メタバースでも匂いを感じられる未来に向け、NTTデータと香味醗酵が共創 事例詳細|つなweB
メタバースでも匂いを感じられる未来に向け、NTTデータと香味醗酵が共創

NTTデータと香味醗酵は3月27日、組み合わせ最適化技術を活用した匂い再構成技術に関するパートナーシップ契約を4月1日に締結することを発表し、NTTデータ本社で説明会を開催した。今回のパートナーシップは、2022年11月から両社が取り組んでいる少数の匂い成分でさまざまな匂いや香りを再現する組み合わせ最適化に関する共同検証の結果に基づくものだという。

香味醗酵は大阪大学発のベンチャー企業で、人が感じている「匂い」の数値化を試みている。これまでに、ヒトが持つ約400種類の嗅覚受容体の応答する際の細胞内カルシウム濃度変化を経時的に測定する技術を開発した。また、ヒトの嗅覚細胞を網羅的に搭載した「ヒト嗅覚受容体発現細胞アレイ」も開発しており、これはいわば「人工の鼻」のようなものである。

これにより、匂いマトリクスを定量化して、ヒトが感じる匂いを時系列に沿って可視化できるようになる。匂いの余韻や時間の変化も含めて則的できるようにしたことで、感覚に頼る官能検査や、匂い成分とは異なる化合物まで検出してしまうクロマトグラフィ分析と比較して、ヒトが感じている匂いをより正確に再現できると期待される。

特定の匂いを再現するための香料や食品添加物の組み合わせは、その対象となる匂い成分の数に応じて爆発的に計算負荷が高まるため、従来の手法では困難だったという。そこで同社は、NTTグループが開発を進める次世代光イジングマシン「LASOLV」とNTTデータのデータ分析技術を活用して、効率的な匂いの組み合わせの計算を目指したとのことだ。

多数の匂い分子から適切な組み合わせを探し出すためには大規模な計算量が必要となり、香味醗酵が有する従来の手法では約1000種類が限界だったようだが、3社による実証実験の結果、これを約8000種類以上にまで拡大できることを確認したという。同社によると、8000種類のデータ規模であればヒトが感じられる匂いをほぼ再現でき、ビジネス利用も視野に入るとのこと。

さらに、量子コンピュータが得意とする組み合わせ最適化の手法を活用し、既存の手法では匂いの再現に240種類以上の素材が必要だったものを、わずか13種類で再現できるようになったそうだ。

この際、8000種類の大規模計算においても、目的とする香りに近い嗅覚受容体の反応が得られると考えられる結果が取得できたようで、計算の規模だけでなく精度においても一定の有効性が確認できたとしている。

香味醗酵の代表取締役である久保賢治氏は今後について、「香料開発の効率化だけでなく、音楽イベントやメタバースなどのエンターテインメント産業への展開を見据えている。また、匂いを数値化してデータベース化し、家庭でも再現できるようになれば、将来的にはストレス軽減や疲労回復、認知症の予防などヘルスケア分野でも応用できるだろう」と展望を語っていた。

また、NTTデータは香料分野に限らずさまざまな分野で組み合わせ最適化問題に対する新たな手法を適用していくとのことだ。同社はグローバル規模で量子コンピュータや次世代アーキテクチャに関するラボをサービス展開し、今後3年間で100件以上の新手法による業務改善の実現を目指すとしている。