UA→GA4移行の背景を解析のスペシャリストが探る! 事例詳細|つなweB

いよいよ待ったなし! 皆さんもよくご存じの通り、本年6月末をもって、これまでのGoogleアナリティクスのユニバーサル・アナリティクス(UA)がデータの収集を終了します(データの閲覧は、その後6ヶ月間可能です)。その後継であるGoogleアナリティクス4(GA4)に対しては、デビューしてすでに2年以上が経過しているにもかかわらず、いまだに「難しい」「わからない」「なぜここまで変わる?」 といった声が絶えません。GA4は本当に難しく、厄介なものなのでしょうか。今回はデータ解析のスペシャリストである、(株)プリンシプルの木田和廣さんにその点をズバリ伺ってみました。すべてのWeb制作者、必読の内容です!

 

教えてくれたのは…

木田 和廣さん
株式会社プリンシプル 取締役副社長 /2009年からGoogleアナリティクスに基づくWebコンサルティングに従事。アナリティクスアソシエーション(a2i)や個別企業でのセミナー登壇、トレーニング講師実績も多数。Google アナリティクス認定資格、統計検定2級、G検定保有。

GA4を「難しい」と感じるのはその背景を理解できていないから!?

この夏ついにやってくる「GA4時代」。いまだうまく使いこなせず、困っている方も多いと思いますが、データ解析のスペシャリストである木田和廣さんは「GA4は面白い」「これほど役に立つツールはない」と話します。その理由とは? じっくりとお話を伺っていきましょう。

─UAの利用期限が近づくにつれて、「GA4は難しい! なんで移行しなきゃいけないんだ!」といった、恨み節のような声があちこちで上がっています。そこで今回は木田さんに、「GA4を理解するためにはどういったポイントを押さえればいいのか」を伺おうと思っています。

木田 確かにガラッと変わるから、「なんでこうなるの?」と言いたくなる気持ちはわかります。ただね、皆さん、「何が変わったのか」という点には注目しているけれど、「なぜ変わったのか」を見落としているように思うんですよ。

─GA4が採用された背景を見逃している、ということですか?

木田 そうそう。UAからGA4へとこれだけ違うものになったわけです。そこには相応の理由があるんですよ。それを理解しないまま使おうとするから「なんで!?」となっちゃう。

─確かに今、世の中にGA4の解説記事が出まくっていますが、UAからの移行が話題の中心で、その背景に触れたものは少ないですね。

木田 面白いことに、その理由を理解すると、それまで抱いていた疑問がスッと消えて、皆さんGA4が好きになるんですよ。Web制作者の皆さんにとってもGA4は手放せないツールになると思いますよ。

─ムムム…WD読者の皆さんにとって、聞き逃せない内容になりそうですね! それでは木田さん、よろしくお願いします!

 

【1章/背景】セッション軸からユーザー軸へ
UAからGA4へ「世界観の転換」とは

なぜGA4の中身がガラリと変わったのか。その背景には、GAを提供するGoogleの「世界の見方」、すなわち世界観の転換があると木田さんは言います。ではいったい何がどう変わった?

なぜセッションが重視されてきた?
1.ニーズを中心に「三方よし」だったUA時代

GA4についての話を進める前に、まず、これまで使われてきたユニバーサルアナリティクス(UA)がどんなものだったのか、なぜGA4に置き換わらざるをえなくなったのか、その点をお話しておこうと思います。

皆さんご存じの通り、UAを見る際の基準は「セッション」でした。例えば、「オーガニックで発生したセッション」と「検索連動型広告で発生したセッション」ではどちらがコンバージョンレートが高いか、そうした点に注目して数値を見てきたと思います。

そもそも、なぜ「セッション」が重視されてきたのでしょう。それは検索連動型広告であるGoogle広告(旧Googleアドワーズ)を計測する際にマッチするものだったからと考えることができるでしょう。検索連動型広告とGoogleアナリティクスは深く結びついた形で成長してきたというわけです。

