Webサイト分析でもっとも重要といえる要素「コンバージョン」は、GA4になってどのように扱いが変わったのでしょうか。ここでは長野県を起点に多様な地域・規模の企業を支援するWebコンサルティング・システム開発・Web制作会社のSeekcloudさんに話を聞きました。
1. GA4のコンバージョンはここが変わった
アカウントの移行と有効活用は話が別
すでに他のページで言及しているように、GA4はツールの性格や方向性がガラリと変わりました。しかし、アカウントの移行作業に関して言えば、弊社ではそれほど大きな問題は生じませんでした。私たちは、長野県にあるWebコンサルティング・システム開発・Web制作会社です。県の内外を問わずさまざまな規模のクライアントがいますが、運用保守の契約を結んでいるところでは、すでにほとんど移行が完了している状況です。
コンバージョンの設定に関しても、今のところ特に目立ったトラブルはありません。ECサイトに関しては、従来のUAとGA4とで「eコマースイベント」やパラメータの名称が変更されたため、ページ内のタグを書き換えるといった作業が発生しましたが、それ以外ではそれほど大きな作業は発生しませんでした。あらかじめGoogleタグマネージャーを使ってタグの管理をしていたサイトが多かったことも、スムーズに移行できた要因の一つかもしれません。
しかし、アカウントの移行が完了したことと、GA4を活用できるようになることは話が別です。私たちは早い時期からGA4への移行を進めていましたが、クライアントのWebサイトの解析や各種インターネット広告の効果検証を行なっていく中で、新しい発見が次々と出てきます。ここでは、GA4の「コンバージョン」周りの機能に焦点を当て、これまでのGoogleアナリティクスと何が変わったのか、また、新しく加わった機能を私たちがどのように活用しているのかをご紹介します。
コンバージョン分析でも未曾有の変化が到来
Webサイトを解析する上で、コンバージョンに対する意識は欠かせません。コンバージョンとは、言うまでもなくWebサイトの最終目標であり、Webサイトの改善やWeb広告をはじめとした各種のマーケティング施策といった行動のほとんどは、コンバージョンの成果を高めるために行うものだと言っていいでしょう。
さて、GA4ではありとあらゆるものが変わりましたが、コンバージョンの分析に関わるものに限っても、実にさまざまな変更が行われています。
例えば、GA4では複数のデバイスを横断してユーザーの行動を解析できるようになり、コンバージョンに至ったユーザーの行動をより正確に把握できるようになりました。また、細かなところでは、ユーザーが1回の訪問でコンバージョンとなるアクションを複数回行ったとき、実際の数が正しくカウントされるようになったことも重要なポイントです。これまでは複数回のアクションがあっても1回としかカウントされませんでしたが、GA4になって現実の行動がより正確に反映されるようになったのです。
そもそも、ツールのユーザーインターフェイスも一新しており、コンバージョンの確認の仕方も大きく変わっています。従来のツールに慣れ親しんだ人の中には、コンバージョンをどこで確認するのか戸惑うことがあるかもしれません。
コンバージョン分析に役立つ新機能も満載
機能面でも、コンバージョンの分析を助けるものがいくつも搭載されました。例えば、「自動計測イベント」を使えば、ページのスクロールなどこれまでGoogleアナリティクスだけでは測定できなかったユーザーの行動をコンバージョンとして扱うことができます。また、条件を細かく設定してより深い解析を行うための「探索」機能や、機械学習で将来のコンバージョンを予測できる「予測」機能もあります。さらに、広告がコンバージョンに与えた「間接的な」影響を測定する「アトリビューション分析」といったものもあります。アトリビューション分析は、Webサイトの抱える課題の発見だけでなく、マーケティング施策の検討や広告費用の配分を考える上でも役に立つでしょう。
こうした機能を理解し活用していけば、コンバージョンを高めるためのヒントをより多く発見できるでしょう。本記事では、こうしたコンバージョンに関わる新機能のいくつかについて、少し踏み込んだ解説を行っていきます。
コンバージョンに関連する主な変更内容
Point❶
GA4ではコンバージョンの見方や計測方法も変更
Point❷
コンバージョンに関わる新機能も多数追加された。活用することでコンバージョンの更なる向上が望めるはず
2. コンバージョンを深掘りして改善に役立てるには?
