CMSにおける多言語対応ニーズの高まり 事例詳細|つなweB

グローバルでは、Webサイトの「標準語」が英語であることに異論はないだろう。世界人口約80億人のうち、英語を第一言語として使うネイティブ人口は米国、英国など4億人程度だが、バイリンガルで英語も話す人は約18~20億人と言われる。日本でも英語コンテンツを用意する企業は少なくない。インバウンド需要や海外の日本への関心・注目を考えれば、CMSの多言語対応は大きなテーマとなる。

多言語サイトをつくる場合、ロケール(locale)と呼ばれる言語と国・地域を指定すれば、表示言語や時刻表記、通貨単位などの情報も一括設定できる。言語は日本語をja、英語をen、スペイン語をesなどと表記し、同じ英語ロケールでも米国向けはen_US、英国向けはen_UKと枝分かれする。

世界で圧倒的シェアのWordPress(WP)は、20年前の誕生時は英語のみだが、現在は120以上のロケールに対応する。こうした拡張性がシェア拡大にも貢献するのだろう。公式サイトの統計情報では、英語サイトが全体の約半数にあたる48.8%(米国43.8%、英国3.7%など)で、スペイン語(6.7%)、ドイツ語(6.0%)と続く。日本語は5.9%で4番目に多い。中国語が1.1%と少ないが、これは中国におけるサーバ環境の制約条件やWP以外の中国産CMSの利用などによる。

CMSによる多言語サイトの構築・運用方法はさまざまだ。表示の高速化が重要であれば、現地にサーバを立て独立した運用がよい。統一したデザインやレイアウトを維持し、共通コンテンツでマルチサイト機能や多言語プラグインを使うなどの方法もある。重要なのは、単に翻訳の問題ではないということだ。各国のSEOやマーケティング環境に対応し、言語のニュアンスやデザイン、文化的な嗜好も考慮する必要があり、それらを含めての多言語運用が求められる。

 

WordPressの公式サイトより、WordPressサイトの「言語+国(地域)」を指定した分布データを「Locales(ロケール)」という項目で公開。言語によっては国(地域)別の内訳も公開されており、上位の英語とスペイン語の内訳を左側に掲載した(2023年8月4日時点)
出典:Statistics「Locales」- WordPress.org
https://wordpress.org/about/stats/

 

Text:萩原雅之
トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/

 

萩原雅之
※Web Designing 2023年10月号(2023年8月18日発売)掲載記事を転載