ただし、その成功がもたらす利益を享受してきたのはGoogleだけではありません。広告主もまた、検索連動型広告から大きな恩恵を得てきました。例えば誰かが温泉に行こうと思ったら、「長野 温泉 源泉かけ流し 宿泊費2万円以内」といった形で検索をしますが、これはその人の「ニーズ」そのものです。ニーズに広告を当てれば高い確率でコンバージョンするのは当然ですよね。

ではユーザーにとってはどうでしょう。ユーザーもまた、ニーズにマッチした広告が出るならそれは便利でありがたい。つまり、これまで長く続いてきたUAの時代というのは、Googleも広告主も、さらにはユーザーも得をする「三方よし」の世界だったと言えます。これこそGoogleがつくりあげた調和。誰も文句がない世界だったわけです。

NEEDS_UA時代に重視された「顧客のニーズ」

検索連動型広告は、ユーザーが検索窓に直接打ち込んだ「ニーズ」に対して広告を掲出します。UAはそうした時代にマッチした計測の仕組みでした

 

なぜセッション時代は終わったのか
2.崩れた調和。Googleが示した解決策は?

しかし、長く続いてきた調和が、この数年で崩れ始めました。ユーザーの間で「最近良い広告が表示されないな」と感じる人が増え、広告主の中にも「人気の検索ワードにお金をかけてもコンバージョン率が上がらない」と不満を抱く人が増えました(実際にそうだった)。そうなると検索連動型広告を提供するGoogleも収益を減らしてしまいます。

Googleもアルゴリズムを調整するなどして対応してきたのですが、それも追いつかなくなってきた。これは「検索連動型広告が飽和してきていること」を示していると私は考えています。

そこでGoogleが目をつけたのが、ブログなどのユーザージェネレイテッドメディアに表示される「ディスプレイ広告」や、YouTubeなどに表示される「動画広告」です。これらの広告枠にはまだまだ余裕がある状況ですから、適切な広告を表示する余地がある。Googleとしては「こっちに広告を出してほしい」という本音があるのでしょう。

ただし、Web制作に携わる皆さんならおわかりかと思いますが、ディスプレイ広告や動画広告を見てすぐにコンバージョンするユーザーは少数です。これらの広告は潜在的なユーザーに興味を持ってもらうための「認知」を目的とした広告で、検索連動型広告のようにユーザーのニーズに直接的に応えるものではないからです。

では、どうすれば広告を出してもらえるのか。そこでGoogleが実施したのが新しい世界観の構築です。広告主がディスプレイ広告や動画広告を重視する世界へと変えていこうという試みです。それを強く推進するのがGA4、というわけなのです。

COLLAPSE_崩れ始めた「三方よし」の構図

検索連動型広告によってそれぞれに利益を得ていた三者ですが、広告の飽和によって次第に調和が崩れ、不満を持つようになりました。こうした事情がGA4が登場を促したと考えれらます

POINT
●UAの時代になぜ「セッション」が重視されたのか
●セッション時代に限界が訪れたのはなぜ?
●GA4で「ユーザー軸」への転換が行われた理由は?

 

GA4はこれまでのUAとは違って、セッション単体におけるコンバージョンではなく、ディスプレイ広告や動画広告が担う認知部分を重視するようになっていますが、これこそがGoogleがGA4でつくりあげようとしている、新しい世界観だと言えるでしょう。ではその「認知」を重視するために、GA4が何に注目しているのかといえば、それは「ユーザーの行動」です。“GA4が「ユーザー軸」に変わった”と言われるのはそこに理由があります。

こうした変化に戸惑う人が多いというのもよくわかります。GA4は使い慣れたUAからガラッと変わってしまいますからね。しかも、UAが基本としていた「セッション」は計測が簡単でした。スタート時間がビシッと決まり、ランディングページも参照元メディアもバシっと決まる。それぞれが一対一でひもづくわけですから、理解しやすいのも当然です。Aのセッションはオーガニックから人が来たからこうしよう、Bのセッションでは直帰する人が多かったからこうしようといった具合に対策も立てやすかったですしね。それと比べてみると、GA4には理解に時間がかかる項目も少なくありません。

