パーソナライズとブランドメッセージ 事例詳細|つなweB

今号のテーマはCMS。今回は話題に上がり続けているAIとの結びつきについて掘り下げてみようかなと思います。

なにかと話題のAIですが、画像・音声・動画だけでなく、既にWebサイトのコンテンツの自動制作でも使われているようで、その勢いに驚かされます。私も最近はワイヤーフレームを作成する際、ダミーテキストの生成にChatGPTを使用しています。質問の方向性さえ間違えなければかなりスムーズにテキストを生成することができ、とても重宝しています。

さて、Webサイトを制作する時、お客さまにターゲットの確認をしたり、逆にヒアリングした内容を元にこちらからターゲットとなりうる層を選定することと思います。その際にターゲットの取りこぼしを恐れるあまり、幅広い年齢層や生活習慣の異なる方をまるっとターゲットにしたいとのご要望と対峙することがあります。きっと誰しも一度は経験があるのではないでしょうか。つい先日完了したプロジェクトでも、ターゲット設定で何度もお客さまと打ち合わせを重ねました(お金を払っていただくので、取りこぼしたくないという気持ちはとても分かります。だからこそ心苦しい部分もあります)。

まさしくこの「ターゲットの絞り込みによる取りこぼし」が、AIとCMSを掛け合わせたコンテンツの自動生成で緩和できるようになるのでは、と考えています。より短い時間で多様化したコンテンツをつくれるようになり、その結果、コアなターゲットから外れてしまうユーザーを減らせるはずです。たとえば、ECサイトでは「あなたへのおすすめ」として、一度カートに入れた商品に近いものをレコメンドしてくれるパーソナライズ機能が実装されているケースも多くなりました。Webサイトも、そのうち多様化したコンテンツによってパーソナライズ化がもっと進んでいくような気がしています。トップページすら、パーソナライズされるのが当たり前…といった未来があるかもしれません。

パーソナライズは受け手にとって“好みの情報”や“欲しいと思っていた情報”がすぐに手に入れられるメリットがあります。しかし一方で、企業やブランドにとっては、そもそも「コアメッセージがブレてはいけない」、言い換えれば「パーソナライズする先にも共通する(コンセプトなどの)メッセージが確立している」必要があります。

そしてこの部分こそ、人間が考えるべきこととして残り続けてほしいなと思っています。というのも、たとえコンテンツがパーソナライズ化されても、人間の感情やストーリーが重なることによって、すべての受け手に共通した企業やブランドのメッセージを伝えられると信じているからです。

自動生成によりターゲットが広がったとしても、このメッセージがブレていては闇雲にターゲットを広げるだけで、結果としてコンバージョンの低下にも繋がりかねません。ということで、あくまで現段階の予想ですが、AIを使った自動化が進んでも最後は人間が精査し判断するという役割は変わらなさそうです。

コンテンツといえば、個人的な趣味でWebメディアをつくりたいとずっと頭に描いており、数年前から眠らせているドメインとサーバがあります。AIによってコンテンツ生成の自動化ができるなら、この機会にいよいよ試してみようかなと考えさせられました。思い立ったが吉日ですね。

 

住まいのある東京と、毎年訪れるほど好きな京都の両方のスポットを紹介するWebメディアをつくりたいなと思いながら、写真だけが溜まっていく日々です。AIをうまく使って、今年こそスタートさせたいと思います!

 

ナビゲーター:小島香澄
株式会社KOS デザイナー。ハウスメーカーに新卒入社、資料のデザインが褒められたのをきっかけに、デザイナーとしてWeb制作会社に転職。日々の学習記録をSNSで発信していると、“モテクリエイター”として活動するゆうこす(菅本裕子)の目に留まり、2019年より現職。ゆうこすの手がけるサービスやプロダクトのデザイン全般を担当。 Twitter:@_mi_su_ka_

 

小島香澄
Web Designing 2023年10月号(2023年8月18日発売)掲載記事を転載