景品表示法 | 商品・サービスに関する不当な広告表示を禁止 事例詳細|つなweB

自社の商品やサービスをPRするときは、「より良く見せたい」という気持ちがどうしても湧き上がってくるものです。しかし、明確な根拠がない表現を使ってしまうと景品表示法に抵触する可能性もあります。表示方法の注意点を確認しておきましょう。

 

大井哲也先生
パートナー弁護士/TMIプライバシー&セキュリティコンサルティング株式会社 代表取締役
柴野相雄先生
パートナー弁護士
鈴木翔平先生
弁護士

教えてくれたのは…TMI総合法律事務所
デジタル社会やITなど、新しい時代にも即した価値の提供を目指す法律事務所。中小のWeb制作会社や開発会社をはじめ、さまざまな企業の相談にも応じています。https://www.tmi.gr.jp/

 

消費者に合理的な選択の機会を与えるための法律

景品表示法とは、消費者が商品やサービスを合理的に選択できるようにするための法律です。偽情報や過大な景品などによる不正な顧客誘引により、消費者の判断が歪められてしまうのを防ぐ狙いがあります。

景品表示法は、主に2つの行為を制限または禁止しています。1つ目は、不当表示の禁止。商品やサービスが、実際よりも著しく優良または有利であると誤認する表示を禁止します。

不当表示は、バナー広告やランディングページだけでなく、パッケージや店頭での表示、公式サイトなど、商品・サービスに関する表示全般に関わってきます。また、商品・サービスを提供するメーカーはもちろん、広告を掲載するメディアにも影響が及ぶ可能性があります。

2つ目は、景品類の制限および禁止。過大な景品類を提供することで、商品・サービス自体の価値ではなく景品の魅力に釣られてしまわないように景品に制限を設けています。

本稿では、特にWebサイトの制作・運用で注意すべき、1つ目の「不当表示の禁止」について掘り下げていきます。

景品表示法の内訳

景品表示法では大きく分けて2つの行為を禁止または制限しています。このうち、Web広告やWebサイトでの記載については、1つ目の「不当表示の禁止」が影響してきます

 

実際より著しく優良であると思わせる「優良誤認」

「優良誤認」とは、景品表示法において重要な概念の1つです。この言葉は、商品やサービスが実際よりも、あるいは、競合の商品・サービスよりも、著しく優れているように表示することを指します。例えば、10万km走行した中古車を3万kmしか走っていないように見せかけると、優良誤認に該当します。

また、合理的な根拠のない効果・性能の表示も優良誤認に該当します。例えば、合理的な調査を行わずに「除菌率99%」と謳った場合などです。優良誤認の疑いがある場合、消費者庁は表示の裏付けとなる資料の提出を求めることができます。

取引条件がお得だと誤認させる「有利誤認」

有利誤認と優良誤認は言葉の響きが似ていますが、内容は異なります。有利誤認は、商品やサービスの「取引条件」が実際よりも有利である、または競合他社に比べて有利であると誤って信じさせる行為です。例えば、「全額返金保証!」と広告しているのに、実際は多くの制限がある場合、これは有利誤認に該当します。

また、参考価格と販売価格を併記して、大幅に値下げされているように思わせながら、参考価格が実際の状況と大きく異なる場合も有利誤認に当たります(いわゆる「二重価格表示」の問題)。

 

まとめ
●「不当表示の禁止」と「景品類の制限および禁止」に大別される
●不当表示の禁止には、優良誤認と有利誤認という概念が含まれる

 

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先生に聞くQ&A

Q_「安心」「たっぷり」「高性能」など、曖昧なキャッチコピーでも抵触する可能性がある?

A_合理的な根拠を示せないと問題になる可能性があるでしょう

広告のキャッチコピーや説明文で「安心」「たっぷり」「高性能」といった言葉を使うと、優良誤認に該当してしまうのでしょうか? いずれも明確な基準がない表現ですが、明確な調査や検証に基づいていないと、使用してはならないのでしょうか?

実際には、特定のワードだけで判断されるのではなく、広告や記事全体を確認して、総合的に判断が下されます。「安心」や「たっぷり」といった表現は、明確な偽情報・誤情報に比べて客観的に正否を判断しにくいと言えます。しかし、その場合でも、表示されている内容の合理的な根拠を示せないと問題になる可能性があるでしょう。

また、「最軽量級」や「最速クラス」などといった言い回しにも注意が必要です。その製品ジャンルで一般的になっているクラス分けがあるなら問題ありませんが、広告や記事の作り手による主観的なクラス分けの場合、やはり問題になることがあります。広告などでよく見られる表現ですが、曖昧にしておけば問題ないだろう…という思い込みは危険です。

迷ったときは、「事実」を言及しているのか誰かの「評価」なのかに注意しながら、言い回しをチェックしましょう。事実の場合は、特に客観的な真実性が問題となりやすいので、評価の場合以上に裏付けとなる証拠は重要と言えます。

 

言い回しを確認するときは、次の2つのポイントに注意しましょう(編集部作成)

 

Q_去年まで世界最軽量だった製品を「世界最軽量」と謳ってもいい?

A_ 消費者に誤解を与えないために調査時期などの情報はわかりやすく書き添えるべきです

例えば、ある製品が2022年まで世界最軽量で、2023年に他社製品に追い抜かれてしまったとします。過去の実績をいつまでアピールし続けるかはメーカーの判断次第だと思いますが、消費者に誤解を与えないために2022年当時の調査だということをわかりやすく書き添える必要があります。

但し書きは、わかりやすい位置に書かれている必要があります。長いWebページの一番下に小さく書いておくようなやり方は認められないでしょう。

なお、表現の根拠になるデータやアンケート結果を掲載する義務はありませんが、もし問題になった時、証拠として提出できるように用意しておきましょう。もちろん、根拠となる調査やアンケートは、客観的で合理的なものである必要があります。

 

Q_「個人の感想です」などの但し書きがあれば問題を回避できる?

A_ 但し書きだけでは、回避できません

広告には「個人の感想です」といった言い回しがよく出てきます。それが本当に実在するユーザーの声であれば、主観的な表現をしても問題ないのでは?と思うかもしれません。

しかし実際は、それが実際のユーザーの感想であったとしても、広告として表示されている以上は、景品表示法の規制対象になります。似たような話で「効果には個人差があります」といった注記をしたとしても、それによって規制を免れることができるものではありません。やはり表現を裏付ける客観的な根拠を用意しておく必要が出てきます。

「個人の感想です」や「効果には個人差があります」を免罪符にして、好き放題に書けるわけではないことに注意しましょう。

 

Text:小平淳一
Web Designing 2023年12月号(2023年10月18日発売)掲載記事を転載