じゃあもう「人任せでいいや」となっていいのかというとそんなことはありません。GA4がもたらす新しい時代の到来によって、広告主となる企業は「良いお客さん」と出会うチャンスを得ることになります。さらにマーケターやWeb制作に携わる皆さんは強力な武器を手にすることになる。ぜひ面倒がらずにGA4の世界にどっぷり浸かってみてほしいと私は思います。次の項ではなぜそんなことが言えるのか、という点を説明していきたいと思います。

POTENTIAL_ディスプレイ広告や動画広告は潜在顧客に効果的

 

まとめ
●UAの時代はユーザーが「ニーズ」を口にした
●検索連動型広告が飽和し調和が崩れた
●認知を担うディスプレイ広告や動画広告に焦点

 

 

お財布を持っているのはセッションじゃない。人なんだ

GA4の核心とも言える「ユーザー軸」。つまり、人ともっと真正面から向き合うということ。数字の向こう側にいる人を見ていくことなのです。

─UAからGA4へと変化した背景に、売り手(Google)よし、買い手(広告主)よし、世間(ユーザー)よしという「三方よし」の崩壊があったというお話にはなるほど、と頷かされました。

木田 その点から見ていくと「セッション軸」から「ユーザー軸」へと変わる必然性が見えてくるでしょう? 確かに、Googleの掌の上で踊らされているという見方もできるのかもしれないけれど、これまでのセッションを軸にしたマーケティング手法に限界を感じる人が多かったとも思うんですよ。

─確かにそうなんですが、もうずっとこの形でやってきたので…。

木田 それを言うなら、ネットが出てくる前は当たり前のようにユーザー、すなわち「人」を相手にマーケティングをしてきたんですよ。

例えば高齢者の方々に向けて旅行商品を販売している会社なら、彼らにとってなじみがあり、信頼感のある「新聞」に広告を出そう、といったふうに。それが検索連動型広告が出てきた瞬間に、即効性の高い「ニーズ」に飛びついたというだけで。

─そう言われてみると、UAでは「人を相手にしている」という感覚が薄かったかもしれません。

木田 どこかゲームをしているような感じがあったよね。こっちのパラメータを操作すると、こちらの数値が上がって…みたいな。

GA4はそうじゃないんですよ。「こうしたら人はどうするだろう」とか「こんな手を打ったらどう行動するだろう」などと考えながら数字を見ていく必要があるんです。「GA4の数字は単なる数字じゃない」なんていう言い方があるけれど、私なりに言い方を変えるならば財布を持っているのは「セッション」じゃない、「人」なんだって感じかな。

─昔のマーケティングに戻るのでしょうか?

木田 本質的な部分の話であれば、そういう見方ができるかもしれない。ただし、以前と決定的に違うのは計測ができること。効果があったのかなかったのかがはっきり見えてくるから大変だけど、面白くなると思うなあ。まあ、私の場合、GA4が好きだというバイアスがかかっているからそう感じるのかもしれないけど(笑)。

─いえいえ、こちらもかなり興味が湧いてきました。木田さんに乗せられているからかもしれませんが(笑)。さて、ここからはGA4を理解するための核となる「ユーザー軸」について解説していただきます。よろしくお願いします!

 

【2章/核心】GA4で変わるマーケティングの世界
数字の向こうの「良いお客さん」を探せ

ユーザー軸とはユーザー(お客さん)一人ひとりの行動を見ていくことだと木田さんは言います。では実際に、どのようにしてそれを見ていくのでしょうか。

ユーザー軸とは…?_あなたはしっかり答えられる?
「良いお客さん」とはどんなユーザーのことを言うのか

前項の最後で、GA4を使うことによって「良いお客さん」と出会えるようになる、というお話をしました。では、ここでいう「良いお客さん」とはどんな人のことを言うのでしょう。端的に言うと、それは「LTVの高いユーザー(お客さん)」のことです。

LTVとは、ライフタイムバリュー(Life Time Value)のことで、1人の顧客がある企業と取引を始めてから、その企業と取引しなくなるまでの期間(顧客ライフサイクル)に得られる売上の総額を示す指標のことをいいます。つまりLTVが高いユーザーとは「上得意」のこと。どんな企業にとってももっとも大切にすべきお客さんのことです。

