デジタル社会やITなど、新しい時代にも即した価値の提供を目指す法律事務所。中小のWeb制作会社や開発会社をはじめ、さまざまな企業の相談にも応じています。https://www.tmi.gr.jp/

 

商品やブランド盗用の禁止はWeb制作にも影響する恐れ

不正競争防止法とは、知的財産権に関する法律の1つです。企業が不正な手段でほかの企業と競争することを防ぐ目的で制定されています。この法律では、周知・著名な商品等に関する表示やブランドの盗用、営業秘密の盗用、虚偽・不正な広告など、複数の不正競争行為が列挙されています。

列挙されている事項の中で、Web制作・運用上特に注意が必要なのが、周知・著名な商品等に関する表示やブランドの盗用です。Web制作などで、周知な他社の商品等に関する表示やブランドイメージを模倣したデザインを掲載し、消費者が混同(誤解)してしまうような場合は、不正競争防止法の1つ「周知表示混同惹起行為」に当たります。また、著名な他社の商品等に関する表示・ブランドを自己の商品等に関する表示として使用する行為もNGです。

また、2023年6月の改正では、これまで曖昧だった「デジタル空間における商品形態の模倣」が、明確に不正競争行為になるとされました。メタバースなどで現実にある商品を模倣したり、ゲームやWebサービスの課金アイテムとして現実にある商品のデジタルな模倣品を提供するといったことが該当しうると考えられます。

Web制作・運用で注意すべき不正競争防止法の項目

不正競争防止法に列挙されている不正競争行為のうち、Web制作で特に注意すべき項目。「不正競争防止法の概要」(経済産業省)を基に編集部にて作成

 

先生に聞くQ&A

Q_有名企業のドメインに似せたドメインを取得すると違法になる

A_不正競争防止法上で明確に指摘されています。似たドメインを取得しないようにしましょ

不正競争防止法では、他者と同一・類似のドメインを使用する行為を明確に禁止しています。企業から訴えられた場合、ドメインの差し止めや登録抹消申請手続きを求められるほか、過去にはドメイン使用許諾料相当の損害賠償が命じられたケースもあります。有名企業と似たドメインをつけてアクセスを期待するやり方は避けるべきでしょう。

 

このほか、他社の特定商品の名称と同一・類似のドメイン名を取得することも該当します

 

Q_ECサイトの商品情報が事実と異なる場合は不正競争防止法違反になる

A_「気づかなかった」では済まない可能性もあります。違反した状態なので、気づいたら速やかに修正を

不正競争防止法では、商品の原産地や品質、内容などを誤認させる表示をする「誤認惹起行為」が禁じられています。例えば、ECサイトで誤った産地を掲載していた場合は、これに該当する恐れがあります。また食品の場合は、不正競争防止法だけでなく食品表示法にも抵触します。意図的なものではなく、ECサイト上だけでの誤表記だったとしても問題です。

不正競争防止法は、他者の不正競争行為により営業上の利益を侵害された者が当該他者を民事で訴えたり、刑事告訴したりした時に問題が顕在化します。一方、食品表示法は行政法規なので、法律を遵守していなければ問題になり得ます。もし自分たちで誤りに気づいたら、誰かに指摘される前に速やかに対応しましょう。

 

Text:小平淳一
Web Designing 2023年12月号(2023年10月18日発売)掲載記事を転載