ノーコードでワークフローをデザインする 事例詳細|つなweB

私が仕事で活用しているノーコードツールはなにかと考えたときに、真っ先に頭に思い浮かぶのは「Zapier(ザピア)」です。

ZapierはさまざまなWebサービスを組み合わせて連携するサービスで、たとえばGoogleスプレッドシートに行が追加されたらSlackに通知を飛ばしたり、WordPressが更新されたらそのデータを取得してTwitterでツイートするといったようなことができます。

私がこの種のものに最初に出会ったのは「IFTTT(イフト)」というサービスで、Webアプリケーション統合サービスとしてはZapierの先輩にあたるものです。IFTTTは「IF This Then That(もしコレしたらアレ)」の頭文字を取っており、UIもIF 「サービス①」Then「サービス②」とだけ書かれているだけなので、初めて見た時でも瞬時にその明快なコンセプトを理解し、「そんなことができるのか!」と感銘を受けたのを覚えています。

今思えば、私にとってのノーコード元年はIFTTTに出会った2011年だったかもしれません。コードも書かずに異なるサービスを組み合わせることで、自分の望むアウトプットを生み出せるなんて、なんて夢があるんだと思いましたし、IFTTTとの出会いはWebアプリケーションのあり方やワークフローの考え方に大きな影響を与えてくれました。

IFTTTは当初からIoT的な文脈が強いサービスでしたので、使っているうちによりWebサービス同士の連携の選択肢が豊富なZapierへとシフトしていきました。

自分がZapierで最もよく使うのはSlack連携です。メールで届くお問い合わせをSlackの特定チャンネルに飛ばしてチームメンバーと共有したり、通知をSlackに飛ばした後にNotionに格納してそのままステータスの進捗を管理しています。

Zapierの優れたところは連携したサービスの情報を細かく取得できることで、それらの情報を整えて次のサービスにどう渡すかを考えるのがパズルのようで楽しくもあります。

最近ではさまざまなサービスで多様な情報のやり取りが発生するので、私はなるべくプロジェクトごとにSlackやNotionに集約して確認するようにしています。Zapierはその整理をしてくれているいわば“秘書”のような存在で、とても重宝しています。

また、最近ではChatGPTもZapierで連携を組みました。ChatGPTは現在ユーザーひとりにつき(電話番号にひとつにつき)アカウントがひとつで、まだチームで使えるような仕組みではありません。プロンプトに対するナレッジも浅い今、全員が見える場所で使うこともできないですし、そもそもメンバーにChatGPTを使ってもらうとなった時に、仕事用のアカウントが付与できずに困っていました。そこでChatGPTのAPI版を使って、SlackのチャンネルからChatGPTに直接質問を投げて反応が返ってくるような連携をZapierで組み、メンバーも使えるようにしました。

現在私のメディアの編集部でもライティングや翻訳の補助として徐々にChatGPTを活用するようになってきているので、これはとても手軽(且つ安価)な使い方として重宝しています。

こういった具合に、ノーコードというのは実際の制作のみならず、ワークフローをデザインするという意味でもとても興味深く思っています。そして何より、こういったギークな仕組みを入れるのが好きな方は、仕事がちょっぴり楽しくなるのでおすすめです。

 

Zapierを利用して、SlackでChatGPTを使えるように連携してみたものの、実はみんなの見ている前ではいろいろ試しにくいということで、最近ではメンバー個別にChatGPT用のチャンネルを用意したりしています

 

三瓶亮
株式会社フライング・ペンギンズにて新規事業開発とブランド/コンテンツ戦略を担当。また、北欧のデザインカンファレンス「Design Matters Tokyo」も主宰。前職の株式会社メンバーズでは「UX MILK」を立ち上げ、国内最大のUXデザインコミュニティへと育てる。ゲームとパンクロックが好き。 個人サイト: https://brainmosh.com Twitter @3mp

 

三瓶亮
Web Designing 2023年8月号(2023年6月17日発売)掲載記事を転載