このLTVを向上させるためにはさまざまな方法があると言われていて、例えば顧客ロイヤルティの向上や、平均購買単価の向上、さらには購買頻度や獲得顧客数の向上などが挙げられるのですが、何よりも一番に大切なのは、LTVの上がりそうなお客さんを見つけ出してそこに投資をする(広告を打つ)こと。認知の段階でそれができれば一番効率的です。

「それができれば苦労しないよ」と思った方のためにも、もう少しこの話を噛み砕いてみましょう。あなたの会社のWebサイトを訪れるお客さんには、極端に言えば2つのタイプしかいません。それは「自社にフィットするお客さん」と、それとは逆の「自社にフィットしないお客さん」です。では、将来的にLTVが上がってくると考えられるのはどちらかといえば、これは言うまでもなく前者ですよね。

実はGA4には、この「良いお客さん」、すなわち「自社にフィットするお客さん」を見つけ出す機能が搭載されているんです。

FIT_「自社にフィットするユーザー」とは

コンバージョンしたユーザーの一群の行動を遡ると、コンバージョンしたユーザーが認知の段階でどんな行動をしていたかを読み取ることができます

 

ユーザー軸とは…?_ユーザー軸のGA4だからこそできること
自社にフィットするユーザーはこうして見つけ出す

では、 GA4ではどのようにして「自社にフィットするお客さん」を見つけ出すのでしょう。実はGA4にはユーザー“一人ひとり”に注目し、ユーザーがどんな行動をしたのかを追いかける機能が搭載されています。

例えば、下図で示したように、あるユーザーが「どこからやってきて、どのくらいの期間をかけて、何度目の訪問でコンバージョンしたのか(しなかったのか)」がわかるのです。図にはありませんが、この人が「何回コンバージョンしたか」もわかります。

これはセッション単位でしか見ることのできないUAの数値とは大きく意味が異なります。UAでは「安売りに誘われてなんとなく訪問した人」の購入と「今日で10回目」のお得意さまの購入とを同じ「1コンバージョン」として扱い、「特に自分が欲しいものではない」と去っていく人と、「このサイトで紹介している商品はまさに自分が探していたものだから、改めてじっくり検討しよう」といったんサイトを離れる人とを同じ「直帰」として扱います。

それと比べてGA4の場合は、ユーザーの行動を長期的に見ていくことで、ある人がどんな足跡をたどってコンバージョンしたのか(しないのか)を見ていくことができます。これはGA4が一人ひとりの行動を追いかけ続けるからこそできること。

過去を振り返ってみれば、「ニーズ」に注目する検索連動型広告が登場するまでマーケティングは「人」に対して行うのが当たり前でした。このGA4は再び人に注目するマーケティングの手法を取り入れ、さらに「行動に注目する」ことで計測可能なものへと進化させた、実に画期的な仕組みなのです。

FOOTPRINT_セッション軸とユーザー軸

データをぶつ切りで見るしかなかったUA・セッション軸の時代と異なり、GA4はユーザー軸なので、一人ひとりの「行動」に注目してデータを測定します

 

INVESTMENT_フィットするユーザーに投資する

自社にフィットすると考えられるユーザーに対して広告を打つことで費用対効果の高いマーケティングをおこなうことができます

POINT
●「良いお客さん」とはどんな人のことを言うのか
●ディスプレイ広告や動画広告が大事になる理由は?
●効率の良いマーケティング戦略を立てよ

 

ユーザーとの接し方…?_GA4時代のユーザーとの接し方
自社にフィットするユーザーを見つけ集中して投資する戦略策定を

では具体的にどのようにすれば「自社にフィットしたお客さん」を見つけることができるのでしょう。

例えばYoutube動画の広告を見て我が社のWebサイトにやってきたAさん。Aさんは最初のセッションではコンバージョンしませんでしたが、3カ月経ったところで改めてその行動を確認してみると「複数回訪問後にサイト内のあるコンテンツを見てコンバージョンしていました。するとここで「Aさんはじっくりと検討した上で我が社を選んでくれた、フィットするお客さんかもしれない」との仮説を立てることができます。これはユーザー軸のGA4だからこそできることです。