GA4でコンバージョンを確認する方法
コンバージョンをチェックするためには、事前にコンバージョンの設定を行なっておく必要があります。P062などでも触れていますが、GA4では、「推奨イベント」としてあらかじめGA4上で用意されているイベントや、ユーザーが特に設定しなくても自動的に収集される「自動収集イベント」などがあり、それらをコンバージョンに設定できます。
例えば自動収集イベントでは、別ドメインに移動するクリックを計測する「click」イベントが便利です。ホームページとECサイトを別ドメインで運用しているような場合、ECサイトへの移動を簡単に計測できるようになります。また、ユーザーがページを最後までスクロールしたことを計測する(正確には90%以上)「scroll」イベントもコンバージョンの1つとして活用できるかもしれません。ただし、自動計測イベントをコンバージョンとして扱うには、あらかじめ「設定」の「コンバージョン」で「コンバージョンとしてマーク」をオンにしておく必要があります(オンにする前に発生したイベントはコンバージョンとしてカウントされません)。
GA4では、それ以外のイベントも「カスタムイベント」として設定可能です。特定ページの表示をコンバージョンとして設定するのも簡単にできるようになりました。もちろん、従来から行っていたように、Googleタグマネージャーを使ったイベントの設定も可能です。
設定したコンバージョンの達成状況を確認する方法はいくつかあります。まず、コンバージョン数を確認したいのであれば、「レポート」の「ライフサイクル」→「エンゲージメント」を見てみましょう。コンバージョンに指定したイベントの発生数を確認できます❶。
表の中にあるイベント名をクリックすると、そのイベントの詳細を探っていけます❷。また、表の中にある「+」ボタンを押すことで、セカンダリディメンションを追加することができます。例えば、「デバイス カテゴリ」を追加して、どのデバイスからコンバージョンがあったのかを確認できるというわけです❸。
GA4のコンバージョン確認方法
探索を活用して仮説を掘り下げ
GA4で新たに加わった「探索(データ探索)」を使えば、より深い分析が可能になります。
探索とは、ユーザーが自由に条件を設定できるレポート機能で、UAで存在していた「カスタムレポート」に近いものと考えるとイメージしやすいでしょう。従来のカスタムレポートの場合、設定を完了して画面を切り替えないと結果が見えず、狙いどおりに設定するのに時間がかかっていました。一方、探索なら、調べたい項目(セグメントやディメンション、指標など)をドラッグすれば、結果が即座に反映されるのでわかりやすいです。
一度つくった形式は保存されるので、定期的なチェックに活用すれば知りたいことを効率的に確認できます。
探索には、7種類のまったく異なる形式が用意されています。ここでは特に使い勝手の良い「自由形式」について説明しましょう。
自由形式では、表や円グラフ、棒グラフ、折れ線グラフといったものをつくることができます。表を使ったケースでは、「行」と「列」でクロス集計できるため、調べたいことを複合的な視点で捉えることができます。例えば、「セグメント」として資料請求を行なったユーザーだけに集計対象を絞り込み、「行」に性別、「列」に年齢を入れて、コンバージョンに至ったユーザーの傾向を見るといった使い方です❹❺。
探索には、他にも「目標達成プロセス」や「経路データ探索」など、便利な形式が用意されています。うまく使いこなしていくことで、Webサイトや広告設定の改善に役立てられるでしょう。
Point❸
コンバージョンの概要は「レポート」の「ライフサイクル」→「エンゲージメント」から確認することが可能
Point❹
より深く探りたいときは探索機能を活用。まずは自由形式を使ってみましょう
より深い分析を可能にする「探索」(自由形式)
