新常態時代に注目を集める「Calm」 事例詳細|つなweB

新常態で広がる「心のケア」マインドフルネスサポートアプリ

コロナ禍の影響で不確実な状況が続く2021年、最も懸念されているのが心の健康です。生活様式が一変し気楽に人に会えなくなったことでストレスが高まり、不安も増大し、結果的にメンタルに影響が出るケースが増えていると言います。そこで、「マインドフルネス」と呼ばれるこの課題に取り組むスタートアップが増えています。

これまでこの分野ではエクササイズやヨガが主流でしたが、より自宅でも行いやすい方法として瞑想が注目されてきました。瞑想は、心を整え不安を取り除き集中力を高める作用があるとされ、以前よりシリコンバレーの起業家達を中心に人気が高まっていました。

今回紹介する「Calm(カーム)」は、睡眠・瞑想・リラクゼーションのお手伝いをするマインドフルネスアプリです。2012年に開発され、その後幾度となくアップデートを重ねて、2017年にはAppleがその年最も勢いのあったアプリを表彰する「App of the year」を獲得しました。そして現在までに1億件以上のダウンロードと400万人以上の登録者数、70万件以上の5つ星レビューを記録しています。

具体的な利用方法はというと、まずCalmを起動するとすぐに数回の深呼吸を促すメッセージが表示されます。その後「不安を減らしたい」「睡眠の質を高めたい」「ストレスを軽減したい」といったアプリを利用する目的が記されたポップアップメニューが表示されるので、ユーザーが必要だと思うメニューを選択すれば、それに応じたアドバイスや効果が期待できる映像が表示されるという仕組みで、シンプルなインターフェイスにより比較的簡単に操作できます。 

特筆すべきはその充実したコンテンツです。Calmには心を落ち着かせる瞑想、役に立つ呼吸法、さらには眠りへと誘う「スリープ・ストーリー」といった数々のセクションが用意されており、各々のセクションごとに何百というコンテンツが収録され、常に新しいものが追加され続けています。

Calm
ストレス関連障害をはじめ高血圧、頭痛などの症状を改善するため米国マサチューセッツ大学の医療センターで開発されたプログラム「マインドフルネス低減法」を手軽に実践するためのサポートをしてくれるアプリ。数年前より評価が高かったアプリですが、人と人の接触が制限されている今、心の健康への懸念により2020年以降爆発的にユーザーが拡大しています。

 

手軽に予約&検査できるポップアップステーション体験

そんな充実したコンテンツの中でも、瞑想に関するコンテンツが最も知られています。睡眠、初心者、仕事、心の平穏、不安、感情、自己成長など、さまざまなカテゴリに分かれており、例えば毎朝更新される「Daily Calm」では、さまざまな健康促進のトピックに焦点を当てた10分間のガイド付き瞑想を提供しています。各セッションの時間は3分から30分までと、比較的手軽に利用できるところはメリットの一つです。

これらは宗教やスピリチュアルなテーマではなく、MBSR(マインドフルネス ストレス低減法)と呼ばれる手法を採用しています。このプログラムでは、ストレスや痛みに対処するために人が本来持っている資源を利用することを目的とするというものです。

 

リラックスBGMや呼吸法のレクチャーまで

その他には、例えばスリープ・ストーリーセクションには、おとぎ話からノンフィクションまで、さまざまなストーリーが用意されています。英語版ではケイト・ウィンスレットなどハリウッドの著名人がナレーションを担当したコンテンツが視聴可能です。音楽セクションには、仕事中、散歩中、寝る前などに心を落ち着かせることができる厳選された数百曲のサウンドトラックが収録されています。

映像や音楽を鑑賞するだけでなく、メンタルフィットネスをサポートするツールとして、利用時間を確認できる「進行状況トラッカー」、感情のリズムを把握する「ムードチェック」、癒しの音楽と自然の風景を集約し流し続ける「BGMと風景」、呼吸の方法や長さをサポートする「呼吸エクササイズ」といった機能も利用できます。

そんな心の健康に役立ちそうなコンテンツを詰め込んだCalmは「フリーミアム」モデルを採用しており、毎日の瞑想、呼吸法、ムードトラッカー、厳選されたスリープストーリー、音楽トラック、ガイド付き瞑想などは無料、そして、それ以外の全コンテンツを利用できる有料の「Premium Calm」が用意されています。

 

190カ国・7カ国語対応日本にも本格参入

「To make the world happier and healthier(世界をより健康に、より幸せに)」をミッションとしているCalm。現在では世界190カ国、7カ国語で利用できるようになりました。ちなみに日本へは2020年12月に本格参入が実現し、日本語オリジナルコンテンツの提供も開始されました。無料で利用可能なコンテンツはもちろん、Premium Calmは年間6,500円となっています。

Calmを初めて利用する際、「使い始めたきっかけ」を問われます。睡眠の質改善やストレス軽減、集中力向上など自分の状況にあった目的を選ぶと、それに沿ったコンテンツを利用できます
毎日更新される「Daily Calm」。さまざまな健康促進をテーマにしたトピックが表示され、ガイドがついた10分程度のコンテンツを負担なくこなせます
質の良い睡眠をサポートする目的で用意されている、大人向けの読み聞かせコンテンツ「スリープ・ストーリー」。日本語版も日々追加されています
深呼吸のエクササイズをサポートしてくれる「呼吸エクササイズ」機能や美しい自然の映像を集約して流し続けてくれる機能など、映像・音楽コンテンツ以外の機能も搭載
Text:ブランドン・片山・ヒル
米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。 http://btrax.com/jp/
ブランドン・片山・ヒル
※Web Designing 2021年6月号(2021年4月16日発売)掲載記事を転載