さらに分析を進めていくと、「BというYouTube広告を経由して初回訪問した人はコンバージョンする確率が高い」とか「Cというコンテンツを見た人はLTVが高い」といった特徴を見つけられらるでしょう。GA4からこうした情報を取り出し、仮説検証を繰り返せば、「どのメディアから来たのか」や「どんなタイミングで来たのか」、「どんなコンテンツを閲覧したのか」といった情報をキーに、どんな行動をしたユーザー群が自社にフィットしているかをつきとめることができるでしょう。つまり、認知の段階で、あらかじめフィットする可能性の高いお客さんの一群を選択的に獲得できていることになる。これってすごいことですよ。

こうして明らかになった情報をもとに、自社にフィットする可能性の高い一群に向けて広告を投下すれば、非常に効果的なマーケティングを行うことができます。しかもここで活用できるのは、検索連動型広告と比べると広告単価の低いディスプレイ広告や動画広告。費用対効果の高いマーケティングが期待できるというわけです。

 

ユーザーとの接し方…?_これからのWebマーケ新常識
GA4がユーザーを追跡する仕組みを信じて活用する

ところで、GA4ではデバイスを跨いで、ユーザー“一人ひとり”の行動をトラッキングしているといいますが、実際にはどのように同一人物であることを見分けているのでしょう。Googleはそのために「ユーザーID」「Googleシグナル」「デバイスID」、さらには「モデリング」といった機能を用意しています。

ユーザーIDは、自社のサイトにログインしているユーザーを、デバイスを跨いでも同一人物として扱う仕組みであり、GoogleシグナルはGoogleアカウントにログインした状態でWebサイトにアクセスしているユーザーをGoogleアカウントの情報と紐付けることで見分ける仕組みのことを言います。また、デバイスIDとはいわゆるクッキーのことであり、モデリングはユーザーの行動などから機械学習データを活用することで同一人物かどうかを推測することです。

これらの仕組みはどれほど正確なの? そう考える人もいるかもしれません。ですがそれはGoogle側にしかわからない話。正確さを問うよりも、現状はGA4が推奨する形で設定を行い、その結果を見ていくことが大切かと思います。時を経るにつれて精度が高まっていくのは間違いないところですので。

ただし、自社サイトにユーザーIDを追加しようと考えている場合には、あくまでもユーザーにログインしてもらうだけの価値をもった情報を提供できるかをよく検討してから実施することをお勧めします。GA4の測定精度を高めたいから、何はともあれログインの仕組みを追加する、というのではユーザーの理解が得られないでしょう。「本末転倒」ということにならないよう注意してください。

 

まとめ
●良いお客さんとは自社にフィットするユーザーのこと
●良いお客さんには認知段階の広告施策が効く
●自社にフィットするユーザーに集中して投資する

 

【3章/進化】Web制作の未来はこっちだ!?
GA4がWeb制作の価値を高める

3章では、GA4とWeb制作の関連について考えてみます。木田さんはGA4がWeb制作やWeb制作者の価値を大きく高めると話しますが、それはどういうことでしょうか。

コンテンツ制作_「良いコンテンツ」を定義せよ
コンテンツの価値を正しく評価してくれるGA4

ここまでGA4は自社にフィットしたお客さんを見つけるためのマーケティングツールだというお話をしてきましたが、Web制作に携わる皆さんにとってはコンテンツを評価するためのツールとしても非常に役立つでしょう。

例えば、クライアントから既存のコンテンツの見直しを要望する声があったとします。担当者からは「良いコンテンツを増やしたいんだ」といった切実な声が上がっている。こうした要望に応えるのがどんなに難しいかはWeb制作者の皆さんであればよくご存じのことでしょう。良いコンテンツをどうつくるかという問題の前に、そもそも「良いコンテンツとはどんなものか?」という根本的な疑問も出てきます。

