日本のデジタルデザインをコペンハーゲンで語って感じたこと 事例詳細|つなweB

ガーデンエイト・デンマーク滞在記

こんにちは、Garden Eightの酒井です。2019年6月に約1週間、Garden Eightのメンバーとデンマークのコペンハーゲンに滞在しました。デンマークは短い夏を迎えた頃で、本当に気候のよい時期でした。暗い長い冬とは打って変わって、人々は街を陽気に行きかい、マンションのベランダでは日光浴を楽しむ人たちの姿も多く見かけました。
 

色とりどりの建物が並ぶデンマークの街並み

さて、今回私たちがデンマークを訪れた理由は2つあります。ひとつは、北欧3国に拠点を持つブランディングエージェンシー「BOLD」との協業のため、そしてもうひとつは弊社のクライアント「ayanomimi」の10周年記念パーティに出席するためです。

ayanomimiは、日本とデンマークが共有する価値観を損なわずにビジネスをサポートする、主にコンサルティングを提供している会社です。デンマーク訪問のたびお世話になっている同社代表の岡村彩さんとは、以前熊本の黒川温泉で取り組んだプロジェクト「KUROKAWA WONDERLAND」をきっかけに出会ってから数年。弊社でコーポレートサイトを制作させていただいたり、東京で共同イベントを開催したり、様々な場面でご一緒してきました。

日本とデンマークの間には、日本の皇室と欧州最古と言われるデンマーク王室の交流を元に、150年前から続く文化交流があります。デンマークには昔から「クラフトマンシップ」や「クリエイティビティ」を尊重する風潮があり、一方日本にも「職人気質」「匠」のような物づくりに対しての言葉があります。古くから互いの伝統、技術、手法を学び合い、発展を続けてきたデンマークと日本の2国間には、さらなるコラボレーションの可能性があるのではないかと岡村さんは教えてくれました。

今回の滞在では、そんなayanomimiが主催するイベント2つに参加してきました。

 1. ayanomimi主催のトークイベント

まず、今回の滞在に合わせて、Garden Eightがコペンハーゲンの皆さんに「日本のデジタルデザイン」についてお話する機会を企画 ・運営してくださいました。朝9時開始の、早起きイベントでした...!当日は、フルーツやパンを囲み和やかな雰囲気の中、デザイナーの方々をはじめとして、デンマーク在住の日本の方も多く参加されていました。
 

ayanomimi主催トークイベントの様子

イベントでは、主に日本のデジタルデザインの特徴やトレンドを、言語・文化・技術の観点から、お話しました。10数年前のFLASHが全盛期だった時代のこと、日本語フォントは英字フォントの100倍以上のファイルサイズを要すること、新宿歌舞伎町や楽天市場をはじめとする”日本らしい”ウェブサイトの混沌とは裏腹に「わび・さび」や「茶道」などミニマルを愛する文化が日本文化の根幹にあること、など事例を交えて紹介しました。

イベント後はプレゼン内容へのフィードバックに加えて、政治や文化に関する世間話などで盛り上がりました。中でも、日本在住経験もあるデンマークの方からいただいたフィードバックが印象的でした。ここでは2点紹介します。

1点目は「日本人はすぐ日本基準で比べがち」という話です。例えば「日本では~~だけどデンマークでは~~なんだ。」のような思考です。聞いた時にはいまいちピンとこなかったのですが、その後、自分がまさに日本基準で喋っていることに気が付いて、いかに自分本位の場所に基準を置いているか強く感じる良い機会となりました。日本のテレビ番組やメディアを通じても、日本が世界の中心かのように判断している場面は意外に多いと思います。少しの差かもしれませんが、思考に気をつけることで、違いに寛容になったり、物事の柔軟な判断ができるなと感じました。

2点目は、日本企業の海外進出の話です。日本から海外に進出することで伸びるビジネスはこれから増えていくと思うが、海外から日本へのビジネス進出は難しく感じているという内容でした。特に、文化と言語の違いが、海外から日本に進出する際の大きな障壁になるということです。講演の中でも、日本に存在する障壁の話はしましたが、デジタルに限らず、他業界でも同じような状況なのだと思います。入りづらいと感じてられている今こそ、もしかしたら、チャレンジをすべき時期なのかもしれません。私達独自の文化を改めて理解した上で、日本から打って出る機運が高まっているのではと感じました。

例えば、デンマークでは「Sustainability」をキーワードにビジネスやトレンドが動くことが多くあります。この「Sustainability」の精神は、日本人が感覚として備えている、自然との共存やもったいないと思う気持ち、助け合いの精神や代々受け継ぐこと、にとても近いように思えます。日本人がこれまで無意識に受け継いできた感覚を言語化し、発信していくことで、それが日本ならではのユニークさとして伝わり、西洋とは一味違うアドバンテージになるのではないでしょうか。

 2. ayanomimi10周年記念パーティ

翌日、ayanomimiの設立10周年記念パーティに参加してきました!参加者は、彩さんが今までビジネスをサポートしてきたクライアントや事業パートナー、友人やご両親まで総勢50名以上が集まり、ayanomimiの設立10周年を祝う素敵なムードに包まれていました。
 

ayanomimi 10周年記念パーティの様子

イベント会場に置いてあった素敵なスツールは、ayanomimiが昨年リリースした「Olive Barstool」でした。これは日本の方(岡村さんのお父様です!)とデンマークの方が2人で設立したデザイン会社「O&M Design」と共同で制作しており、デンマークと日本に共通する「シンプルで良質なデザイン」そのものでした。スツールでは珍しく、シートを取り外し好きな色・素材に付け替える事ができます。良質なものを長く使う、というデンマークらしさが滲み出ているプロダクトですね。
 

スツール「Olive Barstool」

また、この日の食事は特別に、デンマークのレストランnomaでレシピも作成されているシェフの高橋惇一さんが振舞ってくださいました。nomaは、2010年以降「世界のベストレストラン50」で4度にわたり世界1位を獲得しており、デンマーク料理の新しい概念を作っているレストランです。私は初めて蟻を食べましたが、育った土地によって蟻の味も異なるそうです。
 

ayanomimi 10周年記念パーティで提供された食事

このイベントを通して、岡村さんが10年間繋げてきたデンマークと日本を人や会社から垣間見ることができました。岡村さんやayanomimiのサポートをきっかけにデンマークと日本を継続して行き来する方々を見て、架け橋とはまさに岡村さんのことをいうのだなと思いました。

ayanomimiによる当日の様子についてのブログはこちら

※この記事は、WD ONLINEからの転載です。転載元はこちら

Text:酒井菜津子(Garden Eight)