3. GA4の新機能を広告のパフォーマンス改善に役立てる
アトリビューションを広告の改善に役立てる
インターネット広告を活用しているなら、GA4から搭載された「アトリビューション」の「コンバージョン経路」機能も活用してみましょう。この機能は、ユーザーがコンバージョンに至った経路を分析し、さまざまな広告がどれだけコンバージョンに貢献しているのかを割り出すことができます。
例えば、ユーザーが商品購入を行うまでに、Webサイトを複数回訪れたとします。これまでだと、購入に至った最終的な流入経路だけがコンバージョンへの貢献と判断されてしまいました。しかし実際には、広告経由でWebサイトを訪問していても、その時はコンバージョンに到達せず、数日後に再訪問してコンバージョンを達成したというパターンがありえます。
アトリビューション機能では、そうした間接的な貢献を浮き彫りにします。これまでもベータ版として存在はしていた機能ですが、GA4ではついに標準で搭載されました。
コンバージョン経路の画面では、「早期タッチポイント」「中間タッチポイント」「後期タッチポイント」の3段階に分かれて流入元が表示されます❻。それぞれ、コンバージョンまでの経路の初めの25%の経路、50%までの経路、最後の25%までの経路を示しています。
例えば、早期タッチポイントでオーガニック検索と有料検索の貢献度が同じくらいだった場合、有料検索にかける費用をもう少し上げても伸び代があるのではないか…という仮説を立てることができます。あるいはSNS広告やディスプレイ広告など複数の広告を行っている場合、貢献度を元にどちらに予算を配分した方が効果的かを判断するのにも役立つでしょう。
ほかにも、後期タッチポイントで有料検索の貢献度が低かった場合、最後の一押しにつながるような内容の広告を置いてみるといった施策を立てることもできます。「貢献度」という軸で分析を行うことにより、より効果的な広告施策を考え出せるというわけです。
広告の間接的な貢献度がわかる
機械学習を使った予測機能でコンバージョンを高める
GA4では、機械学習を用いた「予測機能」が利用できるようになりました。
予測機能は大きく分けて「予測指標」と「予測オーディエンス」に分けられます。予測指標は、独自のアルゴリズムに基づいてユーザーの行動を予測する機能です。指標の種類は3種類。今後7日以内に特定のコンバージョンが期待できる「購入の可能性」、7日以内に操作を行わなくなる(利用しなくなる)「離脱の可能性」、今後28日間でのユーザーの購入額を予測する「予測収益」です。
これらの予測指標を利用するには、前述の「探索」機能を使います。探索のテンプレートの中から「ユーザのライフタイム」というものを選びましょう❼。指標欄の「+」ボタンを押し、「購入の可能性」「離脱の可能性」「予測収益」といった指標を追加して利用します❻。
この機能を使えば、流入元ごとに購入の可能性を分析していき、購入の高い流入元に多くの広告費を割り当てるといった活用ができるでしょう。
また、「予測オーディエンス」は、Google広告と連携して広告配信に活用できる機能です。「離脱の可能性」のあるユーザ層を「オーディエンス」として扱い、離脱を踏みとどまらせるような広告を配信できるというわけです。
ただし、予測機能を活用するためには、一定以上のユーザー数が必要になります。Webサイトによっては予測機能を活用する前に訪問者数を増やす施策が必要になることもあるでしょう。
本記事ではコンバージョンに関する数々の機能を紹介しましたが、これらを積極的に活用することで、きっとビジネスの成果を高めていけるでしょう。
Point❺
アトリビューションを活用することで、コンバージョンへの間接的な貢献を把握できます
Point❻
予測機能を使えば、ユーザの将来の行動がわかります。それに応じて広告施策を打つことも可能
機械学習で行動を予測