しかし、GA4を使えば、その点をはっきりさせることができます。良いコンテンツとは「自社にフィットしたユーザーに読まれる」ものであり、「コンバージョンやLTVの向上につながる」ものである、と明確な基準を定めることができるからです。

そうした分析を行う際に役立つGA4の指標の一つに、「エンゲージのあったセッション(1ユーザーあたり)」があります。GA4におけるエンゲージとは「ページ滞在10秒以上」「2ページビュー以上」「コンバージョンがあったセッション」のことを指します。それらの数を1ユーザー当たりで割った数値が「エンゲージのあったセッション(1ユーザーあたり)」となります。

つまり、サイトをしっかりと見てくれる人が多ければ多いほど、この指標が上がっていくことになります。またこれと同じように活用できるのが「90パーセントスクロール率」も役立ちます。これは、どのページが90%スクロール、すなわち、ページ末まで読まれているかを測る指標です。

これらの数値をコンバージョンやLTVと関連付けて見ていくことで、そのコンテンツが自社にとって「良いもの」かどうかがはっきりとわかるというわけです。

ENGAGE_GA4における「エンゲージ」とは

 

まずは自社のコンテンツの中から、閲覧数が多いもの、長い期間読み継がれているもの、数分で読める端的な内容のもの、数ページに及ぶ充実した内容のものなどをいくつかピックアップして、以下のような点を調査してみます。

? 「そのコンテンツを読んだユーザー」と「読んでいないユーザー」の再訪率を比較する
? 「そのコンテンツを読んだユーザー」と「読んでいないユーザー」のコンバージョン率を比較する
? 「そのコンテンツを読んだユーザー」と「読んでいないユーザー」のLTVの値を比較する

例えば?の「ユーザーの再訪率」は、そのコンテンツが「自社にフィットするユーザー」を惹きつけるものかどうかを判別します。?や?についてはその中身の通り、コンテンツにコンバージョンを促す力があるかどうかを判別します。なお、コンテンツによっては、短期間で結果が出るものものあれば、数カ月経ってはじめて成果と結びつくものもあります。公開後数カ月の動きを見てみるなど、長期的な視点での比較も大切です。

こうした分析を行い、さらに新しいコンテンツを使って検証を繰り返すことで、どんなコンテンツが自社にとって「良いコンテンツ」なのかを具体的にあぶり出して行きましょう。

 

GA4では、特定のコンテンツを閲覧したユーザー、しないユーザーのセグメントごとに「エンゲージのあったセッション(1ユーザーあたり)を可視化できます

POINT
●GA4がWeb制作者の最強の武器になる?
●良いコンテンツを判断できるようになるって本当?
●コンテンツで顧客獲得できるようになる?

 

コンテンツ評価_正しい評価ができるからこそ
真っ当なコンテンツが評価されチャレンジしやすい環境が生まれる

これから長く続くであろうGA4の時代にはコンテンツが非常に重要な存在になります。お客さんと出会い、お客さんの信頼を勝ち得て、お客さんにコンバージョンしてもらう。そしてLTVが高くなるであろう自社にフィットしたお客さんを捕まえるためには「コンテンツ」の力が欠かせないからです。

先に述べたように、GA4を使えば自社のサイトにどういう内容のコンテンツが必要なのかを分析、評価していくことができますから、例えば「こっちのコンテンツはやめて、あっちに切り替えよう」とか、「賞味期限の長いコンテンツと賞味期限の短いコンテンツの比率はこのくらいにしていこう」といった提案ができるようになるでしょう。そこまでできれば、あなたの会社は、Web制作の領域を飛び越え、クライアントの「マーケティングパートナー」というべき存在になっていくでしょう。そうなれば当然、収益は大きく上がるでしょうし、それができるあなたの評価も高まるはずです。

さらにもう一つ、GA4を使いこなすことでWeb制作・コンテンツ制作の仕事はよりクリエイティブで楽しいものになっていくだろうと私は考えています。真っ当なコンテンツが正しく評価され、さらには、新しく実験的な試みにチャレンジしやすい環境が生まれると考えられるからです。

