“共生”して活かす時代に 事例詳細|つなweB

今号のテーマは「ノーコード(ローコード)」ということで、昨年も少し触れたノーコードWeb制作ツールについて、現場で感じている肌感覚をお話したいと思います。

「STUDIO」はとてもスピード感のある開発ができて便利、という話を昨年のコラムでも紹介したのですが、この一年の間にWebサイトとしてのクオリティと、表現できる幅がグッと広がった印象があります。ブックマークしているWebデザインのギャラリーサイトを毎日必ず開くのですが、STUDIOで実装されたWebサイトの掲載が増えているのを見かけます。同時に、ソースコードを見るまで気付かないほど、他のWebサイトとの境目がなくなってきていると感じます。

つい先日、友人が立ち上げた会社のWebサイトを制作した際にSTUDIOを久しぶりに触ってみたのですが、以前よりも使い勝手がよくなっている…! とワクワクしました。リリース当初から直感的で使いやすいツールだなあ、と思っていましたが、最近のツールのアップデートは本当に早いので、置いていかれないようにしないと…とも思います。ちなみにSTUDIOはサポートセンターがかなり手厚く対応してくださるのもサービスとしての魅力の一つです。

ノーコードツールで制作したクオリティの高いWebサイトが増えているのは日本に限った話ではなく、海外でも同様の動きが見られます。ご存じの方も多いかと思いますが、Webデザインアワード「Awwwards」でも、米国発のノーコードツール「Webflow」で制作したサイトが掲載されているのをちらほら見かけます。ノーコードツールで実装されたWebサイトのクオリティが上がってきているのは、こうしたところからも改めて感じますし、逆に言うとノーコードへの可能性も感じさせてくれますよね。私がこの原稿を執筆している時点で確認した限りでは、STUDIOを使用したWebサイトの海外アワードサイトへの掲載はまだないようなのですが、そう遠くない未来に事例が出るのではないかと楽しみにしています。

こうしたツールの進化によって危惧されるのが、「デザイナーやエンジニアに頼まなくても自分たちでつくれる」ことによる需要の減少だと思います。最近はツールだけではなく、AIの進化が凄まじいので、うかうかしていると自分たちの仕事がなくなってしまう…といったネガティブな声をSNSで見かけたりもします。例えば、上述のSTUDIOは有料のテンプレート販売も始まり、今まで以上にノンデザイナーの参入ハードルが下がったのではないでしょうか。

ユーザーがノーコードによる新しいツールやサービスに慣れてくると、デザイナーは「デザインだけ」を提供するのでは生き残れなくなってしまうと感じています。本来、ノーコードツールは業務量やコスト削減のためのツールだからこそ、それによって空いたリソースや予算を別の施策や開発に当てられるメリットがあります。つまり、デザイナーがデザインをする領域はビジュアルだけではなく、デザインの価値を最大化するためのリソース配分までを見据えられるか、ということになるのかなと思います。そのために、ノーコードツールと「共生する=適材適所で上手く活かす」ための判断がより一層求められていくのかもしれません。余談ですが、自分のポートフォリオサイトをSTUDIOでつくろうと思い続けて早数年。今年こそはリリースできるように頑張ります(笑)。

 

先日STUDIOで制作した友人のWebサイト。シンプルなサイトであれば1日程度で構築できてしまうので、もっと活用の場が広げられそうです

 

ナビゲーター:小島香澄
株式会社KOS デザイナー。ハウスメーカーに新卒入社、資料のデザインが褒められたのをきっかけに、デザイナーとしてWeb制作会社に転職。日々の学習記録をSNSで発信していると、“モテクリエイター”として活動するゆうこす(菅本裕子)の目に留まり、2019年より現職。ゆうこすの手がけるサービスやプロダクトのデザイン全般を担当。 Twitter:@_mi_su_ka_

 

小島香澄
Web Designing 2023年8月号(2023年6月17日発売)掲載記事を転載