ステマに関する景品表示法改正は誰もが無縁ではない 事例詳細|つなweB

2023年10月に景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)が改正され、ステルスマーケティング(ステマ)に法規制がかかる。景品表示法は、ウソや大げさな表示、過大な景品などを規制する、広告やマーケティングに直接影響する法律だ。そこにステマへの法規制が加わるわけだが、消費者庁は「広告主の依頼であるにもかかわらず、それを隠すこと」と明快に定義する。一貫した法の趣旨は、消費者をダマすなということだ。

今回の改正に先立って、消費者庁は2022年に8回の専門家会議で内容を検討している。事務局が実施したヒアリングでは、ステマは売上効果があり、やりたいと考える広告主は多いという。また、インフルエンサー対象の調査では、「依頼されたことがある」が41%、このうち「依頼を受けた」インフルエンサーは44%にのぼる。ステマが「悪いこと」と明言したのは過半数で、「わからない」という回答も多い。インフルエンサーがオススメした商品の購入経験がある消費者も少なくない。こうした現実は、長年の広告・マーケティング業界の慣習として拡大、浸透してきた。

例えば、ステマの対象が客観的に見ても品質の高い商品で、レビューを依頼されたインフルエンサーも惚れ込んで広告と表示せず紹介し、そのオススメを見て購入したユーザーも満足しているケースもあるだろう。この場合、投稿は自主的か、依頼者の意向が反映していないかなどのチェック項目で判断されるという。

法規制が遅れたのは、そうした線引きの難しさも理由であった。モラルや当事者の勝手な解釈ではなく、明確な基準ができた意義は大きい。消費者庁のガイドラインは、誰もが読んでおくべきだ。改正前から実施中のものも対象となるので、抵触しそうなものは速やかに中止しよう。

 

上のデータは、消費者庁の調査報告書「ステルスマーケティングに関する検討会 報告書」(令和4年12月28日)にも掲載されている
出典:リデル株式会社「41%のインフルエンサーは企業からステマを依頼されたことがある」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000364.000011944.html

 

Text:萩原雅之
トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/

 

萩原雅之
※Web Designing 2023年12月号(2023年10月18日発売)掲載記事を転載