新しい挑戦をする際には特に、仮説検証をしっかりと行うことが大切です。成功・失敗をしっかりと判別できれば、成功の芽を育て失敗を糧とすることができるからです。その点GA4があれば、90%スクロール率やエンゲージメント率がどう変化したか、コンバージョンやLTVにはどんな影響があったかを明確にすることができます。そういう環境ならば「3カ月間試してみよう」といった提案もしやすくなるはずです。制作会社にとってGA4を積極的に使いこなすメリットは非常に大きなものがあるのです。 

 

まとめ
●GA4時代はコンテンツが正しく評価される時代
●良いコンテンツの判断基準がビシッと決まる
●顧客にフィットしたコンテンツがわかる

 

 

Web制作者が目指すべきは「CCO」…? 制作者の価値を高めるその言葉の意味は?

木田さんは取材の最後にWeb制作者の未来予想をしてくれました。これから制作の価値を高めるためにGA4を駆使する必要があると言いますが果たしてその意味は?

─ P032~のGA4を活用したマーケティングの話はもちろんなのですが、P036~のコンテンツの話も実に興味深いですね。木田さんは、制作者にとって大きなチャンス」とお話しされていますが、GA4を活用するとコンテンツ制作への取り組み方は大きく変わりそうですね。

木田 これからの時代は本当の意味でコンテンツの質が問われる時代になるでしょうね。本文でもお話したけれど、GA4によって、「良いコンテンツ」という、これまでどこか曖昧だった概念に、「自社にフィットしたお客さんを引きつけ、コンバージョンへと促し、LTVを高めるもの」という定義付けができるようになるわけだから。

─コンテンツをつくることももちろんですが、それを管理する人の役割もまた重要になりそうですね。

木田 GA4をバリバリに使いこなしながら、「こういうコンテンツをもっとたくさん掲載しよう」「こっちはやめてあっちに切り替えよう」といった感じで戦略を練り、ユーザーとの関係性を構築できる人へのニーズは一気に高まるでしょう。そういう人のことを例えば「チーフ・コンテンツ・オフィサー」、CCOといったような名称で呼ぶ時代が来るかもしれない。

─ああ、確かにそうですね。いかにも給料が上がりそうな役職名ですね(笑)。Web制作会社としても、こうしたCCO的な存在へとシフトしていくメリットは大きそうです。さて、いよいよこの取材も終わりに近づきました。木田さんの今日のお話でGA4アレルギーに罹患している人の数が一気に減るのではないかと思います!

木田 私の知り合いの中にもGA4は難しい、学ぶコストが高すぎる、とおっしゃる方もいるのですが、もったいないなと思うんです。確かに最初は少々戸惑うかもしれませんが、GA4がWebのマーケティングを本来あるべき姿に戻し、進化させてくれるものであることを実感できるはずです。それに、使ってみるとわかることなのですが、実際には難しいことや面倒なことはGoogleがやってくれる。すぐに「便利だな」と感じるようになります。がんばってください!


(株)プリンシプルとは?
本記事で話をしてくださった木田和廣さんが所属する株式会社プリンシプルは、コンサルティング、マーケティング、テクノロジーを兼ね備え、デジタルマーケティングDX戦略の立案から実行までを一貫して提供する企業。

GA4に関しての取り組みについても幅広く進めており、ビジネス背景や課題をヒアリングし、GA4を最大限活用するために最適な導入設計からデータ活用まで支援、データ活用の自走化に向けたGA4のトレーニングやヘルプデスクなどの提供もしています。GA4をより深く活用していくことを検討しているならぜひ相談を。

 

https://www.principle-c.com/

株式会社プリンシプルは、毎月デジタルマーケティングに関するセミナーを開催しております。デジタルマーケティング戦略立案・GA4・SEO・Web広告・BIツールなどにご興味のある方は、ぜひ開催予定のセミナーをご確認ください。

 

Text:小泉森弥 Illustration: 國廣 稔
Web Designing 2023年6月号(2023年4月18日発売)掲載記事を転載